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『幻の日本酒を飲む会』解散に寄せて 8月の真夏日が28日という記録的に暑い夏も9月に入りやっと主役の座を降りはじめ、新庄にも秋の気配が漂いだしました。 そんな折り、幻の日本酒を飲む会会長の篠田次郎さんから、幻の日本酒を飲む会解散の記事が9月4日付の朝日新聞家庭欄に出ているからという内容のメールが届きました。会の解散については篠田さんからの電話で以前から知っていたのですが、新聞に載ったことで解散は確定となってしまいました。 今回の富田通信は、今日の吟醸酒を語る上でけっして忘れてはならない、篠田次郎さんと彼の分身ともいえる『幻の日本酒を飲む会』について書いてみたいと思います。 『幻の日本酒を飲む会』のこと 昭和50年12月3日、『幻の日本酒を飲む会』は東京神楽坂にある「集」というサロンで産声を上げました。 昭和50年といえば、日本酒の消費量が最も多かった時代ですが、実際はあの甘くてベタベタした味が都会の消費者に嫌われてウイスキーの水割りやビールにどんどん取って代わられた時代です。当時吟醸酒を商品として出荷していた蔵元は100社ほどあったそうですが、その市場性は甘くてベタベタの日本酒が売れていたこと、値段の高さ、それに蔵元がほとんど宣伝しなかったことなどで限りなくゼロに近いものでした。恥ずかしい話しながら、酒屋をやっている私が吟醸酒という酒を初めて知ったのが昭和55年です。 建築家の篠田さんは酒蔵の設計をやっていて吟醸酒の美味さを知っていました。当時「集」でアマチュアのジャズバンドの演奏を月一回やっていた篠田さんはそこに吟醸酒を持ち込んで飲んでいたのです。他のメンバーは例に漏れず甘くてベタベタの日本酒大嫌いで「水割り」を飲んでいたのですが、篠田さんの持ち込む酒だけは「うまい!」といって大好評でした。それを見ていた「集」の主人が篠田さんに酒の会の開催を勧めたのです。 こうして第一回目が開催されました。このときは会の名前はなく、『幻の日本酒を求めて』というポスターだけでしたが。あの甘くてベタベタの日本酒だけを日本酒と思っていた人々の吟醸酒との出会いの衝撃は想像に難くありません。会は大好評で、即座に、次回は篠田さんが次の吟醸酒を手に入れ次第開催するということになりました。 昭和53年、回を重ねるうち、設計の仕事で栃木県の島崎酒造(東力士)に来ていた篠田さんは、そこで島崎社長が鑑評会出品酒を毎年冷蔵保存していた7、8年分の吟醸古酒と出会い、その美味さに感激します。これを「幻の日本酒を飲む会」のテーブルに載せたらと考えた篠田さんは社長に頼み込んで、各年1本ずつの吟醸古酒をそれ相応の代金を支払って分けてもらいます。 その回の「幻の日本酒を飲む会」は、ほんとうに大盛況でした。そしてその様子は朝日新聞で大きく取り上げられ、大きな反響を呼びました。それまでのマスコミの日本酒に対する態度は桶買い、桶売り、混ぜ物等、批判的な記事ばかりでしたが、このときを境に好意的になっていくのです。 新聞が取り上げたことが縁になってか、その年の12月、篠田さんと会のメンバーはNHKテレビの「明るい農村」で「現代産物考」で日本酒を取り上げたときテレビ出演することになります。もちろんあの吟醸古酒も一緒です。日本地図の上に並べられた60銘柄の日本酒ラベルも正面から放映されました。 吟醸酒がマスコミで取り上げられるようになり、市場性が出てくると加速度的に吟醸酒を市販する蔵元が増え、やがて吟醸酒はブームになりました。 しかしいつもその中心に篠田次郎さんと「幻の日本酒を飲む会」があって、吟醸酒のいろいろな楽しみ方を提案し続けたのです。 その会が今年の11月、最初の会から満25年、328回の例会を持って解散してしまうのです。ほんとに残念です。寂しいかぎりです。 篠田次郎さんのこと 「幻の日本酒を飲む会」の会則の第一番目に「ただ酒を飲まない」というのがあります。これは会で賞味する酒はすべて買い上げ、蔵元にいっさいの負担をかけないということです。この一言でもって篠田さんのお人柄がご理解いただけると思います。 とかく人間、偉くなると、その権威を笠に着て蔵元にたかる人が多いのですが、篠田さんはそれとはまったく正反対です。一人の吟醸酒ファンとして日本酒の行く末を案じ、吟醸酒の将来を考え、こんな小さな酒小売店の私にさえ目を掛けてくださり、温かい教えの電話を下さるのです。 数年前、篠田さんの奥様が誰にともなく言った言葉が今でも耳に残っています。「うちの篠田も蔵元への長電話を止めれば、少しは暮らしが楽になるのにねぇ」と。そのとき篠田さんは側で静かに微笑んでいらっしゃいました。 篠田さん、長いことほんとうにありがとうございました。でも、まだまだ老け込むには早すぎますから、これからもご指導よろしくお願いしますね。・・・奥様、なにとぞお許しのほどを! |
田楽・山楽(でんがく・やまがく)in金山 |
新庄の北に位置する金山町で今年も田楽・山楽が開かれます。 内容は春に植えた酒米(出羽燦々)の稲刈りとさくらんぼの鉢植えづくり、さらには、コンサート(今回のゲストは“リリー&ヨージ”。リリーは、「私は泣いています」で大ヒットしたあのリリーです!)、その後の純正山形純米吟醸DEWA33のパーティ、翌日の体験コーナー(イワナの薫製作り等、8コース)と盛りだくさんです。 私もパーティ前に、春の田楽・山楽に引き続いて「お酒のあれこれ」をお話しします。お楽しみに! |
日 時:平成12年9月23日(土)〜9月24日(日) 23日:午後1時30分まで金山町役場に集合 24日:昼食会後、午後2時解散 定 員:先着70名 参加費:大人/11,000円 中学生以下/5,000円 幼児/無料 当日は酒米農家の方々の家に民泊しますが、 ホテル希望の方は2,000円、追加です。 申込期限:平成12年9月14日(木) 申し込み、問い合わせは以下のところへお願いします。 〒999−5402 山形県最上郡金山町大字金山324−1 金山町役場農林課内 金山町田楽・山楽実行委員会事務局 電話:0233−52−2111(内線403または407) |
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〇「幻の日本酒を飲む会」解散のニュースは本当にショックでした。実のところ私はこの会の準会員で入会したのも平成2年から、さらには、例会出席も吟功績賞をいただいたときの1回のみという、文字通りの幻の会員なのです。 |
E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール |