第220号(2006.1.10)
雪雑感
 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 いや〜、それにしてもこの冬の雪はすごいですね。新庄も12月の天候がまるで例年の1月のようでした。
 毎日のように雪が降り続き、最高気温が0度を割る真冬日が続き、猛烈な吹雪に襲われ、年末には屋根の雪下ろしを余儀なくされました。12月中に本格的な雪下ろしをしたのは、ここ二十数年無かったように思います。
 1月8日現在の新庄の積雪は121cmです。この数字が1月下旬から2月上旬のもっとも積雪量の多いときのものなら平年並みなんでしょうが、本格的な降雪はこれからなんですよね。先が思いやられます。
 もっとも、今回の記録的な豪雪は全国に雪国の生活の大変さを知らせたという点では貢献したかもしれませんね。
 12月中に名古屋を含む太平洋側で雪が降ったおかげで雪に対する関心が高まり、さらには新潟や長野の3mを超す積雪、12月からの雪での死者がもう60人を超えたことなど、連日全国版のトップニュースで報じられています。
 山形県内の1月7日現在の雪の事故での死傷者は120人で、その内訳は、死者が5人、重傷者66人、軽傷者49人となっています。
 でも、これは今回が特別なわけではないんですよね。程度の差こそあれ、毎年雪による犠牲者が出ているのです。
 最近10年間の山形県のワーストワンは2001年の冬で、死者15人、負傷者230人というものです。この年の富田通信2月号に次のように書いています。
 『雪、雪、雪・・・、12月末から降り始めた雪は止むことを忘れてしまったかのように一カ月近くも降り続けました。朝、長靴が埋まってしまうほどに積もった雪を来る日も来る日も掃き続け、疲れても疲れても掃き続け、たまに10センチほどしか積もっていない日は、ああ今日は楽な日だと喜ぶ、そんな1月でした。
 こんなことを書いても雪のほとんど降らない地方に住む人たちには、なかなか実感がわかないでしょうね。雪に五カ月近くも閉じこめられている地方と、雪のない地方。・・・風土の違いはそこに暮らす人々の価値観や感覚や人生観に大きな影響を与えているんでしょうね。きっと。』
・・・なにやら愚痴をこぼしていますが、たとえば台風被害なんかだとたとえ一人でも死傷者がでると全国版でニュースになりますよね。
 ところが、雪害の場合だと、死傷者が出ても下手をすると地元の新聞にも載らないってなことにもなりかねないくらいに、あつかいが小さいんですね。
 日本海側は毎年冬になれば雪が降るもんだし、雪が積もるもんだし、雪が積もったら屋根の雪下ろしをするもんだし、雪下ろしの最中に足を滑らせて落っこちて死んでも、屋根からの落雪の下敷きになって死んでも、そりゃ、雪国で暮らしているんだから仕方ないってなことなんでしょうね。
 あっ、イヤミでいってるんではないので誤解しないで下さい。仕方ないって思っているのは雪国に住んでいる私たち自身なんですから。いくら愚痴を言っても屋根に積もった雪は下ろさなければ家が潰れてしまうし、いくら腰が痛くても毎日積もる雪や下ろした雪は片づけなければ家が埋まってしまう。
 朝、起きると真っ先に外を眺め、雪が積もっていれば家の前の雪かき。日中も外を眺め、雪が積もれば雪かき。夜寝る前も次の日の朝のことを考えて、積もっていれば雪かき。この、雪最優先の暮らしが雪国の暮らしなんです。雪は本当にどうしようもなく、また、仕方ないものなのです。
 ただ、雪国に住んでいる私たちがそう思うのは仕方ないとしても、報道に携わる人たちまでがそう思ってもらっては困るのです。
 雪による災害つまりは雪害も、台風や大雨による災害と同じなんですよね。せめて死傷者がでたときには、台風や大雨による災害の時と同じように全国版のニュースで取り上げて欲しいっていうか、取り上げなければならないと思うんですよね。
 そうすれば、雪の降らない地方の人たちも雪国の暮らしの厳しさを実感することができると思うのです。また、そうすれば、テレビの有名なコメンテーターたちが大雪で難儀している人々の暮らしについて、ときおり、かなりトンチンカンなことをいって雪国の人の失笑を買うこともなくなると思うのです。
 今回の大雪は、雪の積もらない地方の人たちに、雪のたいへんさを知らせる切っ掛けになったという点で意味があったのかもしれません。
 しかし、春になり、雪が消えれば、雪国の人々は雪のつらさをすっかり忘れてしまいます。それはおそらく毎年の辛い冬を乗り越えるために身につけた生活の知恵なのかもしれません。
 もちろん、雪の積もらない地方の人たちは、来年の冬になれば、雪害での死傷者のニュースが全国版で流れない限り、毎年、雪国で何人も雪の犠牲になって命を落としていることなんか、すっかり忘れ去って、ただただ、雪の綺麗さを褒め称えていることでしょう。
 さてさて、天気予報によれば久しぶりに明日の朝の積雪はないみたいだし、今夜は吟醸新酒で雪見酒と洒落てみましょうか。・・・乾杯!




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