第259号(2009.4.10)
無礼講・随意講
 今年は春が早いと思っていたら3月下旬に一気に陽気が冬に逆戻りし、29日の朝には20センチを超える積雪になりました。
 でもさすがに4月の声を聞くあたりから徐々に暖かくなり、この頃は春の到来を心底実感できるようになりました。やはり春はいいですね。心が浮き立つのを感じます。
 さて、春といえばなんと言ってもお花見ですよね。新庄の桜の開花予想は今月の19日だそうで、下旬には満開の桜が見られそうです。
 花見といえば酒、酒といえば無礼講ってなもので、今回の富田通信は無礼講や随意講について、『酒おもしろ語典』坂倉又吉著より書いてみましょう。

無礼講
「今日は無礼講じゃから、遠慮せんとハメをはずして大いに飲みたまえ」
 と、日頃むつかしい社長が、社内の慰安会なんかに物わかりの良さそうな挨拶をしたりします。もっともこの頃では、そんなことを一々いわなくても、いつでも無礼講みたいな職場もあるようですが、昔では長幼序あり、上下に隔たりありで、日頃偉い人からはお叱りごとや訓辞ぐらいより聞けなかったものですから、無礼講を宣言されることは、とても有難いもののようでした。
 落語でも、長屋の花見で、よくこの無礼講の話が出てきます。日頃けちくさい大家さんにしては珍しいことと、長い間の家賃の滞りを棚に上げて皆でご招待の花見に出かけていくと、酒ならぬお茶けを飲まされて、やけくそで酔っぱらった気分になってくだを捲くさまを、柳橋さん(故人)が面白く演ずるのをお聞きになった方もおありでしょう。
 この「無礼講」というのは、昔宴会におけるルールが誠にむつかしかった頃に、その反動としてときに行なわれたもののようで、『太平記』に
「その交会遊宴の体、見聞耳目を驚せり。献盃の次第、上下をいわず、男はえぼしを脱で髻(もとどり)をはなち、法師は衣を着ずして白衣になり、年十七八なる女のみめかたち優に、膚ことに清らかなるを二十余人、すずしの単計(ひとえ)りをきせて、酌をとらせければ、雪の膚すきとおりて(中略)人の思い咎(とが)むる事もやあらんとて、事を文談に寄せんが為に、其頃才覚無双の聞え有りける玄恵法印という文者を請じて昌黎文集の談義をぞ行わせける。」
 とありますが、盃のやりとりが上下を問わないことや、上着を脱ぐことくらいが、「耳目を驚せり」というのですから、大分昔と今とは違うものです。もっとも、「雪の膚すきとおりて」は今でも魅力的かもしれませんが、それとても今のナイトクラブやキャバレーなどのストリップショーなんかに較べれば物の数ではないかもしれません。しかもそんな無礼講のなかでも、やっぱり主催者は気が引けると見えて、事を「文談」に持っていこうとしたというのですから、なかなか面白いではありませんか!

随意講・講のいろいろ
 無礼講とちょっと似た宴会に、随意講というのがあります。
 これは、「みんなそれぞれ好きなようにやりなさい」というわけですから、酒の好きな人は酒、ビールの好きな人はビール、ジュースがよければジュース、それにお料理のほうも好きなものをとってよろしい・・・というようなことで、当世なれば模擬店をならべた野外パーティーなどが、この随意講に相当するといえましょう。『醒睡笑』に、
 「老僧、小僧、児、若衆いひ合はせて随意講のまわし始まれり。ある席にて、児、汁の椀に酒をうけられたり。後見の法師目をきっと見出しければ、児かほをおさへ、『南無三宝、随意講は破れたよ』云々」
 とありますが、親にしてみれば、いくら随意講でも、子供が酒を飲むとはけしからんというわけで、「目をきっと」して叱ろうとしたところ、この子供なかなかどうして頓智の良い子で、先手をきってうまいことをいったものです。このような話は、今でも随意講や無礼講でありそうなことで、えらい人がついいつものように文句でも言おうものなら、
「無礼講のはずじゃなかったか?」
と反対に文句が出るというものです。
 さてこのような「講」とは、そもそもどんなものかを、百科事典で調べてみますと、
「一定の講員が寄り合って懇談し、共同飲食をする社会集団」
 とあり、それを大別すると「信仰的」なものと「経済的」なものに別けられるようです。
 「信仰的(宗教的)講」とは、氏神を中心にその氏子集団で結成している講とか、村内にある観音堂とか地蔵堂とかで信仰行事を行なう講とか村落外にある神社へ参拝するための講とかで、「経済的講」とは、頼母子、無尽等の庶民金融を目的とするものです。
 これらの講というのは、いずれも話し合いやくじ引きを飲み食いしながらするのが建前なのです。



商 品 紹 介
出羽桜 純米大吟醸酒 『一路』
 今年の1月と2月に発売された「しぼりたて生原酒・一路」はお陰様で大好評の内に完売の運びとなりました。ありがとうございました。
 さて、いよいよ「一路」の「火入れタイプ」をご案内できる時期になりました。新酒の「しぼりたて生原酒」とは一味違った、やわらかく落ち着きある味わいです。数量に限りがございますが、ぜひお試しください。
 なお、一路は4月より、JAL「日本航空」の「国内線ファーストクラス」のメニューに、東北地方の酒蔵ではじめて採用されました。

  入荷時期:4月下旬。7月中旬。11月中旬。予約受付中

  内容 原料米:山田錦 精米歩合:45% 度数:15〜16%
     日本酒度:+4 酸度:1.3 使用酵母:小川酵母
                   720ml 2800円
『古酒の会』のお知らせ
 4月19日、当店のお客さま主催の「古酒の会」が開催されます。定員は20名ですが、まだ若干の余裕があるそうです。日本酒の古酒に興味のある方はぜひご参加ください。
 僭越ながら、さくらの季節に合わせて私の拙い篠笛の演奏もあります。

 日時 平成21年4月19日(日)
        開宴/午後5時
 会場 つたや本店
 会費 6000円
 定員 20名
 ※申し込みは事務局の富田酒店までお願いします。



……… 編 集 後 記 ………
○お知らせにも書きましたが、「古酒の会」で篠笛を吹くことになりました。実は、去年の古酒の会で厚かましくも笛を吹かせていただいたのですが、そのときの快感が忘れられず、今年もぜひにと売り込んだわけです。演奏は日本古謡「さくら」、「もののけ姫」、それに私が篠笛に憧れを抱くきっかけになった中川善男さん作曲の「黒髪」の3曲をやる予定でいます。篠笛のせいで酒がまずくなったなどといわれないようにしっかり練習します。・・・乾杯!

E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール