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テキーラの伝説 今年の梅雨は実に梅雨らしい梅雨で、連日のようにしとしとと雨が降るともなく降っています。美人のたとえ言葉でもあるアヤメやカキツバタほど、雨が似合う花はありませんね。裏庭に咲くアヤメを見ていてつくづくそう思います。そういえば、美徳の一つとされる「しとやかさ」もその語感からして梅雨時のしっとりとした気候風土が生んだものかもしれません。 とはいっても、こう毎日ジメジメ、ムシムシが続くとさすがにカラッとした暑さの夏が待ち遠しくなりますねぇ。そこで、今回の富田通信はカラッとした夏に似合う酒としてテキーラの話を小泉武夫著「酒の話」講談社現代新書よりご紹介いたしましょう。 テキーラの伝説 植物系の珍酒・奇酒を紹介しよう。植物系原料の酒といっても、穀類やぶどう、リンゴ、チェリーのような果物を原料とした酒は一般的で珍しくはない。したがってその原料はおのずと花、茎、根、樹皮、葉、樹液、特殊な果物や木の実などに限られてくる。その上、発酵させるためにはそこに発酵されるべき糖類が不可欠となるから、なんらかの形で糖を含んだ原料に限られる。ところが自然界には、そう簡単に発酵性糖類を含有する原料はないから、そのような原料の酒は珍酒となりうるのである。 あまりにも有名なため珍酒・奇酒にはほど遠い感のある南国メキシコの名酒テキーラ(Tequila)は、蘭の樹液や基部(株)を原料とする。原料に使用される蘭は竜舌蘭(りゅうぜつらん。日本でも四国、九州、伊豆などの黒潮海岸に植えられていて、1.5メートルほどの肉厚でトゲのあるユリ科の多肉植物)で、メキシコではこの蘭をアガベと称している。酒に使われるアガベには、アガベ・アメリカーナ、アガベ・アトロビレンス、アガベ・テキラーナの三種があって、このうちアメリカーナとアトロビレンスは、その樹液を発酵させて、そのまま「プルケ」と称して飲まれたり、それを蒸留して「メスカル」と称して飲まれる。 一般にいうテキーラはアガベ・テキラーナを原料とする酒である。まず蘭の葉を切り取ってその基部を室の中に置いておくと、その芯部には、植物腐朽菌や高温細菌、不完全菌、糸状菌などが繁殖し、3〜4日目にはセ氏60〜70度もの高温を発するようになる。これらの微生物の出した酵素、主として澱粉分解酵素(アミラーゼ)や繊維素分解酵素(セルラーゼ)の働きにより、基部の多糖類(澱粉が主体で繊維素も多い)は分解されて、発酵性のぶどう糖になる。これをしぼって汁液をとり、自然発酵させてから簡単な蒸留器で蒸留し、幾度か再留をくり返してアルコールを55度まで高め、樫の樽に詰めて2年以上熟成させると、あの火のような情熱の酒が誕生する。 この酒はメキシコの国民酒でもあり、古くは「パルク」とも呼ばれたものだが、多くの伝説をもつ酒でもある。 今からおよそ一千年も前のこと、通行人が竜舌蘭の幹をかじっているハツカネズミをみつけた。そのネズミを追っていくと、巣の孔の中に不思議に光る黄金色の液体が貯えられていて、これをなめてみたところ、はなはだ甘く美味であったので、その液をあちこちのハツカネズミの孔から集めてきて発酵させた。その酒は誠にうまかった。そこでこの酒を王に献上したところ、これを飲んだ王はことのほか喜んで、この酒を人の手で造るように命じた・・・。この酒のはじまりにはこのような伝説も残っている。 メキシコの人たちは、この酒に次のような歌をつくった。 Know you not that Pulque Is a liquor divine And that angels in heaven prefer it to wine ? 主は知らぬかパルクの酒は、神がこの世に賜いしぞ 天に住んでる天使までワインきらいてパルク飲む なお、アジアにもこのテキーラに似た酒としてシュロ酒というのがあったが、今ではほとんどみることができない。 いや〜、日本にはサル酒なるものがあったらしいのですが、テキーラの始まりはネズミ酒だったんですね。サルとかネズミとかなにやら干支みたいですね。ということは、ウシが造った酒もあるのでしょうかね。草を噛み、飲み込んで、もどし、また噛みなおして、長〜く尾を引く光り輝くよだれを仕込み・・・、アハハ、想像はこの辺で止めましょう。 それにしても、先人の酒を造る情熱というか、執念はたいしたものですね。蘭の幹まで酒にしてしまうんですから。ほんとにものすごい発明です。 世界中の酒造関係者、酒愛好家が出資してノーメル財団を作り、毎年、優れた酒を発明した人にノーメル賞を差し上げるなんてのがあれば、楽しくなりますね。・・・乾杯! |
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○先月中頃、テレビで酒田沖の海水温が例年に比べて高いという情報を得、6月18日、矢も楯もたまらず酒田に釣りに行ってきました。イガイを針につけヘチ釣り開始。クロダイを求めてさんざん堤防を探り歩いたのですが、いっこうに当たり無し。やっぱりまだ早いかとあきらめかけたころ、かすかな当たり。すかさず合わせると、重量感のある力強い引き・・・。今年最初のクロダイは47.5cmでした。天気が回復したら、また釣りに行こうっと! |
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