第268号(2010.1.10)
「トラ」のはなし
 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 今冬の初積雪は12月15日と例年に比べかなり遅かったのですが、その初積雪が消えることなく結局、根雪になってしまいました。正月三が日は猛吹雪が続きましたが、2月ならまだしもこれも今の時期には珍しいことです。
 幸い5日は最高気温が5.3度と比較的暖かい雨になり、風も強かったこともあって積雪はだいぶ減り、6日正午現在で50cmです。週間天気予報によればどうやら雪も少しは落ち着きそうです。
 さて、今年は寅年。フリー百科事典のウィキペディアによると『「寅」は(いん:「動く」の意味)で、春が来て草木が生ずる状態を表しているとされる。』とありました。停滞している景気も動き出してくれるといいですね。
 ところで、酔っぱらいのことを「トラ」とか「大トラ」とかいいますよね。今年最初の富田通信は寅年にちなんでこの「トラ」について、『酒おもしろ語典』より書いてみましょう。

「トラ」
 クリスマスイブなど夜の繁華街を車で通るとき、私は運転手に「酔っぱらいさんに気を付けなさいよ。大事なお得意様だからね。それに何しろ今は、トラさんなんだからな! 車ぐらい怖いとは思っていないからね」と注意します。
 なるほど「虎」は、下手な絵に「猫でない証拠に竹を画き」というように、昔から竹林の王者と決まっています。ところがそれがなぜ酔っぱらいの尊称になったかというと、酒は別名「ささ」とも言い、それは中国での酒の別名「竹葉」から来たといわれていますが、そうと分かればこの話の落ちはもうご想像がつくでしょう。竹林の王者「トラ」即ち酒の王者に通ずるということであります。
 また一説には、トラとは子・丑・寅・すなわち十二支の寅のことであるといいます。それは酔っぱらいの深酒の時刻を指したもので、午前零時を過ぎるまでねばり、飲みつづける人をご前様といいますが、トラとは、それよりもっと上で、寅の刻(今の時刻に直せば午前四時から六時まで)すなわち明け方まで飲み続けるということだといいますが、さてどんなものでしょう?
 さらにまた、トラとは、吉原遊子の隠語(ツメ言葉ともいえる)から出たのであろうと、酒の研究家であり愛酒家である、岐阜の故長久正治老は解釈しています。それによると、吉原言葉に「とられん坊」というのがあって、それは妓女にだまされて金品を取られる客のことをいったものですが、それを略して「トラ」と言い、「トラにする」「トラにされる」というようになったが、それが転じて酔っぱらいにも使われるようになったのではないか、というのです。考えてみれば、酔っぱらいのトラは酒の王者ではなくて、酒に負ける人とも言えますから、これにも一理あると思います。
 さていろいろな説が出てきましたが、トラには別にそんな深い意味があるわけではない、酔ってあばれるさまを、はじめ誰かが、「虎みたいなもんだ」といった位のことから、ただ何となく自然に流行っていったんだろう、と見る人もありましょう。あるいはそうかもしれません。いずれにしても「トラ」というようになったのは、江戸時代、またはそれ以前の書物の中には見当たらないようですから、そんなに古い頃からではなく、ごく最近になってからのようです。

 トラのついでに酔っぱらいの状態のひとつである「くだをまく」についても同書より書いてみましょう。

くだをまく
 酔っぱらって「くだをまく」といいます。それはどんなような状態なのかは皆さんご存じの通りで、同僚のくだまきに悩まされたご経験も多いでしょうし、自分が他人に迷惑をかけたご経験・・・いやこれはご記憶ありますまい。
 そのくだまき、またはくだをまくとはどこから出たものでしょうか? その語源は「管(くだ)を巻く」ということで、「管」とは、糸搓車(いとよりぐるま)の部品であって、右側の車に対し、左の方にある紡錘(つむ)にはさむ小さい軸のことをいうのですが、車を回すと、帯糸より紡錘に伝わって、ぶうぶうと音をたてますが、そんなところが酔っぱらいのたわごとの「ブウブウ」というのに通じるところからくだを巻くといい、またそれが略されて、単にくだとも言うようにもなりました。・・・とこれは『大言海』の説です。
 また「管を巻く」という仕事は、機(はた)を織るという目的のために、それをかなうように、整然と糸を管に巻くことであって、その繰り返しのための努力と忍耐は大変だ。即ちそれほど「くどい」仕事であり、「わずらわしいこと」であるということから、くだまきとはくどいこと・わずらわしいことになった。・・・との説もあります。

 正月早々、トラになって、くだをまかぬようにせねば・・・。乾杯!



商 品 紹 介
       栄光冨士 超特別限定酒
         純米吟醸 朝顔ラベル 無濾過生原酒
 先日、栄光冨士の副杜氏・白幡君から「今週末に純米吟醸朝顔ラベルの濾過をするんだけれど、酒の出来がすごく良かったもので、ごく一部を無濾過生原酒のまま瓶詰めして出荷することにしたんだけど、富田さん、いらない?」っていう電話をもらいました。
 この純米吟醸朝顔ラベルは協会10号系酵母の傑作で、その味わいは柔らかく、ふくらみがあり、まさにこれぞ栄光冨士! と言っても過言ではない、私の大好きな酒でもあります。
 その純米吟醸朝顔ラベルの無濾過生原酒と聞いてはだまっていられません。
私「いるいる! ところで値段は?」
白幡「ごくわずかの出荷ということで通常の純米吟醸朝顔ラベルと同じ値段で税込1.8リットルで3460円。720ミリリットルで2100円。」
私「えっ、一升瓶がずいぶんと安いじゃない。720mlはいらないから一升瓶の方、頂戴!」ってなわけでの入荷です。
 入荷数量がごくわずかですので品切れの際はご容赦下さい。
  内容 原料米:麹米・山田錦 掛米・美山錦 精米歩合:50%
     度数:16.3% 日本酒度:±0 酸度:1.2 酵母:協会10号系
                     1.8L 3460円



……… 編 集 後 記 ………
○夏の終わり頃から左肩に違和感があったのですが、医者に行くほどの痛みではなかったのでほったらかしにしておりました。ところが年も押し詰まった26日の夜中、就寝中に左肩の激痛に襲われました。寝返りも打てない、だまって横になっていても痛い、もう身の置き所の無いような始末です。医者が開いてから整形外科に駆けつけると早速レントゲン。写真が出来上がってそれを診た医者が肩の腱板が炎症をおこしているから痛み止めのための注射をしましょうといって肩を消毒し始めました。チクッとするからねという言葉とはほど遠い、ググ〜ッと肩が重くなるような苦しさ。注射のお陰で痛みはずいぶんと軽くなりましたが、医者から渡されたパンフレットが五十肩体操。そう、あの痛みは五十肩だったんです。年相応の病名では納得するしかありませんが、これから約一カ月週一で医者通いです。釣りの時期までには何としても治さねば!

E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール