第176号(2002.05.10)
おしきせ
 今年に入ってからの気温の高い状態は4月中も続き、いま新庄はボケ、山吹、藤、サツキ、スズランなどなど、いろんな花々が一斉に咲き誇り、妖しいまでの彩りに包まれています。
 そんな中にあって、まだしっくりこない会社の制服を着て少し緊張した面もちでいる新入社員は、どこか頼りなげながらも生命力にあふれ見る者の心を洗ってくれる若葉にも似て、なかなか良いものですね。
 ところで、この制服、昔ながらにいえば「おしきせ」ということになるのでしょうか。おしきせを広辞苑で調べると「1.主人から奉公人に季節に応じて着物を与えること。また、その着物。 2.転じて、自分の意志とは関係なく一方的に与えられた事柄」とあります。
 ところが、この「おしきせ」、酒にも使われるんですね。この前、坂倉又吉著の「酒おもしろ語典」を読んでいたら、おもしろいことが載っていました。
 そこで、今回の富田通信はこのおしきせについて「酒おもしろ語典」より紹介いたしましょう。

おしきせ
 「お疲れだったでしょう。今日はオシキセを二本つけてあげましょうね」などと、奥さんにつけてもらう晩酌のことを、関東ではおしきせといいます。
 もともとオシキセとは「お仕着せ」で、盆正月などに奉公人に支給する衣服のことなのですが、酒のおしきせとは、いわばごほうびにもらう酒ということになります。
 そこでふっと思い浮かぶことは、鵜匠と鵜の関係です。鵜飼の鵜は、鵜匠にあやつられながらせっせと魚をとり、それを鵜匠の前にはき出します。そして漁が終わったとき、はじめてごほうびとして鵜匠から魚を食べさせてもらうわけです。さて、この場合どちらが鵜匠で、どちらが鵜なんでしょう?
 たしかに晩酌には一日の仕事の疲れをいやすという意味がありますが、それが女房からであろうと主人からであろうと、労働する者が慰労に飲まされる酒ということになれば、おしきせというのも一理はあるわけです。
 それに勘ぐってみれば、もともと酒は一人で飲むべきものではないとされていた(昔の日本では、酒は一人で飲むべきものではなかったようです。「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり 牧水」のような一人で酒を味わったと思われる歌は近年になってからのものよりないようです)ことは、言い換えれば飲みたいと思えば人を誘うということになり、それは主婦たる者の歓迎することではありません。そこでいっそ主婦のなさけのオシキセをつけてやった方がかえって・・・という打算が女の方にあったかなかったかはとにかく、オシキセによって酒の飲み方の伝統に変化を来たしたようです。
 つい近年までは、大阪のしにせ等の古風な家では出入の者などに、一杯飲んで行くがいいと言って、台所の端に腰を掛けさせ、年寄りのお出入がお辞儀をしいしい一人で飲んでいるということがありましたが、主家には常にそんなための酒があって、ご新造が家人や出入を手なづける武器? として用い、寒かったろうに一杯引っ掛けて行くがよいなどと、特別に骨を折った者をいたわって出したものです。もちろん、対等の客人にはこんな失礼なふるまいはできないのですが、それでも当時は、独りで一杯酒を傾けられるということは、主人持ちの特権と結構感謝をしていたものだとのことです。
 また主人からもらう酒の内で、特に「見参」(ゲンゾウまたはゲンゾという)またはお見参(おげんぞう)というのがあって、これは主従の契りとか、古い奉公人の旧主訪問のとき主人からもらう酒のことなのですが、その飲み方は狂言の中でも下人が一人飲むだけで主人との献酬はありません。

 ま、最近は女の人も仕事を持っている人が多数を占めるようになってきたし、鵜匠と鵜の関係もだいぶ解消されてきたんじゃないでしょうか。もっとも、いまだかつて会社の制服など一度も着たことのない私としては、酒は飲みたいときに飲みたいものを飲むのが一番と思っておりますです、はい。・・・乾杯!



 
山形の吟醸酒を楽しむ会
 ついに、ついに、長年待ちこがれた「山形の吟醸酒を楽しむ会」がこの新庄で開催されることになりました。
 この会は、山形県酒造組合の中の山形吟醸酒推進協議会が開いているもので、毎年11月に山形市で、6月には庄内地区と置賜地区で交互に開かれていたのですが、なぜか最上地区での開催はありませんでした。
 長年にわたって要望を出してきたのですが、今年やっとその念願が叶うことになりました。さらに嬉しいことに、6月のこの会は全国新酒鑑評会で金賞を受賞した山形県内の吟醸酒をきき酒することができます。滅多にない機会です。皆さま、ぜひふるってご参加下さい。
 なお、定員が先着150名となっておりますので、どうぞ早めにお申し込み下さい。
「山形の吟醸酒を楽しむ会」開催要項
 日 時:平成14年6月21日(金) 午後6時30分〜
 場 所:大地会館(新庄駅前)
 参加料:お一人様5000円(参加者150名限定)
     申し込みはFAXまたはEメールで複数の申し込み可能です。
     (参加者より抽選の上、「大吟醸」プレゼント)
 申込先:「山形の吟醸酒を楽しむ会(新庄会場)係」
     FAX 023−631−0903
     E-mail  infosake@yamagata-sake.or.jp
     URL http://www.yamagata-sake.or.jp
 ●お申し込み方法
  住所、氏名、同行者の人数、年齢、性別、職業、郵便番号、電話番号を明記し、平成14年6月3日(月)までFAXまたはEメールでご応募下さい。
 ●先着150名様に郵便振替用紙をお送りいたしますので、参加料5000円を平成14年6月11日(火)までご送金下さい。入場券(全席指定)を発送いたします。
 ●この会についてのお問い合わせは「山形県酒造組合」まで
  990-0041 山形県山形市緑町1−7−46
  TEL 023−641−4050
 



……… 編 集 後 記 ………
○4月末、町内の気の合う仲間と連れだって、最上公園にカド焼きに行って来ました。カド焼きといっても家々の門口に火をつけてまわるわけじゃありませんよ。カドとはニシンのことで、新庄では生のニシンをカド、干したニシンのことはニシンと使い分けます。ちなみにカドとはニシンの昔の呼び名で「数の子」はカドの子から転じた言葉です。春になると満開の桜の下でカドを焼いてそれを肴に長くて辛い冬から解放された喜びを味わうのです。
 ワイワイガヤガヤと長屋の花見よろしくすっかり八つぁん、熊さん、の世界に入り浸って、朝の10時過ぎから晩の8時過ぎまで飲んでいました。お陰様で翌朝には飲んでいた時の記憶とともに冬の記憶もすっかりと洗い清められておりました。さすがにカド焼きの霊験はたいしたものですね。・・・エヘヘ



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