第209号(2005.2.10)
千日酒
 いやぁ、今年はすごい雪です。先月の11日と12日の二日間で1mも積もり、積雪が一気に150cmぐらいになりました。家が雪の重さで潰れちゃ大変ってんで、4日がかりで雪を下ろしました。しばらく小康状態が続いたのでやれやれと胸をなで下ろしていたのですが、今度は1月31日、2月1日、2日の三日間でまたもや1mの積雪がありました。
 また雪下ろしをしなければならないくらい屋根には雪が積もっているのですが、雪消し用の池に下ろした雪がまだかなり残っていて雪を下ろす場所がありません。こんな年は初めてです。池の雪が溶けるまで何とか大雪が降らなければいいのですが・・・。やっぱり異常気象なんでしょうか。それとも豪雪地・新庄にふさわしい、ものすご〜く正しい冬なんでしょうか。
 雪が降り始める頃から春までの間、雪に煩わされることなく熊のように冬眠できればいいんですがねぇ。
 というわけで、今回の富田通信は一口飲めば千日の間眠り続けるという千日酒について、坂倉又吉氏の『酒おもしろ語典』より書いてみましょう。

千日酒
 昔から、中国にはたいへんに大袈裟にいう癖があって、たとえば「万里の長城」。一里を四キロと計算しますと四万キロ。いくらなんでもそんなに長くはありません。あるいはまた「白髪三千丈」という言葉もあります。白髪がいくら見事だからといっても、三千丈といえば約一万メートル。話もここまで大きくなるともう法螺とは言えますまい。
 その中国、酒の話もさすがに白髪三千丈式の大きな話が多いのですが、その中の一つとして『太平広記』に「千日酒」というのがあります。
 中山に狭希という酒造りの名人があり、彼の造った酒は、一杯飲むと千日間も酔いがさめないから、千日酒といわれました。
 ある日、そのもとへ劉玄石という酒好きな男が訪れてきて、是非その千日酒を飲ませてくれと所望します。
 狭希は断りましたが、なおも強くせがむので、一杯飲んだら千日間も酔うから、すぐ帰って寝るように、と言って出してやりますと、玄石はうまそうに飲みほして、良い気持ちになり千鳥足で家に帰りましたが、はたして帰るや否や、倒れたまま深い眠りに落ち何日たっても起き上がりません。
 家人は、泣く泣く野辺の送りをすませ・・・そしていつしか三年の月日が過ぎました。
 さて、こちらは狭希、三年前に玄石に酒を飲ませてから、もう千日になる。そろそろ眠りから醒めるころだろうと、玄石の家を訪ねますと、
「主人は三年前に・・・」とのことに、それは大変、実はかようしかじかと、話もそこそこに狭希は、びっくり仰天する家人と手に手をとって墓地へとんで行きました。
 そしてお墓から玄石を掘り出したこのときが正に千日目だったのです。
 酔いからさめた玄石は、大きなあくびをして、
「ああ、ええ酒だった。さて、いまなん時かね」
と言ったといいますが、このとき玄石の吐いた息をかいだ家人たちは、その場にうち倒れ、酔いつぶれて三日間もさめなかったとはまことに恐れ入った大話です。

不老不死の酒
 大話ついでにもう一つ大法螺話を『酒おもしろ語典』より紹介しましょう。
 紀元前百年頃、中国に漢の武帝という王様がおりました。この王様が大切にもっておりましたのが「不老不死の酒」。
 これは、岳陽の酒香山という山で、仙人が醸った不思議なお酒です。ところがあるとき東方朔という男が、こっそり盗み飲んでしまいましたので、大いに怒った武帝は彼を誅しようとしました。
 さて、この東方朔という男は、また大そうな道士で、その桃一つ食えば三千年は生きるという、仙女の西王母が育てた桃を食べているので、すでに三千歳だが、いまなお若々しく三十歳位にしか見えません。
「打ち首じゃ!」と言われた東方朔、少しも慌てず、平然として、
「打ち首? それも結構。しかし私は不老不死の酒を飲んでおりますので、いまここで首を斬られても死ぬわけもなし、もし死んだらあの酒は不老不死の酒ではなかったことになりましょう」
と言いました。
 そこで武帝は考え込みました。斬って死んだら自分の恥。死なないものなら斬っても無駄。武帝は考え直して、その処分を取り消し釈放しました。
 それ以来、東方朔は行方不明ということになっていますが、何しろ不老不死ということからみても、いまでもどこかに生きていることでしょう。

 いやぁ〜、中国の話はでかくていいですね。積雪三千尺に乾杯!



『富 田 通 信  第 2 巻』 完 成 !
 第1巻が好評でしたので、調子に乗って、101号から200号までをまとめて第2巻を作りました。第1巻は出版社がまったくの儲けなしで、原材料費だけで作ってくださったのですが、今回はそうそう甘えるわけにはいきませんので、少々値段が高くなりました。
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        『富田通信 第2巻』 B5版 301頁   800円
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第17回「名酒を楽しむ集い」ご案内
 この冬は、雪の降り始めが遅く、暖冬予想にすっかり安心してましたが、しっかりと期待を裏切られて雪に遊ばれる日々を送っております。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 さて、第17回「名酒を楽しむ集い」を下記要領で開きます。今回は山田錦、雄町、亀の尾などの酒米を原料にした大吟醸を取りそろえて、つたや本店の素晴らしい懐石料理とともに楽しみたいと思っております。ぜひ、ご参加下さい。
 なお、定員になりしだい締め切らせて頂きますのでご了承下さい。
日時 平成17年2月19日(土)
       受付/午後6時  開宴/午後6時30分
会場 つたや本店
会費 10000円
定員 40名
主催 富田酒店
協賛 つたや本店
※参加申し込みは富田酒店までお願いします。



……… 編 集 後 記 ………
 2月12日、大山地区の酒祭りに行って、美味しいお酒を心ゆくまで楽しんできま〜す。



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