第142号(99.7.10)

 
焼酎にも甲乙があるの?

 梅雨の合間の青空に、朱色のザクロの花が鮮やかに散り、新庄市の花でもある紫陽花が色とりどりに咲いています。でも梅雨時の花っていうのは、やっぱり雨が似合いますよね。雨に打たれたその姿は耽美な世界へと誘ってくれます。

 ところで、娘と息子の期末テストが先日ありました。ひょんなことから話題が成績の話になり、「今の評価はA・B・Cランクとかなっているが明治、大正時代は甲・乙・丙・丁・戊とかだったんだぞ」といったら、「だったら焼酎にも甲類とか乙類とか書いてあるけども、焼酎もテストを受けるの?」と聞かれました。

 そこで今回の富田通信は焼酎の甲類乙類について書いてみたいと思います。


焼酎の歴史

 甲類乙類の話にはいる前に、簡単に焼酎の歴史を書いてみましょう。焼酎はウイスキーやブランデーなどと同じく蒸留酒です。蒸留酒は中世期に錬金術師が何らかの発酵液をルツボに入れて蒸留したところ、偶然に生み出されたものです。

 このアルコール度数の強烈な液体を作る方法は世界各地に広がり、それぞれの土地でさまざまな蒸留酒を生み出しました。

 日本へは、14世紀から15世紀にかけて東南アジアや中国、それに朝鮮半島経由で蒸留酒が入ってきましたが、最初に焼酎が作られたのは15世紀中頃の沖縄の泡盛だというのが有力な説です。

  甲類、乙類とは

 結論を先に言ってしまえば、甲類・乙類とは単なる酒税法上の名称で、焼酎の良し悪しとは全く関係ありません。  甲類とは連続式蒸留機を使って作られたアルコール度数36度未満の焼酎で、タカラ純とか大五郎などよく知られた焼酎です。乙類とは単式蒸留機を使って作られたアルコール度数45度以下の焼酎で、芋焼酎や麦焼酎などの焼酎です。  では、まず焼酎乙類から説明しましょう。

焼酎乙類(本格焼酎)

 焼酎乙類は別名「本格焼酎」とも呼ばれ、昔ながらの単式蒸留機を使って作られた、原材料の風味を色濃く残している焼酎で、モルトウイスキーやブランデーなどもこの仲間です。

 先にも述べた錬金術師が作った単式蒸留機はアランビック(アラビア語で“汗の雫”という意味)と呼ばれ、それが7世紀から10世紀にかけて東南アジアの洋上に浮かぶ南洋諸島やアジア大陸の沿岸地域で、世界最古のスピリッツ「アラック」を生み出しました。このアラックは江戸時代オランダ人によって日本に運ばれ、あらき酒、阿刺木酒、阿刺吉、荒木酒と呼ばれました。また酒を蒸留することや、その蒸留機をらんびき、蘭引などと呼んでいました。この名前はおそらくアランビックに由来するものでしょう。

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 余談ですが最近どこか大手の焼酎メーカーが「阿刺吉酒」などと称する甲類焼酎を売り出し、それをまたどこかの大学の先生がテレビコマーシャルでさも得意げに「東回り・・・」などとおっしゃっているのを見るにつけ、どうして焼酎乙類メーカーが抗議をしないのかが不思議でなりません。

 閑話休題。話を戻しましょう。米を原料にした泡盛、薩摩芋を原料にした芋焼酎、麦を原料にた麦焼酎、黒糖を原料にした黒糖焼酎など、乙類焼酎はその土地土地の文化と風土を色濃く反映した本格焼酎です。


焼酎甲類

 焼酎甲類は19世紀に発明された連続式蒸留機で作られる、ほとんど純粋アルコールに近い焼酎です。ですから原料由来の風味は全くといっていいほどありません。と書くと「いや、タカラ純と大五郎は味が違うぜ」とおっしゃる方もいるかもしれませんね。それはアルコール以外に原料由来の香味付け原料を使っているからです。この特殊原料としては、大麦、トウモロコシ、砕米、白ぬか、清酒粕、ナツメヤシなどが使われます。

 現在の焼酎甲類の主原料は、東南アジアで砂糖を精製した後に残る廃糖蜜です。この廃糖蜜を水で薄め発酵させたものを連続式蒸留機で蒸留し、粗留アルコールを作ります。それを日本に運んできて水で薄め、さらに連続式蒸留機でアルコール度数約95度のニュートラル・スピリッツを作ります。それを20度や25度、35度まで水で薄めたのが焼酎甲類です。

 無味無臭(といってもアルコールの味と匂いはありますが)、無色透明が、焼酎甲類の特徴です。

 エッ、どうして廃糖蜜の段階で日本に運んで焼酎を作らないかって? それは、日本では公害規制が厳しくて膨大な量のもろみ蒸留かすの浄化処理に莫大な費用がかかるからですよ。汚くて金のかかるものは現地で・・・。無色透明、無味無臭のきれいな甲類焼酎にはこんな隠された一面もあるのです。
 
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編 集 後 記

○いま、パソコンの画像処理ソフトに挑戦しています。絵のセンスがまったく欠けている私を知っている人は、なんて無謀なことをとお思いでしょうが、やってみるとなかなか面白いんですね、これが!!  ついつい夢中になって、気がついたら、何時間もパソコンの前に座っていたなんてこともしばしばです。おかげで危うく、今月号の富田通信は休みになるところでした。・・・フ〜、できあがってよかった。乾杯!



   

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