吟醸酒の先駆者・花岡正庸
今年の気候は、なんか変ですね。1月2月の少雪に始まって、3月に入ってからのドカ雪。それに雨や雪、加えて寒さにたたられた4月。まあ、そのおかげで新庄はゴールデンウィークと桜の満開が重なりましたが・・・。
それにしても、例年だったら桜の開花と共に浮き立つはずの心が何となく冬を引きずっているのは、この寒さのせいなのでしょうか。それとも単なる歳のせいでしょうかね。
さてと、4月18日に仙台国税局において、平成12年東北新酒鑑評会の一般公開がありました。今回の富田通信は鑑評会の出品酒、すなわち吟醸酒の生みの親といっても過言ではない花岡正庸氏について書いてみたいと思います。
四国香川県丸亀時代
花岡正庸は明治16年、長野県下高井郡科野村の酒蔵の長男として生まれました。大阪高等工業学校醸造科を卒業し家業を継いだのですが、23歳の時、酒造りの最中に火を出し、蔵と住居を焼失してしまいました。彼は、学校で習得した酒造の理論と家業での実践の経験を生かし、25歳の時に酒造りを指導する技術者の道を選びます。最初に配属されたのが四国4県を管轄する丸亀税務監督局の鑑定部でした。
最初から単独で現場指導を任された花岡を待ち受けていたものは、酒の腐造(酒にならず仕込みの途中で腐ってしまう)でした。腐造を防ぐには力のある酒母(優良な酵母で満たされている酒母)を造らなければなりません。高知県の須崎町と宇佐町の酒蔵の酒母が早湧き(仕込みの初期から発酵が始まり力のない酒母になる)しないことに目を付けた彼は、その原因が仕込み水の中の硝酸塩にあることを突き止め、酒母の仕込みの時に硝酸塩を少し加えることを実践しました。これによって酒母の早湧きは起きなくなり、腐造は大幅に少なくなりました。さらに花岡は酒母を低温で育成する方法を提唱しこれによってもまたさらに腐造が少なくなり、大正5年の全国的な大腐造の年も花岡の指導担当区域からは一本の腐造も出ませんでした。
宮城県仙台時代
大正7年、花岡は仙台税務監督局鑑定部勤務を命ぜられました。東北各地の酒蔵を巡回して花岡が一番痛切に感じたことは、灘、関西、広島地方と比べて、原料米の米質の悪さと、その精白程度の低さということでした。今では信じがたいことですが、当時の東北地方の酒造原料米の精白程度は、その当時の飯米よりは少しは白いか、あるいは同じ程度だったのです。
そこで花岡は東北の酒造改良はまず、米質の改良と精白度の向上が先決と考え、あらゆる機会をとらえてそのことを提唱しました。米は当時広く植えられていた「亀の尾」を使い、精米も横型精米機(その当時は現在の酒蔵が使っている縦型精米機は発明されてなかった)で5回から10回掛けていたのを15回から20回掛けなければいい酒はできないと主張したのです。その主張があまりに激しかったため、大部分の酒造家や杜氏からは法螺吹き技師と悪口をいわれ、また鑑定部の同僚の間でさえもその主張は東北地方には向かないとして反対され、あるいは笑いぐさになりました。
そんな花岡でしたが、なぜか秋田県の酒蔵とは気が合いました。大正9年の正月、秋田県能代にある「比羅夫」醸造元、渡辺醸造部でのことです。花岡は長期滞在指導でこの蔵にいました。この蔵の主人、60歳がらみの渡辺彦右衛門は一流の老歌舞伎俳優といった風情の持ち主ながら、酒造りにはことのほか熱心で、新しいことをどんどん取り入れる人でした。彦右衛門は花岡の主張に賛同し、今までまだ誰もやったことのない横型精米機30回掛けの白米で酒を仕込むことにしたのです。30回掛け、言うのは容易いことですが実際は・・・。精米機から出てきた米を梯子を使って運びあげ、また精米機に掛ける。これを30回繰り返すのです。米の総量は十石仕込みですからできた白米で1500kg。想像を絶する仕事です。精米係が泣くようにして仕上げた白米で麹を作る。
ところが菌糸の成長がなかなか進まず、温度も上がらない。結局、普通の麹より10時間ほども長くかかってやっと麹ができました。酒母は非常に経過が良く素晴らしいものができたのですが、もろみの段階に入ってなかなか発酵が進まない。いつまで経っても湧きついてこないのです。したがって温度の上昇もない。このまま腐造になるのでは、花岡は一瞬不安になりましたが、しかし腐造の兆候は全くない。結局仕込みから25日、標準の倍の日数かかってもろみが完熟しました。搾りにかかったもろみは酒袋の中に酒粕が普通の酒の倍以上も残りました。こうしてできた酒は、色相は非常に淡麗でだれもが今までに見たことのない風格のあるものでした。
花岡の造ったこの高精米仕込みは、まさに吟醸仕込みそのものです。ただ唯一の誤算は原料米と仕込み水の割合にありました。当時の仕込みは容量で仕込んでいたため、米が高精米によって小さくなると結果として同容量にたくさん入るということに気づかなかったのです。後に花岡はこれに気づいて重量による仕込みを提唱しています。
平成12年東北新酒鑑評会優等賞受賞蔵
青森県 |
金冠喜久泉 |
松緑雫酒 |
初駒花 |
桃川 |
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鳩正宗 |
陸奥男山 |
菊駒 |
みちのく富貴 |
秋田県 |
竿灯 |
新政 |
高清水(御所野工場
・中仙工場) |
銀鱗 |
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北鹿 |
竿灯 |
御国喜久水 |
天壽 |
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出羽の冨士 |
春霞 |
刈穂 |
秀よし |
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かまくら |
朝乃舞 |
両関 |
福小町 |
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一滴千両 |
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岩手県 |
岩手川 |
あさ開 |
菊の司 |
広喜 |
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堀の井 |
桜顔 |
南部杜氏 |
喜久盛 |
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七福神 |
岩手誉 |
関山 |
世嬉の一 |
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磐乃井 |
秘春玉の春 |
酔仙 |
南部美人 |
山形県 |
寿久蔵 |
壺天 |
出羽桜(本社・山形工場) |
あら玉 |
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朝日川 |
十四代 |
花羽陽 |
上喜元 |
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松嶺の富士 |
東北泉 |
初孫(本社・本町蔵) |
栄冠菊勇 |
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奥羽自慢 |
蔵古流 |
出羽ノ雪 |
大山 |
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くどき上手 |
羽前桜川 |
羽陽錦爛 |
醸心 |
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酒中楽康 |
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宮城県 |
勝山 |
鳳陽 |
於茂多加男山 |
瞑想水 |
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宮寒梅 |
黄金澤 |
玄昌 |
萩の鶴 |
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澤乃泉 |
新関 |
墨廼江 |
浦霞 |
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蔵王 |
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福島県 |
大七 |
奥の松 |
東豊国 |
國権 |
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名倉山 |
会州一 |
天香 |
会津藩 |
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一生青春 |
真実 |
夢心 |
大和川 |
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会津清川 |
会津ほまれ |
末廣(博士蔵・嘉永蔵) |
千駒 |
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自然郷 |
福賑榮 |
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青森県 |
掬水 |
桃川 |
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秋田県 |
北鹿 |
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岩手県 |
堀の井 |
喜久盛 |
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山形県 |
白銀蔵王 |
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宮城県 |
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福島県 |
奥の松 |
藤乃井 |
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