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商品は誰のものか 11月、新庄の平均気温はなんと3.1℃。観測が始まって以来の低い気温だったそうです。おまけにこの一ヶ月の日照時間の合計はたったの24時間あまり。「美白肌を目指す貴女、新庄に移り住みませんか」なぁ〜んてアホなキャッチコピーでも言っていなければやってられませんねえ・・・まったく! アホといえば、11月24日付けの『酒販ニュース』に「漂流する清酒有名銘柄・商品は誰のものか」と題して「限定流通」についての記事が載っていました。今回の富田通信はこのことについて書いてみたいと思います。 商品は誰のものか まず最初に『酒販ニュース』の記事の一部を紹介しましょう。 『<久保田><越乃寒梅><雪中梅><〆張鶴><八海山>・・・。清酒のいわゆる「有名銘柄」と呼ばれるこれらは、特約・正規酒販店との直接・限定ルートの流通や製造石数自体が少なかったことから、希少性が商品価値ともなり、一定の地歩を築いてきた。だが、正規取扱店以外での「堂々たる販売」が広がり、基本である「限定流通」は有名無実と化している。非正規店にもあふれる商品、比例して「相場」は下落が続く。小売店と蔵元に何が起きているのか。「漂流」の実相を追う。 11月7日、東京・如水会館に、<久保田>正規取扱店で組織する東京久保田会の面々が集まった。テーマは「久保田特約店としての使命」。案内文書はいきなりこう切り出していた。「限定流通で始まった久保田。でも一般消費者から見ればどこにでもある商品となりつつある・・・東京においても正規取扱店よりもニセ取扱店のほうが圧倒的に多い。価格は下落の一途」。危機感はあらわだ。 酒販店と朝日酒造・関東支店がテーブルを囲み、議論が始まった。蔵元側との従来の会合では寡黙だった各店から次々と声があがる。「新規の料飲店から『<久保田>はもう差別化にならない。メニューには載せない』といわれるケースが増えている」「今年は何度も仕入れを蔵元にキャンセルした(ほど動きが良くない)」「ディスカウンター店の価格がどんどん建値に近づいている」。朝日酒造に対する率直な意見も相次いだ。「需給バランスが崩れている。いま、どれだけの量を造ればいいのか、蔵は実態がわかっていないのではないか」「商品そのものの評価ではなく、マーケティングのうまさだけで売れてきたのではないか」「年間数量契約はもうやめたらどうか。売りたい時に入らず、余っているときにも商品が来てしまう」』・・・以下省略 以上が清酒業界で最も有名な「久保田会」の現状です。各店は年間仕入れ数量契約があるため、売れなければ在庫が増える。処理しきれない在庫をディスカウンターなどに横流しをする。非正規取扱店が増える。で、ますます酒が売れなくなる・・・まるで、いまの日本経済のようですね。デフレスパイラル。 しかし、考えてみると、おかしな話ですよね、この地域ではあなたの店だけにしか売らせないから、年間これこれの量を売ってくれというのは。確かに小売店にとっては他店との差別化になるし、蔵元にとっては確実に酒がさばけるのですが、でもここには肝心要のお客様がいない。蔵元と小売店の利益の話だけなのです。 いったいお客様にとって、そこの店でしか買えないということにどれほどのメリットがあるのでしょうか。確かに酒の中身よりも希少性に価値を求めているごく少数のいわゆるマニアといわれている人には価値があるでしょうけど。 吟醸酒は、品評会・鑑評会の長い歴史の中で品質競争によって生まれた酒です。それを飲んだ人々はそのうまさと、それを造る蔵人たちの情熱と誇りに感動し、その感動を他の人にも伝えようとしてきました。 当然、私もその感動を伝えたいがために吟醸酒を売っているのです。感動が先にあるのです。商売が先じゃありません。確かに当店でも他ではなかなか手に入らない酒も扱っています。でもそれは、結果的にそうなったんであって初めから計画したことは一度もありません。その酒がうまいから扱っているのです。決して他店に無いからじゃありません。 うちで扱っていない酒をお客様が指名なされたときは、その蔵元に電話をして扱っている店をお客様に教えています。商品はお客様のものですものねぇ。 吟醸酒を愛する皆さん。明るく、楽しく、吟醸酒を守り育てていきましょう。・・・乾杯! 吟醸新酒の日 一昨年から言い始めているのですが、旧暦11月の中の卯の日、今年は12月25日になりますが、この日を「吟醸新酒の日」にしませんか。 この旧暦11月中の卯の日というのは、天皇制が始まる以前から我々の祖先がその年の収穫を神に感謝し、その年に穫れた穀物で酒を造り、神に供えた日です。ご賛同いただける方は、この日に吟醸酒の新酒で乾杯をお願いします。日本の素晴らしい文化を世界に広めましょう! |
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