第214号(2005.7.10)
毎度、毎度のあきれた広告
 6月15日東北南部の梅雨入り。例年より遅い梅雨入り宣言に、今年はサクラも遅かったし、やはり季節が遅れているのかと思っていたら、6月下旬にいきなり最高気温が30℃を超える日が続きました。
 こりゃあ、梅雨を一足飛びに飛び越えて真夏がやってきたぁ。クロダイのヘチ釣りの季節到来とばかりに喜び勇んで海に出かけたのですが、期待に反してクロダイの反応はまったくありませんでした。
 たった4〜5日の真夏日で、もうすっかり夏が来たとだまされるのは私だけで、自然はゆっくりと時を刻んでるんですね。
 ところで、7月2日の新聞の朝刊に1ページを使って日本蒸留酒酒造組合が甲類焼酎の広告を載せていました。当店でも甲類焼酎を売っていますのであまり言いたくないのですが、その内容があまりにあきれたものでしたので、今回の富田通信はこの広告について独断と偏見で書いてみたいと思います。

おつかれ気味の夏には、
健康主義の甲類焼酎。

 磨きに磨いたから、不純物がない。軽やかに酔えて、
 翌日お酒が残りにくい。酔い覚めもスッキリ。
 その上、糖質・脂質ゼロなんて、うれしいじゃありませんか。


以上がその広告です。甲類焼酎がいかにも健康に良いように書かれていますが、果たしてそうでしょうか。細かく見てみましょう。

磨きに磨いたから、不純物がない。
 ごく大雑把にいうと、甲類焼酎は海外から粗留アルコール(アルコール度数88%前後)を輸入し、それを高精度の連続式蒸留機にかけ、水以外の不純物をまったく含まないアルコール度数96%の純粋なアルコールをつくり、これを水で割ってつくったものです。その意味で「磨きに磨いた(蒸留に蒸留を重ねたという意味か)から、不純物がない」というのは、間違っていません。
 しかし、日本蒸留酒酒造組合がいっている「不純物」とは何のことなんでしょう。日本酒、ワイン、ビール、ウイスキー、ブランデー、ラム等々、それぞれの酒をその酒たらしめているものは、他でもない日本蒸留酒酒造組合がいっている「不純物」に他ならないのです。
 名水といわれる湧き水より蒸留水の方が美味しくて健康に良い、などという人はまずいないでしょう。
 それぞれの酒特有の香気成分、色の成分、味の成分、つまりは美味しさの成分を「不純物」であると公然と言い放つ日本蒸留酒酒造組合は、酒は味わうものではなく、ただ単に酔えばいいものと思っているんでしょうね。きっと!
 それに「磨きに磨いた」という言葉の裏にはもうひとつ重大な問題が隠されています。それは、蒸留する元になるアルコールを含んだモロミの原料は何でもいいということです。不純物を含まない純粋アルコールにしてしまえば原料由来の風味はまったく残らないわけですから。
 以前は、原料に砂糖を精製した残りかすである廃糖蜜を使っていました。いまは何を使っているんでしょう? まったくの闇の中です。これほど情報開示が問題になっている現在に置いても、甲類焼酎には原料表示の義務がないのです。

軽やかに酔えて、翌日お酒が残りにくい。酔い覚めもスッキリ。
 確かに、蒸留酒の方が醸造酒よりもアルコールが身体に速やかに吸収される分、酔いが醒めるのもいくぶん早いことは実験で確かめられています。ですがそれは、わずかな差です。
 それよりも翌日に酒が残りにくいと思われているのは、その飲まれ方に原因があると思います。甲類焼酎はアルコールの水割りに他なりませんから、たいていの人は、飲むときにグラスに氷をたくさん入れて、甲類焼酎を水やその他のもので割って飲まれると思います。ですから、実際に飲まれるアルコール度数は10%前後、グラスに残り少なくなったときには氷もだいぶ溶けているでしょうからアルコール度数はほんの数%になっているはずです。
 酔い覚めスッキリなのは、おそらくアルコール摂取量が少ないからです。

そのうえ、糖質・脂質ゼロなんて、うれしいじゃありませんか。
 糖質や脂質がゼロだからカロリーもゼロなんて勘違いしちゃあいけません。アルコールそのものが高カロリー食品なんです。
 甲類焼酎とその他の酒類のカロリー差は、日本蒸留酒酒造組合がいっているいわゆる「不純物」の差でしかないのです。

 どうです? 私にはこのような広告を平然と言ってのける日本蒸留酒酒造組合の感覚がわかりません・・・。



商  品  紹  介
最 上 川 『大 吟 醸』(金賞受賞酒)
 今年の全国新酒鑑評会で地元蔵の最上川酒造さんが金賞を受賞しました。それを記念して、金賞受賞酒を詰めて発売しました。
 価格は嬉しいことに通常の大吟醸と同じです。ぜひ、お買い求めください。
 内容 原料米:山田錦 精米歩合:35% アルコール度:16.5度
    日本酒度:+5 酸度:1.1
               720ml(木箱入り) 3360円
最 上 川 『雪室 本醸造』
 冬に出来た酒をそのまま雪室で熟成させた、香りが華やかでキレのあるタイプの本醸造です。試飲してみましたが、味が良くまとまっていました。
 内容 麹米:美山錦 掛米:はなの舞 精米歩合:60%
    アルコール度:15.3度 日本酒度:+3〜+5 酸度:1.1〜1.3
                    1.8L 2100円
○売り切れました。
 出羽桜『夏祭り とび六』
  先月入荷した出羽桜『夏祭り とび六』ですが、あっという間に売り切れてしまいました。お買い上げありがとうございました。
  また、たくさんのお客様に品切れでご迷惑をおかけしました。申し訳ございませんでした。
  来年も発売になるかと思いますので、ご容赦ください。



……… 編 集 後 記 ………
○早いものでもう7月。一年の半分が過ぎてしまいました。若い頃はもう少し時間の歩みが遅かったような気がしたのですが、歳を取る毎に年々早くなります。記憶力の低下と共に覚えることが少なくなり、映画のコマ落としのように時間が早く感じられるのでしょうか。それとも感性の低下と共に感動することが少なくなり、そう感じるのでしょうか。視力の衰えと共に本を読むのもだんだん苦痛になり、子どもの頃から好きだったボケ〜ッとしてる時間がますます多くなったような気がします。今宵は七夕。吟醸酒を飲みながら遠い彦星と織り姫に思いを馳せてゆったりとした時間を楽しむことにしましょう。乾杯!



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