第212号(2005.5.10)
美と健康と日本酒
 4月27日頃からちらほら咲き始めたサクラは、連日の好天気に一週間もしないうちに散り始めてしまいました。
  ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ
とは、『古今集』の中の紀友則の歌ですが、北国、新庄の春はさらにせわしく、まさに駆け足で通り過ぎていくといった感じです。
 先日『Osakeテラピーで健康になる本』滝澤行雄著を読みました。その中で日本酒の持つ驚くべき力が書かれていましたので抜粋して紹介します。

日本酒のアミノ酸パワー
 近年、日本酒の健康効果が注目される理由の一つは、日本酒のもつ豊富なアミノ酸にあります。
 アミノ酸はたんぱく質を構成する最小単位で、各人のDNAの遺伝子情報に基づいて結合し、その結果、骨、脳、内臓を始めとして、血液、神経伝達物質、髪の毛、爪などがつくられていきます。そのくらい重要な役割を担っているのがアミノ酸です。
 アミノ酸は自然界に約300種類存在しますが、たんぱく質を構成するアミノ酸はそのうちの20種類にすぎません。そのうち体内でつくることができず、あるいはきわめてつくりにくいために、体外から取り入れなければならないものがあります。それが必須アミノ酸で、動物の種類によっても多少異なりますが、人間の場合は9種類あります。イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジンです。なお必須アミノ酸以外のアミノ酸としては、アルギニン、シスチン、チロシン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリンがあります。
 日本酒にはこれらすべてのアミノ酸が含まれます。特に多いのがグルタミン酸とアラニンで、これらにアルギニンが続きます。グルタミン酸は免疫機能の維持や改善に有効なアミノ酸で、体力消耗時には感染を防ぐ働きがあります。アラニンは運動時に必要に応じてエネルギー源として利用され、免疫機能を高め、肝臓を守る働きがあります。アルギニンは免疫機能や生理機能に関与し、成長ホルモンの分泌を促進します。
 ところで最近、アミノ酸パワーという言葉が広まり、スポーツドリンクなどにも積極的に取り入れられています。アテネオリンピックでもアミノ酸ドリンクが話題になったことは記憶に新しいところです。
 実際、アミノ酸は驚くようなパワーを秘めていて、体力増進パワーもその一つです。疲労を解消し、体力を回復させてくれます。その働きを担っているのがアミノ酸の中のバリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニンです。筋肉疲労であれば疲労物質の乳酸の発生を抑え、脳疲労であれば、脳の働きを鈍くするアンモニアを排出する働きを高めてくれます。スポーツや仕事などで筋肉や脳を酷使したあとに日本酒で一杯というのは、疲労を取り除き体力を回復させる上でも大変意味のあることなのです。

肌の健康を保つ
 女性にとって一番気になることの一つが肌の老化ではないでしょうか。いつまでも若々しい肌でいたい、それは女性なら誰もが望む願いでしょう。
 皮膚は一番外側から表皮、真皮、皮下組織の順で成り立っています。人の目に触れるのは表皮ですが、実は肌の本体は真皮といえます。真皮の状態によって若々しい肌であるかどうかが決まるのです。
 真皮をつくっている中心成分はコラーゲンです。健康な肌とは、コラーゲンによってできた層に水分と油分が過不足なく保たれている状態です。水分や油分が不足すると乾燥肌となりシワや肌のトラブルを招きます。ですから、これらを補うことは非常に大切ですが、同時に重要なのがコラーゲンで、コラーゲンが常にいきわたっていることが健康な肌を保つための決め手となります。
 コラーゲンの主原料は肌再生アミノ酸といわれるプロリンとアルギニンです。これらのアミノ酸が体内に入ると、細胞マトリックスによって各細胞に運ばれ、そこでコラーゲンに変化します。そして細胞膜の外にあるコラーゲン層へと送られ、肌は再生されていきます。ところが問題は細胞マトリックスで、これは20歳を過ぎると機能が落ち始めます。そのためコラーゲンも思うように生成されなくなり、このことが肌の老化を促進します。
 そこで、肌の老化を防ぐには細胞マトリックスの働きを高めればいいということになりますが、実は細胞マトリックスの原料もまたプロリンとアルギニンなのです。そこでこれらのアミノ酸を積極的にとっていれば、細胞マトリックスの機能が高まり、コラーゲンの生成も活発になるというわけです。
 肌の健康を保つために日本酒をお勧めしたいのは、実は、日本酒にはこの肌再生アミノ酸のプロリンとアルギニンが含まれているからです。日本酒を飲むことによって、自然と肌の健康が保たれていきます。
 また、肌の老化でシワと共に心配されるのがシミでしょう。シミの原因にはいろいろありますが、主要因とされるのが紫外線です。肌の老化の80%は紫外線によると考えられています。紫外線にあたると皮膚の基底部にあるメラノサイトでメラニン色素がつくられます。これが有害な紫外線を吸収してDNAを守ります。メラニン色素はシミの元凶としてとかく悪者に見られがちですが、実は紫外線から肌を守る大事な役目もしているのです。
 メラニン色素は表皮まで押し上げられ最終的にはがれ落ちます。ところが過剰につくられたり、はがれ落ちなかったりした場合は表皮に残ることがあり、これがシミとなって現れるのです。
 メラニン色素はチロシナーゼ酵素によって生成され、さらにこの酵素が細胞内のL−チロシンというアミノ酸に働きかけてドーパクロムをつくりだします。メラニン色素の前駆物質がこのドーパクロムで、その働きを抑えればメラニン色素が必要以上につくりだされることはありません。その役目を果たす物質が日本酒には含まれています。アルブチン、遊離リノール酸などです。
 シミができないようにするにはまず紫外線を防ぐことです。次に、メラニン色素を必要以上につくりださないことです。日本酒はそれに有効なのです。


 以上、『Osakeテラピーで健康になる本』からの抜き書きですが、日本酒の力はすごいですね。その他にもストレスを解消したり、肝臓病を防いだり、がんの増殖を抑えたり、悪玉コレステロールを減らしたりなど、数々の効果が報告されています。
 日本酒はまさに素晴らしいアミノ酸飲料でもあったんですねぇ。乾杯!



……… 編 集 後 記 ………
○先日、村上龍氏の『半島を出よ』という日本の近未来を舞台にした長編小説を読みました。あまりの面白さについつい引き込まれ、上下巻合わせて約900ページを一気に読んでしまったのが悪かったのか、読み終えてから2〜3日経った今も、首筋から後頭部にかけての肩こりに苦しんでます。前回、長編小説を読んだのはいつだったか思い出せないほどに小説とは縁遠い生活のツケが回ってきたんでしょうね。吟醸酒を飲んで回復を図らねば・・・。
○5月4日、町内の仲間と花見をしてきました。もうすでに葉桜でしたが、酒があれば言うことなし。「宴(うたげ)」という言葉は「打ち上げ」が転じた言葉で「酒盛りをして手を打ち鳴らし、声を張り上げて歌う」という意味だとか。・・・まさに正しい花見の宴でした。エヘ。



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