第139号(99.4.10)

人性(じんせい)酒を嗜(たしな)む

 入学式も終わったというのに、新庄はまだ雪がちらついています。外では県議会議員候補の選挙カーが相変わらず連呼の声を響かせています。それでも、田んぼの雪はすっかり解け、すずめのさえずりも日毎に大きくなってきました。もう、春なんですね。今月末頃には桜も満開になることでしょう。   ところで、3月4月といえば、職場の歓送迎会やら花見やらと飲み会が続きますよね。この、日本人の宴会好きはどこから来ているのでしょうか。  今回の富田通信はこのことについて、日本酒センターの「日本酒歳時記」より書いてみましょう。

人性酒を嗜む(魏志倭人伝の酒)

『倭人は帯方(たいほう)の東南、大海の中に在り、山島に依りて國邑を為す。旧(もと)百余国、漢の時に朝見する者有り、今使役(しやく)通ずる所三十国』
 このような紹介で始まる魏志倭人伝、正しくは「魏志−東夷伝・倭人の章」は、西晋の史官、陳寿が選したもので、2〜3世紀頃の「倭国」の状況をかなり正確に伝えているとされています。いまだに邪馬台国論争の種が尽きないように、その内容についてはいろいろ解釈のあるところですが、我々の祖先の風俗について、かなり詳しく教えてくれます。

 なかでも酒にかかわりのある記述が二カ所に見られ、他の東夷の諸国と比べてもかなり特徴があり、たいへん興味がそそられます。

 そのひとつは、葬制について述べているところです。 『食飲には辺豆(へんとう:竹・木で作った高坏)を用い、手食す。・・・始め死するや、喪に停(とど)むること十余日、時に当たりて肉を食らわず、喪主哭泣(こっきゅう)し、他人就(つ)きて歌舞飲酒す。』

 東夷の他の国々、例えば夫余(ふよ)、高句麗、韓などでも歌舞飲酒する様子が記されていますが、それらは天をまつる祭礼の時とか、種蒔きを終えた時とか、いわば農耕の儀式に関連してお祝いするものです。葬式の際に「他人が喪に参じ、歌い舞い、酒を飲む」と特に書かれているのは倭国だけです。現在の通夜や檀払いの後の酒席の源流ともいえるのでしょうか。  さらに特色があるのは、会合の様子を記した箇所です。

『・・・其の会同(かいどう)、坐起(ざき)するに父子、男女別なく、人性酒を嗜む。』  倭人伝の中でも極めて感動的な一節です。寄り合いの時には、親子や男女のわけへだてもなく、自由に坐り、そんな時には決まって酒になる、というのです。他の国の場合、集会の時にも酒を飲むというようなことは記されていません。だから倭人は性来酒を好む、と見えたのでしょうか。

 カラオケで歌い、隠し芸を披露するという現代の倭国の飲酒習俗も、遠く倭人から連綿と伝え続けられたのかもしれません。
 それにしても、坐起するに父子、男女の別なく、という闊達さは、いつの間にか忘れてしまったのでしょうか。

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 いや〜、日本人の宴会好きは何も今に始まったことじゃなく、邪馬台国の遙か昔からあったんですねぇ。ついでに酒飲みのしぐさについての文章もありましたので、ご紹介します。

“しぐさ”の文化

 “しぐさ”の文化ということもよく言われます。“差しつ差されつ”のしぐさもそうですが、日本酒に関係する動作、しぐさには、日本酒ならではのなんとも言えぬ味があります。  例えば、飲み屋のおかみなどが、燗徳利の底に指を当てて燗具合を確かめるしぐさ、つき過ぎた燗を冷ますために、徳利の肌に水をかけ廻す手の動き、その酒を受けて静かに唇に運ぶ客の所作などには、日本酒の世界を形づくる“しぐさ”の美しさがあります。

 最近は女性も日本酒を飲むことが多く、結構なことですが、ひとつだけ心得ておいたほうが良いことがあります。盃の酒は親指の内側から飲むということです。ふつう盃は親指と人差し指で持ちますが、その支点となっている親指の外側に唇をつけて飲むと、ヒジが張って横柄で下品に見えます。親指の内側から飲むようにすれば、自然と脇がしまって、優しく品良く映ります。

・・・だそうですよ。それでもつい、盃にあふれるほどに注がれて思わず口のほうを盃に持っていくときにはヒジが張ってしまいますよね。気をつけねば・・・。乾杯!

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……… 商 品 紹 介 ………

鯉川・純米大吟醸生原酒「阿部亀治」

 漫画「夏子の酒」ですっかり有名になった幻の酒米「亀の尾」。その亀の尾の発見者である阿部亀治翁は山形県余目町の人です。阿部家では、現在でも「亀の尾」の原種保存のため、余目町にある先祖代々の田圃で栽培しております。  純米大吟醸生原酒「阿部亀治」は余目の鯉川酒造が阿部家より種籾を譲り受け、昭和56年から復活栽培した米で醸した酒です。
 たっぷりと味の乗った大変おいしいお酒です。去年の暮れは入荷量が少なかったこともあり、アッという間に売り切れてしまいご迷惑をおかけしました。今年は3月末に入荷の予定です。
    500ml 2,571円(税別)

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栄光冨士・大吟醸

 「古酒屋のひとりよがり」生  

 栄光冨士さんの有名な「古酒屋のひとりよがり」の生酒が入荷しました。この前、栄光冨士さんに遊びに行ったとき、常務さんからご馳走になり、あまり美味しかったので特別に分けていただいたものです。生ならではの香りと味わいは絶品です。ぜひ、一度おためしください。
720ml 3,689円(税別) 



出羽桜・吟醸生「水面音(みなもね)」

 出羽桜さんの安くて美味しい「水面音」に新たに720mlサイズが加わりました。1.8L、720ml、300mlの勢揃いです。これで、いつでも気軽にT.P.Oにあわせて楽しめますね。
1.8L  1,950円     
720ml    930円     
  300ml    380円(各税別)

編 集 後 記

 4月4日、店の定休日に子どもたちを連れて、新庄から車で40分ぐらいの所にある松山町の「眺海の森」に遊びに行ってきました。

  フィールドアスレチックでしばし汗を流してから、敷地内にある天体観測館「コスモス夢童」に入館しました。中には大きな天体望遠鏡があり、太陽の黒点や太陽の縁から出ているプロミネンスを見ることができました。

  天体音痴の私のとんちんかんな質問にも係りの人が親切に説明してくれて、気がついたら1時間近くもそこで太陽を見ていました。

  ふだん何気なく見ている太陽にも不思議がいっぱいあるんですね。いや〜、世の中まだまだ知らないことだらけで、ワクワクしますね。

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