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吟醸酒の行方 桜が散り、ゴールデンウィークも過ぎた先日、久々の雨に誘われて、最上川沿いをドライブしてきました。優しさと息をのむような鮮やかさとを合わせ持った新緑が雨のせいでしっとりとした質感を増し、身体の中まで染み入ってくるようでした。いつものことながら、季節のエネルギーに圧倒されます。 さて、5月といえば、全国新酒鑑評会ですね。今年は主催者が国税庁醸造研究所から独立行政法人酒類総合研究所と名前を変えて開催されます。 で、この前、そこのホームページを見ていたら、今年の鑑評会開催要領が載っていました。その中に、吟醸酒の出品区分として、第T部と第U部というのがありました。第T部は原料米として山田錦以外の品種を単独または併用、あるいは山田錦の使用割合が原料米の50%以下で製造した吟醸酒、第U部は原料米として山田錦を単独、または山田錦の使用割合が50%を超えて製造した吟醸酒だそうです。 つまり簡単に言うと、今年の鑑評会から、原料米に山田錦を主体に使った吟醸酒とそれ以外の原料米を使った吟醸酒とを分けて審査し、出品する側はどちらか一方にのみ出品できるというものです。 これを見たとき、私は「へぇ〜、今年からそうなったんだ」ぐらいしか思いませんでした。何でそうなったかについて考えもしませんでした。 ところが、篠田次郎さんから送られてきた「幻の日本酒を飲む会ニュース」を読んで愕然としました。そこには私の思いもしなかったことが書いてあったのです。以下に抜粋して書いてみます。 『昨今は鑑評会出品酒はほとんどが山田錦を使用していると見ていい。ではなぜ、鑑評会出品酒のほとんどが山田錦使用というのが現実なのに、主催者は山田錦の部とその他の部に分けたのであろうか。これを解くには「風が吹いて桶屋が儲かる」ような因果関係を説明しなければならない。 酒造業界の団体が原料米の高騰を防げといっている。酒造米の多くは、「その他米」といわれる工業向けの特別安価な米を使っている。これはいわば政府が税金を注ぎ込んで値引きした米であって、それを安くしろといっても無理な話。 業界団体の真の狙いは山田錦が高いからというのだ。そしてその原因は鑑評会にあるという。鑑評会主催者はその圧力に答えて、山田錦以外の部もつくり、そちらにも金賞を大盤振る舞いしようというのか、新しい案を発表した。 今年の動向はどうなるのだろうか。従来通り山田錦産酒に集中するのか、他種米に挑戦するものが多いのか。その結果、山田錦は安くなるのか? 風吹けば…の最初のところに戻って考えてみよう。山田錦は酒米として優れた特性を持っていることは事実としよう。金賞を取るのに適していることも認めよう。 出品酒仕込み1本には玄米30俵が必要だ。1000社(鑑評会出品は800社台)の蔵が山田錦を30俵ずつ買えば3万俵。山田錦の生産量は15年前のデータで主産地H県で30万俵であった。今は増産され他県でも作られているから50万俵ぐらいあるか。果たして鑑評会用需要が値をつり上げたのだろうか。また吟醸酒の全生産量は約30万石、これに玄米100万俵が必要だから、山田錦だけではまかなえるはずはない。いろんな品種で作られ挑戦されているのはご承知の通り。 何が何でも金賞を欲しい者、高い原料米を使っても酒が売れる自信のある者は山田錦を手に入れるだろう。だが、現実はそんなに単純ではなく、金賞を取っても売れない蔵もあるし、われわれは一升5千円以上の吟醸酒には手が届かないといい続けている。 局所的に、特別地区の山田錦を標榜してバカ高い吟醸酒を演出しているタヌキもいる。団体はそのような扇動者のカラクリを暴けばいいのだが。一方では山田錦を山積みして誇っていた酒蔵が生産縮小した事実もある。 風が吹いてその跡を辿ると、鑑評会が山田錦の値上がりの犯人だとはいえないのだ。 もう一度いう。採算を度外視しても山田錦で金賞を取りたい者、その酒が売れる自信がある者、マッチポンプを画策する者はどんな高値でも買う。それが自由経済というものなのだ。 重ねて聞く。酒の売価の決め方は公明正大か。思惑はこもっていないか? 値上がりの犯人を研究所に押しつけ、角を矯めて牛を殺すことにならなければいいのだが。』 ・・・、なんといったらいいんでしょうかね。わが日本酒業界は本気で山田錦が高いのは鑑評会のせいだと思っているんでしょうかね。第一、本当に山田錦は高いんですか? 吟醸酒は蔵人の誇りではなかったんですか? だからこそ、原材料にも最高のものを使って、最高の酒を目指したんではなかったんですか? だからこそ、飲み手にあなた方の熱意や誇りが伝わったんではなかったんですか? ・・・春だというのに、なんだかやり切れません。 |
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○編集後記に何を書こうかとあれこれ思い悩んでいるうちに、ふと、タラノメが食べたくなって、30分ほど河原に採りに行ってきました。時期がちょっと遅かったのか、もう大半採られていましたが、それでも摘み残しを集め、どうにか今晩のおかずぐらいは採れました。さてと、薄く衣をつけた天ぷらを思い描きつつ、もう一踏ん張りといきましょう! |
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