第235号(2007.4.10)
酒のみの話
 3月27日、新庄の積雪もとうとうゼロになりました。3月初めに一度積雪ゼロになったのですが、その後、最大瞬間風速が30m/sを超す吹雪や真冬日、それに今冬の最大積雪量を記録するなど、まるで2月の天気と入れ替えになったような3月でした。
 でも、もう4月。5日の朝に家々の屋根がうっすらと白くなるほどの雪がちらつきましたが、道路に積もるほどの雪が降ることはもうないでしょう。新庄の桜の開花予想は今月の19日。春が見えるところまで近づいてきました。
 ところで、先月の23日に山形市のホテルメトロポリタン山形で県の酒造組合主催の『山形県新酒歓評会』があり参加してきたのですが、先日、友人がメールで「山形新聞のネットニュースに載ってる山形県新酒歓評会の写真は君じゃない?」と知らせてくれました。さっそく見てみると、たくさんのお酒のビンを前にして今にも涎を垂らしそうな顔をして杯を持っているのはまさに私でした。
 じつはこの写真を撮られたコーナーは山形県の酒米新品種「出羽の里」で仕込んだ酒が並んでいた場所で、商売柄、気になってのぞいていたのですが、この顔はもはや仕事を忘れた、ただの酒好き、酒のみの顔でした・・・。(汗)
 ところで、酒のみといえば先日読んだ『日本の名随筆66 酔』田中小実昌編 作品社にサトウハチローの面白い文が載っていましたので紹介します。
 サトウハチロー(1903〜1973)は大変ユニークな人で、たしか彼の異母兄妹である佐藤愛子さんだったと思うんですが、テレビで「ハチローは夏、家にいる時はいつも素っ裸で、来客があると団扇で前を隠して玄関に出るんですが、その内、暑い暑いと手にした団扇で顔をあおぎ出すもんですからお客は目のやりどころに困り・・・」と楽しそうに話していたのを記憶しています。

酒のみの話     サトウハチロー
 酒のみというものは、どういうものか酒のこぼれるのだけは非常に惜しがる。あやまってお膳へこぼしてみたまえ。十人が十人「もッたいない」と唇をつけて、すするから。・・・これがお盆の上にこぼした場合には、手に持ってかたむけてのむ。
 酒のみが、二、三人寄って、とっておきの二合瓶を薬鑵に入れて、おかんをした。そのうちにピーン・・・。しまッたと思って瓶を持ちあげたら、瓶は軽い。湯の中へ酒は合体してしまッた。すると一人が言った。
「待ちな、煮つめてから呑もう」
(これは実話だ)
 戦争中に、ある学校の先生は標本室にある魚のつけてあるガラス壺のフタをあけて、何気なく匂いをかいでみた。まさしくのめるアルコールだ。
「これあるかな」
 と、魚はホルマリンの瓶へ移動させて(魚はいいあんばいに移動申告の必要がないんですな)あとのアルコールを、みんなちょうだいしてしまった。
「ウイッ、うめえ、うめえ」
 と、口の中へ指を入れて、舌の上にのッてた魚のウロコをつまみ出して、
「洒落てるね、肴入りの酒だ」
 のみたくなると、我慢が出来なく、何とか工夫してのむ機会をこしらえるのが酒のみだ。
 酒の書物というのをみたら、すごく頂けるのが出ていた。
 トラファルガー沖の一戦に、(大きく出たね)敵を打ち破り、英国を泰山の安きに置いたネルソンは、勝利のラッパが、空と波とに、響いた時は、名誉の戦死をとげていた。
「ネルソン大提督の死骸を腐らせてはいかん」
 というので、屍はラム酒の樽に、うやうやしくつけられた。ラム漬けとしたわけだ。
 水兵達は(士官もいたかな)泪と共に、その樽をかこみ、船は勝利の旗をかかげて、凱旋の途についた。
 祖国の港に船がついて、悲しき軍楽と共に樽は船から下ろされたが、ばかに軽い。おわかりですな。何人かの酒好きが、屍づけのラム酒をのんでしまッたのだ。
 爪のアカをせんじてのんでさえ偉くなるらしいから、この連中は必ずその後海の猛将軍となったろうと思うが、そのことは別に何とも書いてない。だがこの時から、ラムのことをネルソンの血というそうだ。そしてそれからしばらく一杯やることを、
「どうだい提督をのもうか」
 というのが流行したそうだ。
 洛陽の酒徒、もッていかんとなす。


 いやぁ〜、魚や人の屍が入った酒までのんでしまうのに比べれば、私の酒のみなどはかわいいものですね。・・・エヘヘ。



商  品  紹  介
山形の生酒 限定醸造頒布会
 山形県内18社の蔵元が腕によりを掛けて仕込んだ生酒を300mlのビンに詰めて、毎月6種類×3カ月、お届けします。
 いろいろなお酒をじっくりと楽しみながら味わうことのできる、またとないチャンスです。
 頒布期間/平成19年5月・6月・7月まで毎月各1回、計3回
 会  費/毎回3150円×3回(税込)
 申込締切/平成19年4月20日

 頒布酒(いずれも300ml瓶詰め生酒)
  5月 和田酒造 大吟醸  あら玉
     東光   大吟醸  無濾過
     月山酒造 純米吟醸 月山の雪
     奥羽自慢 吟醸酒  吟醸生酒奥羽自慢
     東北泉  吟醸酒  吟醸生酒東北泉
     霞城寿  本醸造  三百年の掟やぶり(無濾過原酒)

  6月 東の麓  純米大吟醸 てつ
     錦爛   純米吟醸 きんらん
     秀鳳   純米吟醸 出羽の里原酒
     栄光冨士 吟醸酒  なまいき
     初孫   吟醸酒  初孫吟醸生
     六歌仙  純米酒  純米生酒 アベリア酵母(花酵母)

  7月 亀の井  純米大吟醸 黒ラベルくどき上手
     麓井   大吟醸   麓井の圓
     花羽陽  純米吟醸  出羽の里
     千代寿  吟醸酒   吟造り生酒
     樽平   純米酒   雪むかえ
     出羽桜  本醸造   春の淡雪(にごり酒)

※発送の場合は送料が加算されます。ご了承ください。



……… 編 集 後 記 ………
○去年はいろいろなことがあってほとんど釣りにも行けず、したがって去年のクロダイの釣果はゼロ。そろそろ暖かくなってきたし、今年は去年の分も釣るぞぉ〜。さてと、仕舞い込んであった釣り竿の手入れをしなくっちゃ!

E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール