第295号(2012.4.10)
劉伯倫、断酒誓いの酒
 4月に入って一週間、まったく雪の降らなかった日はたったの一日しかありません。とくに3日の晩から4日いっぱいに掛けての大暴風雪は街中のアーケードの屋根を吹っ飛ばしてしまうほど凄まじいものでした。この日の新庄の最大風速は34.7メートル。猛烈な吹雪が続く2月ならまだしも、4月にこの天気とは・・・。積雪はまだ70センチほどもあり田んぼはまだまだ雪の下。農作業の遅れが気になるところです。
 とはいえ4月。ウェザーニュースのさくら開花予想では新庄は4月25日だそうです。花見といえば当然お酒。酒盛り。で飲み過ぎで翌日は自己嫌悪。自分も含めてそんな人のために、今回の富田通信は酒豪、劉伯倫を『酒おもしろ語典』坂倉又吉著よりご紹介いたしましょう。

劉伯倫、断酒誓いの酒
 酒の別名を「竹葉」とも言いますが、その語源にもなったといわれる中国の竹林の七賢人は、魏の末期(三世紀半ば頃)から晋の時代にかけて、河南省北東部一帯の竹林にしばしば集まって酒を飲み、琴を弾き、清談を行なった七人の人物、すなわち山濤(さんとう)、ケイ康(けいこう)、阮籍(けんせき)、王戎(おうじゅう)、阮咸(けんかん)、尚秀(しょうしゅう)そして劉伶(りゅうれい)をいいます。
 当時は政情が不安で災禍を受けやすかったのと、伝統的な儒教道徳が形式化し社会に偽善が横行したのとで、彼らは権力から逃避し、道徳の偽善性に反抗し、自由な生命の自然と奔放な精神の歓喜を求めて、竹林に集まったのでありますが、それがいずれも酒豪揃いでありました。
 中でも第一の酒豪で逸話のあるのは劉伶、別名劉伯倫であります。この人は後世の酒客が大先輩として尊ぶ人で、かの慶安酒合戦に東軍の御大将地黄坊樽次が「我こそは晋の劉伯倫の末孫・・・」と名乗っています。
 伯倫は酔いがまわると、素っ裸になって酒を飲むのがくせでありましたが、七賢人の一人が、いかに竹林中とはいえ、すべてが丸出しでは目ざわりになるとて忠告したところ
「わしの家は天と地であり、またそれが着物と褌(ふんどし)でもある。つまり君らは、わしの褌の中に入って飲んでいるようなものだ」
といったということですが、まことに痛快なたとえではあります。
 また伯倫はあるとき二日酔の迎え酒を妻に命じましたところ、大酒を憂えた細君は酒壺をことごとく叩き割ってしまって、酒を止めろといって聞きません。そこで夫婦喧嘩となりましたが、細君が泣き出すので伯倫も始末に負えず折れて、
「もう再び杯を手にしない。そのことを神に誓わねばならぬから」
 といって、神前にたっぷり酒を捧げまつりました。伯倫は恭しく神前にひざまずき、
 ぶった口調で
「天、幸いにして伯倫を地上に生まれしめ、酒で後世まで名を残さしめる、一石五斗飲めば二日酔はさめまする。近来、その酒を断てという者があらわれましたが、そのような言は今後絶対に聞かぬことに致します」
 といったかと思うと、神前の酒をキューッと飲み干してしまいました。まことに稚気あふれる戦術で、これでは細君も喧嘩にはなりますまい。

 いやぁ、勇気づけられますね。この、竹林の七賢人のことは万葉集にある大伴旅人の「酒を讃むる歌」十三首にも出て来ます。
  
いにしへの七の賢(さか)しき人たちも欲(ほり)せしものは酒にしあるらし
  (竹林の七賢人も求め欲したのは酒にこそあったのだ)

 いいですね。もう少しご紹介しましょう。
  
価無き宝といふとも一坏(ひとつき)の濁れる酒にあに益(ま)さめやも
  (仏法などで評価を超えて貴い宝というが、それも一杯の濁酒に何のまさ   ることがあろう。ありはしない)

  
なかなかに人とあらずは酒壺になりにてしかも酒に染みなむ
  (中途半端に人間でいずに酒壺になってしまいたいものだ。そうしたら、   酒にたっぷり染みることができるだろう)

 調子が出て来ましたね。ではもうひとつ。
  
あな醜(みにく)賢しらをすと酒飲まぬ人をよく見れば猿にかも似る
  (ああみっともない。「馬鹿馬鹿しい酒など飲んだりして」と利口ぶって   振る舞う人をよく見ると猿に似ているよ)

 あはは、これ以上調子に乗るとこちらがトラになっちまいそうですのでこのへんで。くれぐれもお互い飲み過ぎには注意しましょう・・・。乾杯!



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     冨士酒造 純米吟醸  加藤家戸隠し 吟しぐれ
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     月山酒造 純米吟醸  銀嶺月山 生貯蔵酒
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     高橋酒造 純米吟醸  東北泉出羽の里 生貯蔵酒
     鯉川酒造 純米吟醸  鯉川 うすにごり酒 生貯蔵酒
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  7月 山形正宗 純米吟醸  生貯蔵酒
     和田酒造 純米大吟醸 純米大吟醸 あら玉 生貯蔵酒
     酒田酒造 純米吟醸  上喜元純米吟醸 生詰
     菊勇   純米吟醸  純米吟醸 菊勇 生貯蔵酒
     竹の露  純米吟醸  純米吟醸 竹の露 生詰
     東の麓  純米吟醸  純米吟醸生詰 東の麓




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