第190号(2003.07.10)
アルコールについて
 今年の6月はさんざんでした。配達先の玄関の階段で転んで左足首を折ってしまいました。転んだときボキッという嫌な音がしたのですが、何とか足は動くし、まぁ、相当ひどい捻挫だろうと思っていたのです。ところが痛みはひどくなる一方。仕方ないので整形外科へいったら、レントゲン写真を見た医者が一言、「折れてますね」。・・・即座にギブスと松葉杖の生活となりました。
 その姿を見て、知り合いはことごとく「釣りでやったのか?」と判で押したような言葉。転んだ瞬間、真っ先に思ったことが釣りに行けなくなるということでしたから、自業自得ですね。
 てなわけで、今回は、出歩くこともままならず、良い案も浮かばずで、平凡社刊の『噴飯 悪魔の辞典』より、アルコールについて抜き書きしてみました。この本は、各項目について安野光雅氏、なだいなだ氏、日高敏隆氏、別役実氏、横田順彌氏がそれぞれ見解を書いた、非常に機知に富んだものです。機会があればぜひ一読をお薦めします。

【アルコール】
現世界が不条理であることを、自ら不条理な存在となることによって堪え忍ぶべく発明された、極めて素朴な飲料である。適量には個人差があり、従って度を過すと、その存在の不条理が世界の不条理を越えてしまう場合がある。この場合は、世界の方がその不条理の度を増すことによって、平衡を保とうとする。「おい、もう一本つけてくれ」「俺にも、もう一本」。(別役実)

これを飲まないと、まるで人間ではないかのように珍しがられる液体。女、ギャンブルとならぶ、効果満点の家庭崩壊剤としても、よく知られている。(横田順彌)

錬金術時代には、賢者は腐った穀物や果実の中から揮発性の薬液を検出してアルコールと名づけた。消毒効果があるため、人々はこれを良薬と信じ、それが“毒をもって毒を制し”ていたのであることに気がつかなかった。
 この毒液は水に混じり、誘惑の芳香を放つ。これを酒という。酒は精神の麻睡をもたらし、美女を幻出させるために、不美人の妻を持つ男は争ってこの毒に酔った。
 ブドウを野に満たせた賢者は、バッカスという酒神をでっち上げて酒が百薬の長だと宣伝した。アルコールがなくては一日も送れぬ人間の増えるのを見てとるや、賢者は皇帝に酒税の特設を進言してその寵愛を得、酒が人の心をむしばむ頃を見計らって、更に禁酒法を提言した。このためギャングの跳梁する不法時代が出現したのは歴史に見る通りである。
 ここにいう賢者が、悪魔の仮の姿であったことは、いうまでもあるまい。(安野光雅)

最近、アルコールが燃えるものであることを忘れた人間が、ふえつつある。
 アルコールは、燃える気体という意味で、これをのむと食道はジューッと音をたてて焦げ、胃の中は焼けただれ、そこから立ちのぼる煙が脳にのぼって、煙探知機に働いて、消防署が呼び出される(なんか、おかしい)。ともかく、消防署は、あまり頻繁に呼び出され、水をかけさせられるので、アルコールを飲む前に水で割るよう行政指導した。水割はかくして誕生した。その日から、アルコールが気体を意味することを知るものは、大学出の中にも稀になった。日本では、アルコールは液体だと思われている。しかし、液体部分は水なのであり、アルコールは、その中にとけた青白い焔なのである。(なだいなだ)

ぼくのもっとも嫌いな飲みもの。おおかたの男性にとっても同じだと思う。(日高敏隆)

アハハ、私も大嫌いで〜す。ああ、饅頭が怖い。オチャケお代わり!!



 
商 品 紹 介
出羽桜『純米吟醸・吟醸セット』
 出羽桜を代表する吟醸酒「桜花吟醸酒」と原材料のすべてが山形県産の純米吟醸「出羽燦々誕生記念酒」のセットです。
 すっきりとした味わいの桜花吟醸酒、そして巾のある味わいの出羽燦々誕生記念酒、・・・比べ飲みの楽しさが広がります。
         720ml×2本  2800円(税別)

出羽桜『吟醸・一耕セット』
 このセットのために特別に詰めた吟醸酒と、軽い味わいながら口中で豊かに広がる香味で好評の純米酒・一耕の詰め合わせです。
 吟醸酒は冷やして、一耕は冷や又はぬる燗でお召し上がり下さい。
         720ml×2本  3107円(税別)

栄光冨士・純米吟醸『加茂屋専之助』
 鶴岡市大山地区にある栄光冨士さんから、創始者の名前を冠した純米吟醸が発売されました。
 蔵元の話によると、夏から秋にかけて香味バランスを増す山形酵母と山形県産酒造好適米美山錦が出会ったときにどんな味わいを見せてくれるのかという興味だけで試験醸造した酒だそうです。
 とはいえ、創始者の名を冠するくらいですから、相当の自信作だと思います。ぜひ、お試しください。
  原料米:山形県産美山錦  精米歩合:50%  度数:15.5%
  日本酒度:+3  酸度:1.2  使用酵母:山形酵母
                  1.8L  3300円(税別)
                 720ml  1600円(税別)

初孫『海と空と白い鳥セット』
「白鳥(しらとり)はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」
 まるで若山牧水の歌のようなセットですが、もちろん歌にあるような孤独感や悲壮感とは無縁です。北国の夏の日本海のようなクリアーで吟醸味漂う、特別本醸造のセットです。
         720ml×2本  2500円(税別)
 



……… 編 集 後 記 ………
○富田通信100号までの本の出版が少し遅れています。友人の山市君が専務をしている会社で作ってくれているんですが、校正、版組などの人件費すべて無料、紙代などの原価のみで応援してくれているんですから、急がしたら罰が当たります。予約を頂いている方には出来次第お送りいたしますのでもう少しお待ちください。
○ギブスと松葉杖の生活を始めて一ヶ月あまり。幸いにも単純骨折だったため手術も入院もなく、ギブスを巻いて固定しただけで済んだんですが、松葉杖の生活は予想以上に不自由ですね。松葉杖で両手をふさがれるため物を持って歩くことができない。当然釣り竿も持てない。さてと、ギブスがとれたらリハビリもかねて釣りに行くぞ〜! ・・・エヘヘ。



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