第199号(2004.04.10)
山形県新酒「歓評会」に参加して
 周囲の山々は、まだ白い冬のコートのままですが、平地は日陰部分にわずかばかりの雪が残るだけとなりました。裏庭の雪割草もピンクの蕾を大きくふくらませています。もうすぐ春ですね〜。
 さて、先月の23日に山形市のホテルメトロポリタン山形で、山形県新酒「歓評会」が開かれました。
 今回の富田通信はこのときの様子をお伝えします。

きき酒会
 今回の「歓評会」は午後4時からの出品酒の「きき酒会」と6時半からの立食パーティ形式の「歓評会」の2部構成となっていました。
 当日、吟醸酒研究機構の世話人頭である篠田次郎さんとご一緒する約束をしていましたので、お昼頃に山形市に着きました。
 3時半の待ち合わせまでの時間、出羽桜酒造山形工場にフラッと遊びに行きました。一通り蔵内を見学したあと、蔵人の休憩室で、杜氏さん始め、造りの方々とお茶をご馳走になりながら楽しい一時を過ごしました。
 4時に篠田さんといっしょに、きき酒会場に入り、空いている列からきき酒を始めました。出品酒は北は北海道、南は九州まで、あわせて154点。
 きき酒の方法はきき猪口(きき酒するときに使われる底に二重の藍色の蛇の目模様が描かれている大きめの白い茶碗)に直接口を付けるやり方ではなく、きき猪口に入った出品酒をスポイトで各自の小さなコップに取ってやる方法でした。
 スポイトで自分のコップに取り分けて、香りをかいで、口に含み、味を確かめて、吐器に出すを繰り返すわけですが、あまりの旨さに思わず飲み込んでしまいたい衝動を抑えるのに苦労しました。さすがに、5月に開かれる全国新酒鑑評会に向けて蔵人が一心不乱に造った大吟醸だけありますねぇ。

歓評会
 5時前にきき酒が終わり、6時半からの歓評会まで時間があったので、篠田さんと二人で軽く腹ごしらえにソバを食べました。
 6時頃に会場ロビーに着くとそこはすでに吟醸酒愛好家たちでごった返していました。見知った顔があちこちにいます。
 それに、今回は吟醸酒の権威といわれる方々が、おおぜい参加されていました。
 現在の吟醸酒ブームを作った篠田次郎さんを始め、元国税庁醸造試験所第4室長で泡なし酵母発見の功労者である熊谷知栄子さん、元国税庁醸造試験所第3室長で醸造学の権威である戸塚昭さん、日本酒に造詣の深い漫画家の高瀬斉さん、きき酒能力において高い評価を得ている酒類ジャーナリストの松崎晴雄さん、吟醸酒の素晴らしさをアメリカに広めているジョン・ゴントナーさん、出版業界からは「酒販流通」の小島さん、「フルネット」の中野さんなど、私が挨拶した方だけでも、これだけの方々が参加されていました。
 ひとつの会場にこれだけの方々が集まったのを私は見たことがありません。それだけ、一般のアマチュアに鑑評会出品酒を楽しんでもらうという山形県酒造組合の画期的な取り組みが高く評価され、また山形県の吟醸酒が日本全国はおろか、世界から注目されているという証でしょう。私の心は高ぶっていました。
 篠田次郎さんは「これで、新しい吟醸酒のふるさとは、御地、山形県に決まりました」とまで、言ってくださいました。
 広い会場に入ると壁際を先ほどきき酒した出品酒がぐるりと囲み、あちこちに配置された丸テーブルの周りには参加者が談笑しながらあふれかえっていました。
 篠田さんの「空いている前の方のテーブルに行こう」という声にしたがって最前列のテーブルに人をかき分けながらたどり着くと、運良く私の友だちが陣取っていて、そこにもぐり込むことができました。
 各テーブルには3〜4種類の出品酒と蔵元の仕込み水が置かれています。テーブルに着くと私は早速、自分のグラスと篠田さんのグラスに出品酒を注ぎました。篠田さんからは「オイオイ、乾杯はまだだろう?」っと、呆れられる始末です。
 乾杯の発声と同時に出品酒はスルリと腹に収まりました。それからはほんとうに桃源郷の世界です。友だちが料理コーナーから持ってきてくれたおいしい料理を味わい、また、吟醸酒の話に花を咲かせながら、テーブルに置かれた出品酒をゆっくりと味わう。自分のテーブルの出品酒を味わったら、それを持って隣のテーブルの別の出品酒と交換し、また味わう。全国の鑑評会出品酒の飲み比べという普段では味わえない至福の一時。
 8時半の東京行きの最終新幹線で帰るという篠田さんを会場で見送ったあと、蔵元の打ち上げにまで呼ばれ、さらに吟醸酒に酔いしれていました。
 このような素晴らしい吟醸酒を造ってくれた蔵人に乾杯!



商品紹介 
『やまがたの生酒』特別限定頒布会
 山形各地の蔵元の生酒頒布会です。本醸造、おり酒、純米酒、吟醸酒など、実にバラエティーに富んだ内容です。きりりと冷やしてお召し上がりください。
  会  費:毎回3150円(税込)
  申込締切:平成16年4月20日
  頒布期間:平成16年5月、6月、7月
  内  容(各300ml詰め)
   五月:寿虎屋酒造(山形市)     本醸造無ろか槽前原酒
      月山酒造(寒河江市)      純米吟醸生酒
      酒田酒造(酒田市)       純米吟醸生酒
      山栄遠藤酒造店(南陽市)   純米吟醸生酒
      最上川酒造(新庄市)      本醸造生酒
      加藤嘉八郎酒造(鶴岡市)   本醸造生酒
   六月:出羽桜酒造(天童市)      本生おり酒
      六歌仙(東根市)         吟醸生酒
      東北銘醸(酒田市)       吟醸生酒
      佐藤仁左衛門酒造(櫛引町) 吟醸生酒
      野沢酒造店(小国町)      吟醸生酒
      加茂川酒造(白鷹町)      吟醸生酒
   七月:米鶴酒造(高畠町)      大吟醸生酒
      秀鳳酒造場(山形市)     特別純米生酒
      樽平酒造(川西町)       純米吟醸生酒
      菊勇(酒田市)         吟醸生酒
      冨士酒造(鶴岡市)      吟醸生酒
      千代寿虎屋(寒河江市)   吟醸生酒

※発送の場合は送料がかかりますので、ご了承ください。
※未成年者の飲酒は法律で禁じられています。



……… 編 集 後 記 ………
○以前、首から上はどこかへ捨ててしまいたいと思うほど悩まされ続けてきた花粉症が、5〜6年ほど前から徐々に軽くなり、今年は症状がほとんど出なくなりました。本人は吟醸酒の功徳のおかげと信じているのですが、周りからは「単に飲み意地が張っているだけじゃないの」とか、「年のせいで感受性が鈍くなってきたからだ」とか言われております。
・・・何はともあれ乾杯!



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