第210号(2005.3.10)
昔ながらの手作りはすべて良い???
 3月に入ってからも日中の最高気温が0℃を下回る真冬日と雪が降り続き、4日現在で新庄の積雪はまだ153cmもあります。この冬、初雪から数えて一日を通して雪の降らなかった日が10日もあったかどうか・・・。
 毎日雪との戦いに疲れ果てている身としては、都心にたった2cm雪が積もっただけで、NHKテレビが朝のトップニュースで10分間もの時間を割いて大雪と大騒ぎしている様子には、腹立たしさを通り越して呆れかえってしまいました。・・・あああ、春が待ち遠しい。
 さてと、愚痴はこれくらいにして、本題に入りましょう。先日テレビを見ていたら、ある番組で「泡盛は昔ながらの素焼きの壷に入っているから、何十年も醗酵を続けます」ってなことをナレーションでシャアシャアと言ってました。???ですよね。蒸留酒である泡盛がどうして醗酵を続けることができるんでしょうか。
 最初、何をバカなことを言ってやがると思っていたのですが、よく考えてみると、ナレーターがこんな初歩的なまちがいに気づかなかったのには、昔ながらの手作りはすべて良いという無批判の考えがあって、そのために思考停止に陥ってしまったんじゃないかと思い直したのです。
 そこで今回の富田通信はこの「手作り」について考えてみたいと思います。

ほんとうに手作りはすべて良いのか
 まず最初に誤解の無いように断っておきますが、私は手作りを否定しているわけではありません。むしろ手作りは大好きです。ただ、手作りはすべて良いものという最近の風潮について少し立ち止まって考えてみようとしているだけです。
 そもそも手作りとはいったいどういう意味なんでしょう。辞書(大辞泉)によると「機械を使わないで、手で作ること。店で買わないで、自分の手で作ること。また、その物。手製。」とあります。他の辞書もだいたい同じような意味が載ってました。
 この辞書の定義をそのまま当てはめれば、私たちが大好きな吟醸酒は手作りでは絶対にできないことになります。なぜって、精米歩合60%以下の白米は縦型精米機という機械を使わなければできませんものね。
 手作りでできる日本酒は人力の足踏み精米でせいぜい数%精米しただけの原料米で造った酒だけになります。
 もし、手作りがすべて良いのだとしたら、吟醸酒よりも足踏み精米で造った酒の方が良いということになってしまいます。
 そんな馬鹿な話はないですよね。そんなことになったら良い酒、うまい酒を造ろうと必死になってきた先人の苦労はまったくの無駄ということになってしまいますものね。
 では、手作りのものは良いというときの手作りとは何なのでしょうか。敢えて独断と偏見で言わせてもらえば、手作りとは機械を使ったかどうかではなく、ほんとうに良いもの喜ばれるものを作りたいという作り手の妥協のない熱意や思想そのものを指すのではないでしょうか。
 最近の手作りブームで紹介されるものの中には、素晴らしいものもたくさんありますけど、同時にコマーシャルベースに乗って一儲けしてやろうというだけのいい加減なものもたくさんあります。
 手作りといううたい文句に惑わされることなく、本物を見抜く目を養いたいものですねぇ。・・・乾杯!



商  品  紹  介
出 羽 桜 『桜 花 吟 醸 酒 さらさらにごり』
 毎年、この季節に発売される「桜花吟醸酒さらさらにごり」。入荷してさっそく試飲してみました。いや〜、今年の酒もじつに素晴らしい出来でした。にごり酒には珍しくしっかりと吟醸香があって、口に入れると炭酸が舌の上で楽しそうに踊っています。さらに後口には炭酸の刺激とともに何とも魅力的で美味しい酸が爽やかに残り、思わずまた飲みたくなります。これだったら、味の濃い料理や油を使った料理にも合いそうです。
 本生にごり酒の品質管理上、少量入荷の限定品です。
  内容 麹米:美山錦 掛米:雪化粧 精米歩合:50%
     日本酒度:+5 酸度:1.2 アルコール度:16度〜17度
                     720ml 1550円
最 上 川 『純 米 大 吟 醸』
 杜氏見習いとして3年目の安食君が今年初めて酒造りでもっとも大切と言われる麹造りを任せられました。その彼が造った麹で仕込んだ記念すべき純米大吟醸です。
 初めてにしてはなかなかの出来だと思います。是非お試しの程を。
  内容 原料米:出羽燦々 精米歩合:40%
     日本酒度:+3 酸度:1.3 アルコール度:15度〜16度
                    1.8L 3500円
お 知 ら せ
山 形 県 新 酒 「歓 評 会」
 昨年に引き続き、山形県酒造組合は全国に先駆け、全国150蔵余りの蔵元からご協力を頂き、全国新酒鑑評会の前哨戦を行い、夜はそのお酒を囲みパーティを開催します。
 酒造組合に問い合わせたところ、もうすでに定員になってしまったそうですが、私も参加しますので、会場で見かけた方は声をかけてください。
 日時:平成17年3月23日(水)
 会場:ホテルメトロポリタン山形4階 霞城の間
 定員:500名
 会費:5000円



……… 編 集 後 記 ………
○書き出しでは余りの雪の多さにうんざりして、つい愚痴を書いてしまいましたが、3月も2週目に入りようやく屋根から雪解けの雨だれが落ちるようになりました。家の周りの空き地は雪で山のようになり、屋根の雪を下ろすことができなくなりました。このまま雪が降り続けばほんとうに屋根が雪の重さで落ちるかもしれないと思っていたところでしたので、心底ホッとしています。
雨だれの音がポタン、ポタンからタンタンタンタンに、さらにはザァァ〜に変わらないかなぁ・・・、なんてあるはずのないことを願ってしまいます。
○先月の12日、大山地区の酒祭りに行ってきました。毎年行って、栄光冨士さんでお手伝い(酒飲み?)をしているせいか、今年は知らない間に酒祭りのスタッフに組み入れられていて、聞き酒大会の会場係に名前が載っていました。しまった、酒が飲めなくなる! と思ったのですが、なんのことはない、参加者にきき酒のやり方を説明しながら、しっかりときき酒用の酒を飲んでました。大会が終わってから栄光冨士さんでも美味しいお酒を飲んだのは言うまでもありません。来年も行こうっと♪
○「名酒を楽しむ集い」に山形市のSさんが日本酒が大好きだという若くて綺麗なEさんを連れてきてくださいました。お話しを伺っている内に最初に飲んだお酒が吟醸酒だと分かりました。やはり、最初が肝心なんですね。



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