第223号(2006.4.10)
「酒」の名言名句Part2
 3月末、新庄は大寒の時期のような猛吹雪に襲われ、やっと消えたと思った雪も31日には14cmにまで増えました。それでも今月に入ってようやく田んぼの雪も消えて黒々とした土が姿を現わし、やれやれこのまま春に向かうのかと思ったら、6日にまた吹雪・・・。どうもすんなり春ってな分けにはいかないみたいですね。
 さて、今回の富田通信は新年度ってことで志も高く、文学の中で語られた酒や酒飲みに関する名言や名句を集めてみました。

○私は今でも少し飲みすぎるが、飲むまいと思えば飲まないでいられるという自信があるために、自分で自分に気を許して飲んでしまう。たいていの酒飲みがそうだろう。
                    井伏鱒二『週間日記』(昭和40年)
 そうかなぁ・・・。私の場合はそんな自信はなく、ただ、飲む前にはいつも、「今日は飲み過ぎないぞ!」と固く決意をするのですが、これはしらふの時の決意であって、飲めば飲むほど、酔えば酔うほどに楽しくなり、つい、かなり飲み過ぎてしまうのでありました。(汗)

○大体お酒のみには二種ありますね。酔ひたい人と、飲みたい人とです。
                   内田百閨w百鬼園座談』(昭和55年)
 うぅ〜ん、私はどっちだろう。とりあえず飲みながら考えよう。。。

○今宵は仲秋名月(ちゅうしゅうめいげつ)
 初恋を偲(しの)ぶ夜
 われら万障くりあわせ
 よしの屋で独り酒をのむ

  ※よしの屋は当時、新橋にあった飲み屋  井伏鱒二『逸題』(昭和12年)
 いや〜、酒飲みはロマンチストですね。独り、昔に思いを馳せながら名月を肴に酒を飲む。うう〜ん、そんな酒飲みに私はなりたい・・・。

○酔ふのはいい心持(こころもち)だが、酔つてしまった後はつまらない。飲んでゐて次第に酔つて来るその移り変りが一番大切な味はひである。
                 内田百閨w新稿御馳走帖』(昭和43年)
 まったく同感です。さすがいいことをおっしゃいますね。

○酒は男の飲む者(もの)になって居(い)て女で酒を飲むものは極めて少ない。これは生理上男の好(す)くわけがあるであろうか。或(あるい)は単に習慣上然(しか)らしむるのであろうか。寧(むし)ろ後者であろうと信ずる。
                    正岡子規『病牀六尺』(明治35年)
 明治はほんとうに遠くなりましたね。もし、正岡子規が現在に生きていたら、女の子たちと楽しく飲んで、少なくとも35歳で亡くなるようなことはなかったかもしれませんね。

○いよいよ、いけなくなって、浴衣ァひっかかえて、表ェとび出したとき、どういうわけだか、あたしの頭ん中に、ツツーッとひらめいたのは、まごまごしていると、東京じゅうの酒が、みんな地面に吸い込まれちまうんじゃァなかろうかという心配です。−中略−
「酒ェ、売ってください」
てえと、向こうはもう商いどころじゃァない。早いとこ逃げ出すことで、精一杯のさ中だから、
「この際です。師匠、かまわねえから、もってってください」
「二円五十銭しかありませんよ」
「ゼニなんぞ、ようがすから、好きなだけ、呑んでください」
 そういうひまも惜しいように、あわてふためいてもう表へとび出した。しめたってんで、あたしゃァ、そこにころがっていた四斗樽の栓をぬいて、一升ますでグイグイグイってあおりましたよ。いい酒だから、いやァうめえのなんの、あんまりうめえから、ついでにもう一ぱい、キューッ!
 あたしは、酒は好きだが、そんなにバカ呑みするほうじゃァない。一ぺんに一升五合も飲みゃァ、もう十分です。
 そうしている間にも、棚から一升びんが落っこちて来て、あたしの足もとではぜたりする。もったいない話です。こんなもったいないことを、とても見のがすわけにはいかないでしょう。まだ割れない奴が、二、三本あったから、そいつを赤ん坊でも抱くようにして、表ェとび出した。

         古今亭志ん生『びんぼう自慢』(平成5年)志ん生文庫6
 これは、作り話や落語の中の話ではなく、志ん生が東京の自宅で関東大震災にあったときの実際の話です。世の中に酒飲み多しといえど、これだけ肝の据わった酒飲みは滅多にいるものじゃァありませんね。・・・乾杯!



商  品  紹  介
最上川 『純米大吟醸』
 山形県の酒米「出羽燦々」を全量使った純米大吟醸です。まだ酒が若いため味に若干角がありましたが、なかなかいい酒でした。
  内容 原料米:出羽燦々100% 精米歩合:40% 度数:15〜16度
     日本酒度:+2〜+4 酸度:1.2〜1.4
                    1.8L 3500円
上喜元 『純米 出羽の里』 生酒
 富田通信215号で「夢の米『出羽の里』」と題して「よく溶け、味がくどくならないという希有な特性を持つ『出羽の里』は、普通酒(けっして普通じゃない)と大差ない価格で、晩酌に耐える旨い純米酒を造り出す力を持っているはずです。願わくば一日も早く日本酒の戦後が終わらんことを。そして純米酒が普通酒と呼ばれる日の来ることを夢みて」と書いたのですが、その夢が一歩、現実に大きく近づきました。
 上喜元さんが、精米歩合80%で「出羽の里」の純米酒をつくってくれたのです。今回は初回出荷ということで生酒での出荷です。
 きき酒をしてみましたが、精米歩合80%とはとても思えないほど味が綺麗で、酸もほどよく効いていて、予想通りというか予想を遙かに超える美味しい酒でした。
 皆さんもぜひお試しください。お薦めのお酒です。
  内容 原料米:出羽の里100% 精米歩合:80% 度数:16.2度
     日本酒度:+2 酸度:1.7 アミノ酸度:0.9
                    1.8L 1995円
山形の生酒 限定醸造頒布会
 県内18蔵元の生酒の頒布会です。内容は吟醸が8、純米吟醸が8、原酒が1、にごり酒が1とかなりお買い得です。
内  容 毎月300ml×6本の3カ月(5・6・7月)
会  費 毎回3150円×3回(発送の場合は送料が加算されます)
申込締切 平成18年4月20日
参加蔵元
 あら玉 新藤酒造店 最上川 月山酒造 菊勇 寿虎屋酒造
 上喜元 山栄遠藤酒造店 米鶴 竹の露 千代寿 初孫
 東光 羽陽錦爛 六歌仙 鯉川 栄光冨士 出羽桜



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