第198号(2004.03.10)
江戸時代の飲食店
 今年は屋根の雪下ろしをしなくてもいいんじゃないかという思惑は、節分寒波とやらによって見事に打ち砕かれ、とうとう先月中頃に屋根に上る羽目になりました。下ろし終わったとたんに、暖かな日が続き、雪がどんどん解け・・・。世の中思うようにいかないものです。ハァ。
 3月に入り、春が一気にやってくると思ったら、一気に寒気がなだれ込んできてこの一週間あまり毎日のように雪、雪、雪。最高気温が連日0度付近をふらふらしています。こうなったら、いっそのこと、地球温暖化推進委員会でも作ってしまおうかと・・・。ああ、春が待ち遠しい。目の前にエサをぶら下げられてお預けを食らっている犬の気持ちがよくわかります。ワン!
 さてと、愚痴はこれくらいにして、本題に入りましょう。3月4月は歓送迎会などで飲食店に行く機会が多くなりますよね。そこで今回の富田通信は、現在の飲食店のルーツともいうべき江戸時代の飲食店について、加藤百一著『日本の酒5000年』をもとに書いてみましょう。

江戸の飲食店
 江戸後期の戯作家蜀山人が、江戸の飲食店は「五歩に一楼、十歩に一閣」あったと書いているように大変な繁盛ぶりでした。
 蜀山人は酒をことのほか愛したことでも有名です。彼はあるとき、何を思ったのか突然禁酒をしましたが、その禁酒が破れて再び飲みだしたときの狂歌に
  
我が禁酒 破れ衣と なりにけり さしてもらおう ついでもらおう
があります。
 ここでは、楼閣はさておいて、庶民が気軽に酒を飲んだ居酒屋、屋台店、すし屋、そば屋などをのぞいてみましょう。

居酒屋
 18世紀以降、江戸には煮売屋、今でいう総菜屋が現れ、そこがやがて空になった酒樽を土間にならべその上に板を渡して椅子にしたり、あるいは床机を置くなどして、酒も出すようになりました。居酒屋の誕生です。
 客はその長椅子に斜めに腰を下ろし、片足だけあぐらして総菜をつまみに酒を飲みました。
 『誹風柳多留』に、
  
片足を 仕廻って居酒 のんで居る
と詠われたこの江戸っ子の粋な姿は、ちょうど神社の随神門の像「矢大臣」に似ているところから、
  
居酒屋の 見世で呑んでる 矢大臣
など、川柳子の格好の題材になりました。また、このころは仲間におごるにも決してただではなく、
  
笑ふたる 方が振る舞う 矢大臣
だったそうです。

屋台店
 酒などを置く屋台店が発達したのは天明の大飢饉以降で、郷里を捨てた潰れ百姓など、江戸流入の貧民の中に屋台を引くものが多かったそうです。田楽と燗酒を商う屋台店は、江戸の冬の風物詩でした。

すし屋、そば屋
 江戸末期の風俗史『守貞漫稿』に、江戸では「鮓(すし)店毎町12戸、蕎麦屋12丁に1戸」とあり、すし屋、そば屋のいずれにも大抵は酒が置かれていました。江戸っ子が好んだすしのネタは江戸前のアジにコハダ、それに稲荷ずしともいわれた油揚ずしで、これに銚子1本つけるのが庶民のささやかな楽しみの1つでした。
 そばは新生そば、手打ちそば、あなごそば、鴨なんそば、白菊そば、更科そば、福寿そば、ざるそばなど、多くの看板が掲げられ、「かけ」とか「もり」など今と同じでした。そば屋には必ず酒がおいてあったことが、庶民には大きな魅力でした。

料理屋
 19世紀初めの化政時代、江戸で著名な料亭は深川の平清(ひらせい)、二軒茶屋、浮世小路の百川(ももかわ)、秋葉の大黒、浅草山谷の八百膳などでした。これらは、いずれも高級割烹料理店、酒は下り諸白(灘酒)の生一本、客筋は幕府の高級官僚に諸藩の江戸留守居役、彼らを取り巻く御用商人でした。

 いやァ、いまの飲食店とほぼ同じものが江戸時代にすでに出来ていたのですね。それに高級料亭が高級官僚の接待の場として使われていたのもいまと同じ・・・。でも、おいしい吟醸酒が居酒屋で飲めるようになった分だけ、いまの方が少し、いやずいぶんと幸せですね。乾杯!



商品紹介 
◎入荷しました『栄光冨士−春の10号−』
 先月入荷しました、袋吊り大吟醸生酒『春の10号』。飲んでみましたが、例年になく、香り高く、味に巾があり、非常にいい酒に仕上がっていました。
 数量限定ですので、お早めにお求め下さい。
   春の10号大吟醸生  720ml 4200円(税込)
   生産本数 500本
 ※当店、残り数量(3月10日現在):7本です。



お知らせ 
山形県新酒「歓評会」
 3月23日(火)、山形市のホテルメトロポリタン山形を会場に、全国の酒蔵の大吟醸出品酒が一堂に介す山形県新酒「歓評会」が行なわれます。
 参加する酒蔵は北は北海道、南は九州まで総勢100社以上です。主催は山形県酒造組合で、全国初の大吟醸出品酒飲み比べです。
 16:00〜18:15までの「きき酒会」とその後の「立食パーティー」がありますが、すでに「立食パーティー」の方は、定員になってしまいました。
 しかし、「きき酒会」の方は会費500円で、先着200名様ですので、興味のある方はぜひ早めに会場にお越し下さい。
 私ももちろん参加しますので、会場で見かけたら声を掛けてください。
  日時:3月23日(火) 16:00〜18:15まで
  会場:ホテルメトロポリタン山形
  会費:500円(当日会場にて) 但し、先着200名様で締め切り



……… 編 集 後 記 ………
○♪春は名のみの風の寒さや〜♪の歌の通り、今日の午前11時の新庄の気温はマイナス1.4度。それでも、降った雪は降った分だけ解けるようになりました。春を実感するのもそう遠くないですね。あぁ〜、早く釣りに行きたい!
○先月のとある日曜日、地元最上川酒造の若き杜氏見習いの安食君がひょっこり遊びに来ました。県の工業技術センターでの酒造り研修のことや実際の仕込みの様子、酒造りのアイデアなどを熱っぽく2時間ほど語っていきました。若いっていいですねぇ。こちらも嬉しくなります。意気込みに乾杯!



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