第161号(2001.02.10)
地酒と地の酒
 雪、雪、雪・・・、12月末から降り始めた雪は止むことを忘れてしまったかのように一カ月近くも降り続けました。朝、長靴が埋まってしまうほどに積もった雪を来る日も来る日も掃き続け、疲れても疲れても掃き続け、たまに10センチほどしか積もっていない日は、ああ今日は楽な日だと喜ぶ、そんな1月でした。
 こんなことを書いても雪のほとんど降らない地方に住む人たちには、なかなか実感がわかないでしょうね。雪に五カ月近くも閉じこめられている地方と、雪のない地方。・・・風土の違いはそこに暮らす人々の価値観や感覚や人生観に大きな影響を与えているんでしょうね。きっと。
 でも、もしそうなら、風土の違いによって味の好みも変わるはずですから酒の味も土地土地によって違うはずですよね。今回の富田通信はそこらへんのことについて書いてみましょう。

地酒

 いま、私たちが何気なく呼んでいる地酒とはいったい何なんでしょうね。そもそも、地酒という言葉が広く使われだしたのは、昭和40年代終わりから50年代初めにかけてのことで、灘、伏見の全国に流通している酒、いわゆるナショナルブランドに対抗する、地方の素晴らしい酒という意味です。
 当時、経済的に豊かになった日本は、特に東京などの大都市において人々の食生活での塩分摂取量が減っていきました。結果として食べ物の味が薄味になり、甘くてベタベタのナショナルブランドの酒は食べ物に合わなくなり飲まれなくなっていきました。
 一方、宣伝するための資金を持たない地方の小さな酒蔵は、金賞を取ればマスコミに名前が発表されることもあって、酒の鑑評会で金賞を取ろうと必死になって技術の向上に励んでいました。
 その酒は、甘くてベタベタとはまるで違う、香り高いすっきりとした酒でした。その酒に魅了された一部のアマチュアや酒販店、料飲店はその酒を広め、人々の嗜好に合ったこともあって地酒ブームが起こったのです。
 地酒は鑑評会という競いの場から生まれました。ですから地酒というとき、それは単なる地方の酒という意味ではないのです。そこには全国屈指の味を持つという但し書きがあるのです。
 地酒は鑑評会の中から生まれたということは、別の言い方をすれば地方色を失ったということでもあります。東北の地酒は九州で飲んでも美味いですし、また九州の地酒を東北で飲んでも美味いですよね。つまり、美味しい酒の共通語的なものが地酒と言えるかもしれません。

地の酒
 旅先で分けていただいた美味しい漬け物を家に帰ってから食べたらそんなんでもなかった・・・などという経験をしたことがありませんか。
 それは多分、その漬け物が旅先の気候風土や人々の中にあってこそ本来の味を出していたからなんでしょう。
 それと同じようなことが酒の世界にもいえるのではないでしょうか。その土地土地の郷土料理と人情の中においてこそ、びっくりするくらい美味い酒。・・・そういう酒のことを地の酒と呼びたいと思います。
 昨今、全国チェーンのスーパーやコンビニが津々浦々に進出し、食べ物の味が低レベルで平均化してしまい、土地の料理をあえて郷土料理などといわなければならなくなってしまいましたが、いくらスーパーやコンビニでも、気候風土まで平均化してしまうことはできません。
 必ず、その土地で食べてこそうまい料理、美味い酒があるはずです。それを見つけそれを育てていくのがほんとうの意味の文化なのでしょう。スーパーやコンビニの食べ物しか知らない中身のない文明人は、もうそろそろいいんじゃありませんか。
 「やはり野におけ蓮華草」という言葉がありますが、美しいレンゲ草のような料理や酒、そして人があちこちに点在する、そうなることを夢見て。乾杯!



商品紹介 
最上川・純米吟醸生「北国浪漫」
 去年の秋から品切れしておりました最上川酒造のDEWA33、純米吟醸生酒「北国浪漫」が入荷しました。やさしくて巾のある味わいをお試し下さい。
                       720ml  1455円(税別)



お知らせ 
第13回「名酒を楽しむ集い」ご案内
 皆様のおかげで昭和63年に産声を上げた「名酒を楽しむ集い」も13回を迎えることができました。有り難うございます。
 さて、21世紀最初の「名酒を楽しむ集い」を下記要領で開きます。今回も普段口にすることが出来ない特別な酒などを取り混ぜながら、つたや本店の素晴らしい懐石料理とともに楽しみたいと思っております。ぜひ、ご参加下さい。
 なお、定員になりしだい締め切らせて頂きますのでご了承下さい。

日時 平成13年2月17日(土)
       受付/午後6時  開宴/午後6時30分
会場 つたや本店 市内常葉町3−25 рQ2−0434
会費 10000円
定員 40名
主催 富田酒店
協賛 つたや本店
出品酒:出品酒につきましては、ただいま蔵元と相談中のものがございますので当日発表いたします。楽しみにしていて下さい。
 ※参加申し込みは富田酒店までお願いします。



「吟醸の窓」ホームページ 
 吟醸酒の第一人者、篠田次郎さんのホームページができました。幻の日本酒を飲む会・吟醸酒研究機構・雀醇宿・吟醸寺子屋湯島酒堂の情報が満載です。
URL http://www22.freeweb.ne.jp/area/ginmado/



……… 編 集 後 記 ………
○新庄市に隣接する金山町から町民大学の講師依頼がありました。私の講演は2月21日、第4講ということでテーマは「食文化の再発見」だそうです。その日はもう一人、仙台市在住の郷土料理研究家の桜井真理子さんという講師の先生から郷土料理についての講演があり、私は酒について講演します。
 講演時間は一人30分なんですが、今回の楽しみは講演だけでなく講演後にもあります。私たちの講演が最終講義ということで講演後に郷土料理と地酒を囲んで聴講生との交流会があるんだそうですよ。エヘへ、うらやましいでしょう! 郷土料理と地酒、そして人とのふれあいを堪能してきます。・・・乾杯!



E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール