第270号(2010.3.10)
お酒Q&A
 今年の冬は大寒の期間が異様に暖かかったり、大寒明けから異様に寒かったりと何かちぐはぐな冬でしたが、それでももう3月。一時的に冬型が強まって雪が降り積もることがあろうとも、あと1か月も我慢すれば確実に春が来るというこの現実は、何物にも代え難い安心感をもたらしてくれます。これは恐らく長い間雪に閉じこめられる地方の人間でなければとうてい味わうことのできない感覚かもしれません。
 さて、先日勉強会で酒類総合研究所(かつての醸造試験場)の人から焼酎の話しを聞く機会がありました。その折にへぇ〜っと思ったことや普段分かったつもりになっている事柄などを交えながら、今回の富田通信はお酒Q&A。

発酵って何でしょう?
 日本酒やビール、ワインなどの醸造酒は発酵によってお酒になります。でもこの発酵って何でしょう。
 広い意味で発酵とは「微生物が人にとって役立つものをつくり出すこと」をいいます。たとえば、大豆や麦に麹菌と酵母が働けば味噌や醤油が出来ますし、大豆に納豆菌が働けば納豆になります。野菜に乳酸菌が働けば漬物になりますし、牛乳に乳酸菌が働けばヨーグルトが出来ます。
 また、微生物が働いて人にとって害になるものあるいは無用なものをつくり出した場合は腐敗と呼びます。つまり、微生物から見れば発酵と腐敗はまったく同じことで、人間にとって有用な場合だけを発酵と呼びます。
 ただし、この発酵と腐敗の境界はかなり恣意的なもので、たとえば納豆というものをまったく知らない人間がいたとすれば、大豆がネバネバして糸を引いている状態になっているのを見れば、これは腐ってしまったと思うに違いありません。

麦焼酎や芋焼酎などの本格焼酎と呼ばれるものの中に減圧蒸留でつくったと書いてあるものがあるけど、減圧蒸留ってなに?
 本格焼酎はモロミを単式蒸留機という蒸留機で一回だけ蒸留してつくられます。その単式蒸留機には常圧蒸留機と減圧蒸留機があります。
 常圧蒸留機の内部の圧力は地上と同じ1気圧で、この蒸留機を使うとモロミは約85〜95℃で沸騰し、アルコールと一緒に蒸発しやすい成分や蒸発しにくい成分などいろいろな成分が留出するために風味が豊かな焼酎になります。
 一方、減圧蒸留機では内部の圧力を0.1気圧ほどまで下げます。そうするとモロミは約45〜55℃で沸騰するようになって、蒸発しやすい成分がアルコールと一緒に留出するために風味が軽快な焼酎になります。
 昔、私が学生だったころ、芋焼酎を飲んで酔っぱらった友人が部屋に入ってくるなり部屋中に強烈な匂いが広がったものですが、今は軽快な風味が好まれて減圧蒸留の焼酎が多くなっているようです。

日本酒に賞味期限はあるのでしょうか?
 結論から言うと日本酒に賞味期限はありません。酒類総合研究所のはなしによると
 「清酒の楽しみ方には様々なバリエーションがあります。搾りたての新鮮さ、ひと夏越して調和のとれた味わい、数年間貯蔵したことによる熟成香と複雑な味わいなど様々な楽しみ方があります。
 清酒のタイプや保存状況にもよりますが、一般的には、出荷されてから1年以内に飲まれることを想定していることが多いようです。
 清酒ラベルに表示された製造年月は、ビン詰め時期のことです。清酒蔵によってはビン詰めしてから貯蔵し、適度に熟成させて、飲み頃になってから出荷(貯蔵酒やひやおろし等)する場合があります。この場合は、ビン詰め時期から1年以上過ぎているからといって品質が損なわれているわけではありません。」ということです。

おいしい吟醸酒を飲むとあまり二日酔いにならないのはなぜ?
 酒類総合研究所の広報誌エヌリブ14号(平成20年8月)を読んでいたら「清酒の生理的おいしさ」という大変興味深い研究が載っていました。研究者は伊豆英恵さん。生理的おいしさとは喉が泡いている時の方が水がおいしく感じられるといった、体調や食べた後の体の変化に影響される食品のおいしさをいい、動物と人間に共通した本能的感覚です。
 彼女は人間より本能的なラットを使い、清酒の生理的おいしさを調べました。その結果、ラットにも好きな清酒と嫌いな清酒のあることが分かり、飲酒後のラットの血液中の成分を分析したところ、ラットが好む「生理的においしい」清酒を摂取した後には、アルコールによる悪い代謝変化が生じにくい結果が出たそうです。
 だとすると、吟醸酒が二日酔いしにくいんじゃなくて、好きな吟醸酒だから二日酔いしないということなのでしょうか。今後の研究に期待しましょう。



商  品  紹  介
出羽桜 純米大吟醸酒 『一路』
 2008年、出羽桜一路が「IWC2008」の「SAKE部門」で最高賞の「チャンピオン・サケ」を受賞して以来、絶大な人気で、常に売り切れ状態になっています。
 この冬に仕込んだ「一路」が入荷しました。今年も華やかな香りと、柔らかく落ち着きのある味わいになっています。
  内容 原料米:山田錦 精米歩合:45% アルコール度数:15〜16%
     日本酒度:+4 酸度:1.3 使用酵母:小川酵母
                     720ml 2800円
出羽桜 しぼりたて生原酒 『純米吟醸 雄町』
 昨年、「純米吟醸 雄町」は、市販純米酒の品評会である「第1回 純米酒大賞2009」にて、最高賞である「純米酒大賞」を受賞しました。
 その受賞を記念して、今回限りの新酒「しぼりたて生原酒 雄町」が発売されました。なにとぞご賞味下さい。
 なお、数量に限りがございますので、品切れの際はご容赦下さい。
  内容 原料米:雄町 精米歩合:50% アルコール度数:17%
     日本酒度:+5 酸度:1.6 使用酵母:山形酵母
                     500ml 1300円
上喜元 純米吟醸 無濾過生原酒 『仕込み39号 渾身』
 幻の酒米『白玉』を使用した、上喜元渾身の純米吟醸酒です。旨み・酸味・香り・味わい、全てが調和した、今期も蔵屈指の一本に仕上がりました。
  内容 原料米:麹米 山田錦 掛米 白玉 精米歩合:55%
     度数:16〜17% 酒度:+2 酸度:1.5 酵母:自社酵母
                    1.8L 2730円



……… 編 集 後 記 ………
○10年ほど夏も冬も配達に乗っていたスーパーカブのフレームが腐ってしまい、このままじゃバイクが折れるってんで、急遽、新車を買いました。今度のやつはスーパーカブ110PRO。かつてナナハンライダーだった若者も、今はスーパーカブオンリーです。でもいくら年老いても、2輪はいいですね。

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