第257号(2009.2.10)
チャンピオン・サケに思う
 大寒も終わり、はや立春。余寒30日とはいうものの、今のところ非常に楽な冬を過ごしています。現在の積雪は約70cm。なんとかこのまま、屋根の雪下ろしをせずに春を迎えることができるといいのですが。
 さて、1月は世界最高峰の酒類品評会「IWC2008」の「SAKE部門」で最高賞チャンピオン・サケに輝いた『出羽桜・一路』の受賞記念として発売された『しぼりたて生原酒・一路』で、お陰様で大賑わいでした。
 今回の富田通信はこのチャンピオン・サケの賑わいの中で思ったことを書いてみたいと思います。

IWCとは
 その前に、まずIWCとはなにかを説明します。
 IWCとは、インターナショナル・ワイン・チャレンジの略で、1983年以降毎年、ロンドンで開催されているワイン品評会です。約40カ国から10000種類ものワインがエントリーされる、世界で最も影響力のある競技会として知られています。
 日本酒部門は海外での日本食人気の高まりに伴い、日本酒の認知度が増し、その品質が高く評価され、2007年(出品酒は228銘柄)より新設されました。「純米酒の部」「純米吟醸酒・純米大吟醸酒の部」「本醸造酒の部」「吟醸酒・大吟醸酒の部」「古酒の部」の5つの部で構成され、2008年は26名の審査員(約半数は世界各国の審査員)によるテイスティングで評価されました。

一回目のチャンピオン・サケは?
 今回のこの『しぼりたて生原酒・一路』の人気は想像をはるかに超えたすごいものでした。その要因はなんと言っても、「一人でも多くの方にチャンピオン・サケ受賞記念酒を味わってもらいたい。そのために容量を500mlと小さくし、価格もかなり安く抑え、品切れによるお客さまへのご迷惑を少なくするために、品質を絶対に落とすことなく可能な限り増産する」という出羽桜さんの真摯な姿勢とマス・メディアを使った宣伝、それに全国版のテレビがチャンピオン・サケに『一路』が輝いたことを放映したことにあるかと思います。
 山形県内はもとより、遠くは九州からも注文があり、さらにはふだん日本酒など全く飲まない近所の若い人たちも『一路』を買って下さり、おいしい日本酒のファン層の広がりの可能性を感じることができました。
 そんなさなか、ふと「そういえば、第一回目のチャンピオン・サケはどこが獲得したんだろう?」という疑問が頭をよぎりました。普通、この手の賞は第一回目の方が二回目よりマスコミで大きく取り上げられるはずです。仮に私の勉強不足でこのような賞の存在を知らなかったとしても今回の『一路』のような賑わいがあったとしたらお客さまから何らかの問い合わせがあったはずです。それが全くなかった。
 インターネットで調べてみておおよその原因が想像できました。第一回目の受賞蔵は北陸地方の有名地酒蔵だったんですが、その酒蔵は会員店制度をとっていました。つまりそこの酒は全国300店ほどのその酒蔵の会員店でしか買うことができない仕組みでした。会員店だけは大いに賑わったでしょうが、いかんせん数が圧倒的に少ない。ほとんど話題にならなかったのも無理はありません。また、新たな吟醸酒ファンを増やすことなど到底できなかったでしょう。できるだけ多くの方々に飲んでもらいたい、新たな吟醸酒ファンを増やしたいと、注文があればどこの小売店にも出荷した出羽桜さんとは大きな違いです。

日本酒業界の問題点
 長年吟醸酒を商い続けてきて、いまだにわからないというか、馬鹿げていると思うことがあります。それは、ただ単に入手困難かどうかということだけをもって酒を評価する風潮です。酒の品質は二の次でその酒が入手困難だということだけで有り難がるのです。有名地酒小売店といわれる店の中にはこのような銘柄だけを集めて料飲店相手にふんぞり返っている輩もいます。また酒蔵の中にもそのような銘柄になることに憧れを抱いている輩もいます。
 しかし、入手困難さを売りの第一にするということは、裏を返せば増産できないということでもあります。入手困難であることによって人気が出た酒は、人気が出た故に増産すれば、比較的たやすく手にはいるようになり、結果、人気が無くなるという皮肉な結末になるのです。このやり方は日本酒市場を狭めこそすれ、けっして広げることはないのです。
 国税庁が発表している「酒類製成数量の推移」という表があります。昭和45年から平成18年までの酒類の推移です。それによると日本酒は昭和50年がピークで平成18年はピーク時の40%以下にまで落ちています。また、全酒類に占める日本酒の割合はたったの5%台なのです。
 おいしい日本酒の素晴らしさを少しでも多くの方に伝えるという本来あるべき姿を忘れ、目先のことばかり考えていると、日本酒業界そのものがほんとうの幻になってしまうかもしれません。



商  品  紹  介
麓井『純米吟醸 雄町 おりがらみ生酒』
 純米吟醸新酒にごり酒です。雄町独特の線の太さがお楽しみいただけると思います。
 おりがらみの雄町は注文分だけの生産ですので、売り切れの際はご容赦ください。
  内容 原料米:岡山県産雄町100% 精米歩合:50% 度数:16.5度
                     1.8L 3150円
出羽桜・純米大吟醸
 『しぼりたて生原酒 一路 500ml』
 1月入荷分はすでに売り切れましたが、お客さまの声にできるだけお応えしようと蔵人たちが精一杯つくり続けた結果、2月にも販売できる運びとなりました。
 なお、今回が最後の入荷です。飲み損ねた方はこの機会をお見逃しなく!
  入荷時期:2月中旬(予約受付中。入荷予定本数に達し次第締め切ります)
  内容 原料米:山田錦 精米歩合:45% 度数:17〜18%
     日本酒度:+4 酸度:1.3 使用酵母:小川酵母
                     500ml 1750円
お 知 ら せ
第21回「名酒を楽しむ集い」ご案内
日時 平成21年2月21日(土)
       受付/午後6時  開宴/午後6時30分
会場 つたや本店
会費 10000円
定員 40名
主催 富田酒店
協賛 つたや本店
 出品酒:出羽桜「純米大吟醸しぼりたて生原酒・一路」
     栄光冨士「大吟醸 古酒屋のひとりよがり生 吊し取り」
     初孫「純米大吟醸・祥瑞」
     李白「純米大吟醸・李白」
     花羽陽「大吟醸・絹 しぼりたて生原酒おりがらみ」
※参加申し込みは富田酒店までお願いします。
※出品酒の中の
   栄光冨士「大吟醸 古酒屋のひとりよがり生 吊し取り」と
   花羽陽「大吟醸・絹 しぼりたて生原酒おりがらみ」は
   この集いのための特別酒で市販はしておりません。




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