第262号(2009.7.10)
酒おもしろ話
 今年の梅雨入りは6月10日と例年並みだったのですが、新庄は今のところまったくの空梅雨です。6月下旬には連日最高気温が30℃を超える日が続き、まさに夏本番といったところです。その陽気に騙されたのか7月に入ったばかりだというのにもうすでにヒグラシが鳴き始めています。
 さて今回の富田通信はそんな暑さもぶっ飛ばせてなことで、志賀貢著『酒飲みを励ます本』より、酒にまつわるおもしろ話をご紹介しましょう。

暑気払いの元祖はジンの国オランダ
「こう暑くちゃ、たまらない」という時に、一杯ひっかけるのは適度に冷えたビールと相場は決まっている。しかし、実は暑気払いにうってつけの酒は、ジンなのである。
 ジンといえばオランダが元祖だが、そのオランダがまだ植民地をたくさんもっていた時代、オランダの人たちは、もっぱらジンで暑さをしのいでいたと言われている。たとえば、植民地のジャワやスマトラでは、午前中の仕事は朝の六時から九時まで。あとはクラブあたりに出かけていってグイッと一杯ジンをひっかけるのが習慣になっていた。
 そうでもしなければ、どうにもやりきれない暑さを忘れることができなかったのであろう。そのうえジンは鎮静剤の効能を持っていると信じられていたので、ますますお茶がわりに愛飲したらしいのである。
 ジンについては、面白い話題が多い・・・。「二日酔い心配無用の酒」としてもジンは知られている。どの酒がもっとも二日酔いしないかというテーマで人体実験をしたオランダのライデン大学の研究によると、「ジンがもっとも悪酔いしない。いちばんあとをひくのはコニャックである」そうである。
 この研究を行なったライデン大学、何を隠そう、ジンの元祖をつくったところである。17世紀、ここの大学のシルビル教授が、ジュネバ(ねずの実)を使って香りのよいアルコールをつくったのがジンだったわけである。もっとも、当時は薬用として使われていたようで、人々は、おなかが痛いといっては薬局でもらっていたそうである。
 歴史的には、1689年、オランダから迎えられてイギリスの王位についたウイリアム三世が、故国の酒、ジンをイギリス人にもなじませようと、普及にこれ努めたのが有名である。税金を安くし、値段も安くしただけに、労働者にもっぱら飲まれることになった。
 そういう彼らが、ジンに「ロイヤル・ポバティー」というニックネームをつけたのである。なにも王様ご推奨の酒だったからではない。貧乏人でも、飲めば王様の気分になれるからであった。今では、カクテルに欠かせない酒になっている。

酒を主食にした大画家の「湯割り」
『酒雑学事典』によれば、日本画家で、有名な横山大観は、朝昼晩の主食は、酒だったそうだ。50年間、富士山を描き続けながら、一度も登ったことがないというのもあっぱれだが、その飲みっぷりも天下一品だった。彼が飲んだのは、酒といっても、広島の「酔心(すいしん)」一本ヤリだったという。
 ごはんは、はじめの頃は、茶飲み茶碗に半分ぐらいは食べていたが、晩年は何粒と数えるほどになった。酒の肴も、ウニ、カラスミ、メザシぐらいで、料理らしい料理も一切とらなかったそうである。
 これほどの大観も、昔はなんと下戸だったというから面白い。美術学校(現在の東京芸術大学)を卒業した時に父親にすすめられて、猪口に二、三杯飲んでも、すぐ赤くなってしまったという。
 その彼が酒に強くなったのは、美術学校の助教授になった29歳の頃かららしい。その原因というか、きっかけになったのは、彼の師であった岡倉天心の怒りであった。天心自身、酒は豪の者で、酒量は二升くらいという酒仙であった。その大先生から、ある時大観は「一升ぐらい飲めなくてどうする!」とどやされた。それからというもの、大観は意地で飲みに飲んだ。
 しかし、弱いものは弱い。飲んではトイレに行き、また飲んではトイレに行く。ノドに手を突っ込んでは吐き、また飲んでは、吐く。そして、ついに上達してしまったのである。芸術家の執念は、芸術を完成するばかりでなく、酒をも征服してしまうものらしい。
 大観が「酔心」の愛飲家だというウワサを聞いた醸造元は、感激してその後絶えず四斗樽を送っていたという。
 そのお礼に毎年彼は、描いたものを一作ずつ寄贈していたのだが、それがたまりたまって、ついには「酔心美術館」が完成したのである。
 彼は、病床にあっても酒を欠かさなかったというのだからおそれいってしまう。亡くなる四日前まで、吸い飲みで飲み続けていたと伝えられている。
 晩年は「湯割り」で一日七合ぐらいにおさえていたそうだが、来客があればその倍になった。ご存じのように89歳という天寿をまっとうしたのだから、これはもう敬意を表すべきである。



商  品  紹  介
出羽桜 吟醸にごり酒 『微発泡 とび六』
 乾杯の酒、脂っこい食事と相性の良い酒、出羽桜がそんな要望にお応えするのが吟醸にごり酒の『微発泡 とび六』です。
 今年の『とび六』は今のところまだ炭酸がそれほど強くなく、爽やかな酸味と相まってとても美味しく仕上がってました。まさに『美発泡 とび六』です。
  原料米:麹米・美山錦 掛米・雪化粧 精米歩合:50%
  度数:15〜16度 日本酒度:−3 酸度:1.5 酵母:小川酵母

  ※取り扱い注意点
  ・必ず冷蔵庫で保管してください。
  ・開封の際は噴き出す恐れがありますので、冷たいまま、ビンを振らずに、王冠を少し開けたり締めたりを繰り返し、ビン内部のガスを十分抜いてから開封してください。
  ・沈んだ「オリ」は、開封後、王冠を締め直した後に、軽くゆすって混ぜてください。
                     300ml 630円
あら玉 発泡性純米酒 『bitts!』
 「ビッツ!」といってもトヨタの自動車ではありません。山形県工業技術センターと山形県酒造組合が中心となって開発した、程よいコクとすっきりした飲みやすさが特徴のスパークリング純米酒です。
 商品名の「bitts!」は仕込みに使った山形県の特許酵母“TY24”の特徴であるコク(苦味)を表わすbitternessからとりました。
 キリッと冷やして、ゴクゴク飲んでください。
  原料米:出羽の里 精米歩合:60% 度数:9〜10%
                     330ml 500円



……… 編 集 後 記 ………
○ここ数年、老眼が進んで本を読むのが辛くなっていました。で、これは本など読まずに、もうそろそろ自分の頭で考えろってなことだろうと無理矢理思いこもうとしてたんですが、いかんせん、考える頭がない。そこでヘッドルーペなる頭につける老眼鏡みたいなものを買ってしまいました。お陰で本の字は楽に見えるようになったのですが、今度は本の内容がなかなか頭に入ってきません。どうやら脳みそも老眼が進んでいるようで・・・。フゥ〜。

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