第250号(2008.7.10)
蜀山人(しょくさんじん)
 6月19日の梅雨入り以来、7月6日までの間に新庄は7日ほどしか雨が降ってません。どうやらこちらは今年は空梅雨のようです。
 さて、富田通信も250号を迎えました。この区切りの号に何を書こうかとあれこれとすっかりネタ切れになった頭の中をさんざん探し回ったのですが無いところに見つかるはずもなく、苦し紛れに二階に積んである本をひっくり返していたら格好の題材が見つかりました。
 そんなわけで今回の富田通信は、芝田晩成著『酒鑑(さけかがみ)』より、蜀山人をご紹介しましょう。

酒仙の婚礼
 蜀山人は江戸時代の江戸の酒仙、狂歌師としてあまりにも有名である。こういうと、年中酔っぱらっていて、ふざけた歌をうたって、手のつけられないなまけ者のように思われるが、実は、世にもまれな高潔な人格と、すぐれた識見の持主であった。本名は大田直次郎(1749〜1823)で、南畝(なんぽ)、四方赤良の名も使っている。彼の弟子には、有名な宿屋飯盛(やどやのめしもり、石川雅望、1804〜1830)がいる。この男も酒豪で、

  げに酒は憂ひを払ふ箒とて
          たわごとも吐く青へども吐く

 と歌っているから相当なもんである。また蜀山人の友人に、唐衣橘洲(1742〜1802)がいる。狂歌の祖ともいわれ、酒の方も、

  とかく世は喜び鴉(からす)酒のんで
          夜があけたかァ日がくれたかァ

 といった按配である。
 蜀山人は、一年三百六十日、雨の日も風の日も花に月に雪に、盃を手からはなさなかったというから、全くむだがない。こんなに酒好きでも、どうした風の吹きまわしか、禁酒をしたことがあるという。だが、三日坊主で、すぐ破れてしまった。そのときの歌に、有名な、

  わが禁酒やぶれ衣(ごろも)となりにけり
          さしてもらおうついでもらおう

 がある。こうして飲みだし、酔いつぶれて橋の上でへどを吐いていると、野次馬が集まってきて、「喰らい酔いだ、喰らい酔いだ」といって笑った。すると蜀山人は、

  酔伏してへどをつき(月)夜であるものを
          闇(くら)い宵(喰らい酔)とは誰かいふらん

 とやり返した。そして、なにかにかこつけては飲んだ。

  花の酒は瓢箪、月の酒は徳利に風情有り。雨の日の新酒、雪の夜は古酒、独(ひとり)飲みて興起り、暖より冷を好むを真の酒客といふべし。

 なるほど、花見は外の酒であるから一瓢を腰にして出かける。月見は自宅の縁側で、ちびりちびり、徳利をかたむける。雨の日は、あっさりした風味の新酒、寒い雪の夜は、味ののったコクのある古酒をじっくり飲む。かん酒は下戸、真の酒飲みは冷やを引っかける。
 蜀山人も人後におちず、酒のうえでの失敗はあった。門人たちがそれを心配して妻を持つことをすすめた。根があっさりした蜀山人は、門人たちにそれをまかした。そこで、善は急げということで話がまとまった。嫁にくる婦人も、先生の非凡を知っているから決して凡人ではない。さて、いよいよ婚礼となり、蜀山人が相手の婦人を、ちらりと見ると、きりょうはよいが、片目であった。蜀山人は門人に「外でもないが、あの婦人は片目だね」「はい、早急のこととて、つい、前もって申しあげませんでした」とあやまると、「いやいや、そんなこと気にするものではない。人はきりょうより心が肝心だ。気だてさえよろしければ申し分ないのだ」といいながら、懐紙を出して、さらさらと一首、仲人がとりあげて見ると、

  今宵こそ夫婦かための盃を
          ひとつのめ飲めひとつのめのめ

 仲人が感心していると、「その歌は、私から嫁女におくるお祝いだ。どうか見せて下され」と蜀山人はいった。仲人が困った様子で、頭をかきながら花嫁にその歌を見せると、嫁は、にっこり笑ってうなずき、早速、返歌を作って「これを私の夫へ」と、つつましやかに差し出した。

  みめ良きは夫のためのふためなり
          女房は家のかためなりけり

 蛇足ながら、かためは片目、女房の方は固めとかけた。ひとつのめは、一つの目と、ひとつ飲めとかけている。また、ふためは、不為と二目をかけた。



商  品  紹  介
出羽桜 吟醸にごり酒『微発泡 とび六』
 乾杯の酒、脂っこい食事と相性の良い酒、出羽桜がそんな要望にお応えするのが吟醸にごり酒の『微発泡 とび六』です。
 今年の『とび六』は今のところまだ炭酸がそれほど強くなく、爽やかな酸味と相まってとても美味しく仕上がってました。まさに『美発泡 とび六』です。
  原料米:麹米・美山錦 掛米・雪化粧 精米歩合:50%
  度数:15〜16度 日本酒度:−3 酸度:1.5 酵母:小川酵母

  ※取り扱い注意点
  ・必ず冷蔵庫で保管してください。
  ・開封の際は噴き出す恐れがありますので、冷たいまま、ビンを振らずに、王冠を少し開けたり締めたりを繰り返し、ビン内部のガスを十分抜いてから開封してください。
  ・沈んだ「オリ」は、開封後、王冠を締め直した後に、軽くゆすって混ぜてください。
                     300ml 630円
上喜元 発泡性純米酒『涼夏(すずか)』
 夏本番を直前に控え、暑い夏にぴったりな発泡性純米酒のご紹介です。
 山形県で開発した特許酵母を使用し、発泡性純米酒に最適なにがみと甘さ、そしてコクをバランス良く仕上げた一本です。
 発泡性というとにごり酒を連想しますが、この酒はスッキリと澄んでいて、にごりではありません。
 夏に涼を運んでくれたらとの願いを込めて、商品名は涼夏(すずか)。そんなわけで、発売時期も6月〜9月までの限定出荷です。
 キンキンに冷やしてお召し上がり下さい!!
  原料米:出羽の里 精米歩合:60% 日本酒度:−25
  度数:9.5%
                     330ml 546円
うれしいお知らせ
 4月、ロンドンにて「インターナショナルワインチャレンジ2008」のSAKE部門の審査が行われ、純米吟醸酒・純米大吟醸酒の部で『出羽桜・一路』が最優秀賞である「トロフィー」を受賞しました。



……… 編 集 後 記 ………
○さてと、富田通信も書き終えたことだし、来週あたり、クロダイ釣りにでも行くことにしましょう。・・・乾杯!

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