第253号(2008.10.10)
我々はどのようにしてだまされるのか
 9月27日から一週間ばかり最低気温が10度を割る日が続いたせいか、裏庭の柿の実がだいぶ色づきはじめました。いよいよ秋本番といった感じです。
 先日、インターネットであちこちのホームページを見ていたら、佐藤健太郎氏が開設している『有機化学美術館』というとっても面白いホームページを見つけました。内容は様々な分子の姿と、それにまつわるエピソードを紹介したものですが、「環境問題と有機化合物」とか「生命を守る・医薬の戦い」など、私たちの生活に密着する話題などもたくさん載っています。
 今回の富田通信は、このホームページに載っている項目の中から刺激的で考えさせられる記事を紹介しましょう。

我々はどのようにしてだまされるのか
 以下の文章は『有機化学美術館』の「ニュースの中の化学物質」という項目の書き出しの部分です。
 『1997年、ネイサン・ゾナー君という14歳の少年が書いた「我々はどのようにしてだまされるのか」というタイトルのレポートが科学フェアで入賞し、マスコミにも取り上げられて話題を呼びました。彼はDHMOという化学物質の害を指摘し、この物質の使用規制を求めて周囲の50人の大人に署名を求め、うち43名のサインを得ることに成功したのです。彼の挙げたDHMOの危険性は、

(1)酸性雨の主成分であり、温室効果を引き起こすことも知られている
(2)多くの場合、海難事故死者の直接の死因となっている
(3)高レベルのDHMOにさらされることで植物の成長が阻害される
(4)末期癌の腫瘍細胞中にも必ず含まれている
(5)この物質によって火傷のような症状が起こることがあり、固体状態のDHMOに長時間触れていると皮膚の大規模な損傷を起こす
(6)多くの金属を腐食・劣化させる
(7)自動車のブレーキや電気系統の機能低下の原因ともなる

といったものです。そしてこの危険な物質はアメリカ中の工場で冷却・洗浄・溶剤などとして何の規制もなく使用・排出され、結果として全米の湖や川、果ては母乳や南極の氷にまで高濃度のDHMOが検出されているとネイサン君は訴えました。さてあなたならこの規制に賛成し、呼びかけに応じて署名をするでしょうか?
 鋭い方ならお気づきの通り、DHMO(dihydrogen monoxide)は和訳すれば一酸化二水素、要するにただの水(H2O)です。読み返していただければわかる通り、DHMOの性質について隠していることはあっても、ウソは一つも入っていません。単なる水であっても、恣意的に危なそうな事柄だけを取り出せばいかにも危険な化学物質のように見え、規制の対象とさえなりかねない――。ネイサン少年の指摘はなかなかに重い意味を持っているように思えます。』

 このあと記事は、食品の着色料として用いられるアカネ色素の発ガン性についての過剰な報道の問題や、環境ホルモン作用を持つとされた物質に対する過剰な報道とその物質が実は環境ホルモン作用が無かったと分かったときの報道の取り上げの無さへと続きますが、皆さん、いかがです?
 ネイサン少年のDHMO規制の話は笑い話ですまされますが、これが二酸化炭素による地球温暖化の話だったり、ダイオキシンの話だったらどうですか?
 地球温暖化はその原因の大半が地球の気候変動によるもので、二酸化炭素による温暖化への影響はごくわずかだという研究報告もあります。
 また、青酸カリの1万倍、サリンの17倍もの毒性があるとされるダイオキシンも最近では実はあまり大した毒性は無いのではないかと言われはじめています。1976年7月、北イタリアのセベソの農薬工場で事故が起こり、推定130kgものダイオキシンが噴出しました。周辺住民17000人がこれを浴び、さらには対応の悪さから避難をはじめたのはなんと事故から1週間も経った後だったのです。22億人分の致死量のダイオキシンをたっぷりと浴びたのです。悲惨な結果を予測してヨーロッパ中がパニックになりました。ところが驚くべきことに死者は一人も出なかったのです。奇形児の出産を恐れて中絶した妊婦もたくさん出ましたが、胎児にも異常は見つかりませんでした。その後に生まれた子供やダイオキシンを直接浴びた住民の追跡調査が長年続けられていますが、病気の発生率や死亡率に特に異常は見られないとのことです。
 ある本によると、日ごろ私たちが摂取する量のダイオキシンが健康被害を生まないことは1980年代に分かっていたことで、ダイオキシン騒ぎはその当時、構造不況を迎えていた焼却炉メーカーが起死回生の策として練り上げたものだったそうです。ちなみに「ダイオキシン類対策特別措置法」が制定され、焼却炉業界は立法前後の3年間で3〜4兆円の売上を誇ったとのことです。
 「人類の危機!」のような過激な報道がもてはやされる中、真相を知るのはほんとうに難しいですね。佐藤健太郎氏は『化学物質はなぜ嫌われるのか』という本も出しています。興味のある方はぜひ読んでみてください。



商 品 紹 介
出羽桜 『純米大吟醸酒 一路』
 昭和57年に発売された『純米吟醸 一路』は、吟醸造りの路“一筋”に打ち込む蔵人の想いを名に負った出羽桜・吟醸酒の原点です。
 その『一路』が世界最高峰の酒類品評会IWC2008の「SAKE部門」において、出品銘柄中の最高賞である「チャンピオン・サケ」の称号を獲得しました。
 このたび、『一路』は酒質を純米大吟醸酒にグレードアップし、再度、吟醸酒の素晴らしさを世に問います。『一路』の持ち味である上品でバランスの良い香りと味わいをお楽しみください。
 なお、『一路』が「チャンピオン・サケ」を受賞したため、メーカーに注文が殺到し、当店入荷量もごくわずかとなってしまいました。売り切れの際はご容赦ください。
  内容 日本酒度:+4  酸度:1.3  アルコール度:15度〜16度
     原料米:山田錦100%  精米歩合:45%  酵母:小川酵母
                     720ml  2800円

※IWCとは、インターナショナルワインチャレンジ(International Wine Challenge)の略で、1983年に英国で設立された世界で最大規模・最高権威に評価される酒類品評会の一つです。
 日本酒部門は昨年設立され、26名の審査員が、銘柄を隠してのきき酒により評価します。出品部門は「純米吟醸・純米大吟醸」「吟醸・大吟醸」「純米」「本醸造」「古酒」の5部門。
 審査の第一段階は、厳しい審査基準を通過した商品に金メダル・銀メダル・銅メダルを授与。第二段階は、各部門の金メダル受賞酒の中から最高評価の酒に「トロフィー」を授与。第三段階は、「トロフィー」受賞酒の中から、全出品酒の最優秀酒として1銘柄のみに「チャンピオン・サケ」の称号が与えられます。

※従来の『純米吟醸 一路』は火入れ、本生とも売り切れです。



……… 編 集 後 記 ………
○今年も早10月。黒鯛のヘチ釣りができるのもあと僅か。暗く荒れ狂う冬の海が来る前に時間を見つけてせっせと釣りに励むことにしましょう。それにしてもガソリンの高いこと・・・。

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