第256号(2009.1.10)
間酒・寒前酒・寒酒
 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 年末から正月三が日にかけて、天気予報では寒波の到来で北陸から北の日本海側は大荒れの予想でしたが、こと新庄に限っていえば、たいして雪も降らず、風も吹かず、ときおり陽も差す静かな正月になりました。
 100年に一度の大不況で今年は巷に失業者があふれかえるとの物騒な予測が飛び交っていますが、天気予報のようにこの予測も外れてくれることを祈るばかりです。
 6日現在の新庄の積雪は30cmです。
 さて、正月もあけ、酒蔵では寒づくりの真っ最中で、吟醸酒などの美味しいお酒が仕込まれています。
 寒い時期に酒を集中的につくる、いわゆる寒仕込みが確立したのは江戸時代の灘地方においてですが、当時の人々は酒ができる時季によって味わいが違うことから間酒・寒前酒・寒酒と細分して呼んでいたようです。
 今回の富田通信はこの「間酒」「寒前酒」「寒酒」について坂倉又吉著『酒おもしろ語典』より紹介します。

間酒・寒前酒・寒酒
 酒造りというものは、微妙なもので、寒い間に造るとはいえ、その時季によってまた出来栄えも違ってきたものです。
 そんなこともあって、昔は、酒を造る時季によって、それをさらに細分していました。古事類苑には、それを「間酒」「寒前酒」「寒酒」と分けていますし、歳時記には「新走(あらばしり)」「早稲酒」「今年酒」という言葉が出ています。
 このうち、「間酒」というのは、「あいしゅ」または「あいざけ」と読み、また、「あいづくり」ともいっていました。これは、まだ本格的酒造季に入る前に、もう古酒も大部少なくなったので一部の倉で間をつなぐという意味で造った酒です。したがって、新米の出来るのを待ちかねて、少なくもモトは古米を使ったでしょうし、ときにはモロミも古米を使ったこともあるようです。
 したがって、この頃の酒は、薄っぺらな、しかも気候の関係もあって辛い酒となりました。歳時記の「新走」というのがこれに当たり、これはその目的からしても、出来た酒は、すぐ新酒の走りとして市場へ出されたものです。
 「寒前酒」(かんまえざけ、またはかんまえしゅ)は、これは読んで字の如く、寒に入る前に早めに造る酒のことで歳時記にある「早稲酒」がこれに当たりましょう。
 「寒酒」(かんしゅ)は、古事類苑に、「寒中に造るによりこの名がある」とありますが、正にその通りであり、したがって「寒造り」ともいいます。酒造の時季は、もとより寒いに越したことはありませんから、「寒造り」こそもっともふさわしいのであって、歳時記によれば、「寒中の水で酒を造ること、または醸造した酒のことをいう。寒酒は香味の秀でていること、長く貯蔵の出来ることで珍重される」とあります。たしかに、冷房はおろか、氷さえなく気温の管理は「あなた任せ」の昔であってみれば、寒造りは空気は清浄、水には雑菌も少なく、それに寒いのでモロミの温度も上がらず、したがってキメの細かいコクのある酒が造り易いというのも当然でありましょう。
 「酒は秋になると旨くなる」というのは、その寒造りの酒が貯蔵され秋に出回るからでもあります。

 と、坂倉又吉氏は書いていますが、昔の人たちが酒の製造時季によってその呼び名を変えていたとは驚きですね。それだけ、酒を愛し、酒の味に厳しかったのでしょうね。
 いまは、温湿度管理や製造技術の進歩などで、つくろうと思えば一年中それなりの酒をつくることができるようになり、このような言葉は消えてしまいましたが、それでも旨い酒を飲みたいという気持ちとそれを味わえる感性だけはけっして失いたくはないものですね。・・・乾杯!



商 品 紹 介
       出羽桜 純米大吟醸
         『しぼりたて生原酒 一路 500ml』
 一路は出羽桜が吟醸酒の商品化を始めてしばらくの昭和57年に発売され、「真実一路」、吟醸一筋の想いを込めた出羽桜・吟醸酒の原点ともいうべき酒です。
 その初代「純米吟醸酒・一路」が、ロンドンで去年9月3日に開催された世界最高峰の酒類品評会「IWC2008」の「SAKE部門」において、出品313銘柄中の最高賞である「チャンピオン・サケ」の称号を獲得しました。
 この受賞を記念して、全国の御愛飲家の皆様に一路の素晴らしさを知っていただきたいとの想いから、出羽桜さんが今回限りのこととして、「しぼりたて新酒」の一路を発売します。
 二度と無いチャンスです。ぜひお買い求めください。
 なお、入荷数量に限りがございますので、品切れの際はなにとぞご容赦ください。

  入荷時期:1月下旬(予約受付中。入荷予定本数に達し次第締め切ります)

  内容 原料米:山田錦 精米歩合:45% 度数:17〜18%
     日本酒度:+4 酸度:1.3 使用酵母:小川酵母
                     500ml 1750円
上喜元 価格改定のお知らせ
 上喜元さんから、原材料高騰の影響で1月1日から販売価格を変更せざるを得ないとの連絡が入りました。
 改定後の価格は以下のようになります。

   ○純米吟醸 上喜元       1.8L     2993円
   ○純米吟醸生 上喜元      300ml     462円
   ○特別純米 赤磐雄町60    1.8L     3045円
   ○超辛純米吟醸完全発酵    1.8L     2940円
   ○純米 出羽の里         1.8L     2090円
   ○純米 にごり酒         720ml     1313円
   ○うめしゅ              1.8L     2520円
   ○うめしゅ             720ml     1260円



……… 編 集 後 記 ………
○今年に入っていつ見た夢を初夢というのかは知りませんが、今年最初に見た夢はどこかの鑑評会でずらりと並んだ吟醸酒のきき酒をしている夢でした。会場には見知った顔もあって、かなりリアルでした。目覚めたとき嫌な夢を見たと思わなかったところをみると、私にとってきき酒は果たして仕事なんだか趣味なんだか・・・。
○新庄商工会議所会報に今年一年間、お酒にまつわるおもしろ話を連載することになりました。もし、目にする機会がありましたら読んでやってください。
○吹き始めてからそろそろ三年になる篠笛。「石の上にも三年」の言葉からすると少しは上手くなっていてもいいはずなんですが。プロの篠笛奏者に言わせると三年ではまだよちよち歩きの段階とか。その言葉を励みに、精進せねば。

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