第196号(2004.1.10)
真と見掛けの精米歩合
 新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 今年の新庄は正月三が日、田んぼにも雪が全くないという異例の年明けを迎えました。12月の平均気温は平年より1.4度も高い3.4度で、これは観測史上2番目に高い気温だそうです。スキー場は当惑顔ですが、雪がないっていうのは楽でいいですね〜。
 できればこのまま春までと思っていたら、8日は朝から吹雪、積雪も20センチほどになりました。天気予報はこの先一週間すべて雪だるまマーク、やはりそんなに甘くないですね。
 さて、先々月号の富田通信『清酒の製法品質基準の一部改正について』の中で、「純米酒の定義の中から精米歩合の制限が廃止されたのですから、精米歩合の表示は当然のことですし、1%刻みで表示することにしたのは、真精米歩合と見掛け精米歩合の問題が残るにしても、大いに歓迎すべきことだと思います。」と書いたら、読者から真精米歩合と見掛け精米歩合ってなんだという質問を受けました。
 そこで、今回の富田通信はこの真精米歩合と見掛け精米歩合について書いてみましょう。

真と見掛けの精米歩合とは
 美味しいお酒を造るために玄米を削りますよね。これは米の表面に近い部分にはタンパク質や脂肪、無機質、ビタミンなどが多く含まれ、これらの成分がお酒の香味や色沢を損なうからです。
 精米歩合とは玄米と精米された白米の重量比で、以下の式で求めます。

  精米歩合%=白米 kg ÷ 玄米 kg × 100

 これが、お酒のラベルに表示してある精米歩合です。そして、この精米歩合のことを「見掛け精米歩合」といいます。
 でも、どうして見掛け精米歩合というのでしょうか。それは、玄米を精米するとき、すべての玄米が白米として残る訳じゃないからです。
 わかりやすく説明しましょう。玄米の中には、たとえそれが1等米であったとしても数パーセントの被害粒(発芽粒、病害粒、虫害粒、胴割粒などの損傷のある粒)や死米などが含まれています。それらの米は精米の工程の中で真っ先に砕けて糠になることが多いのです。さらに、正常な玄米であったとしても精米しているうちに砕けてしまうものもあります。
 先に書いた式で求められた精米歩合は、玄米と精米後の白米との重量比ですから、玄米が白米として残らなかった分の誤差が出ます。「見掛け精米歩合」といわれる所以です。
 では、本当の精米歩合を求めるにはどうすればいいのでしょうか。それには、玄米1000粒の重さと精米後の白米1000粒の重さの重量比を求めればいいのです。

  真精米歩合%=白米千粒重 g ÷ 玄米千粒重 g × 100

 の、式で求められます。これを「真精米歩合」といいます。
 そして、この真精米歩合から見掛け精米歩合を引いた数字が無効精米歩合といわれています。
 無効精米歩合は、原料米の良し悪し、精米技術の上手下手などによって、大きく左右されます。悪い原料米を使い、下手な精米技術で酒を造れば、たとえお酒のラベルに精米歩合50%、大吟醸酒などと書かれてあったとしても、実際の精米歩合は70%ということも有り得るのです。・・・エヘヘ、おどかしてすみません。
 「そんなこといったって、ラベルに表示されている精米歩合しか情報がないんだから、どうやって良い酒を選べばいいんだ」とお思いでしょうね。それには、お酒の大好きな、そしてお酒に詳しい信頼の置ける酒の小売店を見つけることです。そして、そこで勧められた何種類かのお酒を飲んで、良い酒の味を自分の五感で覚えてください。そうすれば、いつの日か必ず自分の力で良い酒を見つけることができるようになります。
 今年もまた、素晴らしい酒と素晴らしい人との出会いがありますように・・・乾杯!



……… 編 集 後 記 ………
○100号までをまとめて本にしたとき友人の山市君が@と入れてくれたお陰で「1巻だけじゃカッコつかないだろう、2巻も出さねば」ということになりました。いつ止めてもイイやという気楽な気持ちで書いてきた富田通信。200号まであと4回。プレッシャーがかかるなぁ・・・。



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