第136号(99.1.10)

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 一昨年に引き続き去年も雪のない12月でした。ところが天の神さまが雪のない正月は新庄には似合わないとお思いになったのかどうか、大晦日の午後から降り出した雪は4日まで降り続け、あっという間に積雪60センチ・・・、おまけに、5日の朝の最低気温は氷点下8度5分というこの冬一番の冷え込みまで添えて完璧に仕上げてくださいました。あぁ、なんという律儀さ! 神さまありがとうございます。・・・ハァ。

 さて、今年の干支はウサギ。新雪についたウサギの足跡を追っていくと最後には必ず足跡が複雑に入り乱れ、なかなかウサギを見つけることができないように、世の中の動向もなかなか見えにくいのですが、ウサギは確実にいるのです。元気を出して第一歩を踏み出しましょう。

 今回の富田通信は卯年に掛けて、卯酒について坂倉又吉氏の「酒おもしろ語典」より書いてみましょう。

卯 酒

 「卯酒」と書いて、ボウズ、またはボウシュと読みます。

 朝酒の一種で、刻をあらわす子、丑、寅、卯の「卯の酒」ですから、卯の刻、すなわち朝の6時頃に飲む酒のことです。

 酔っぱらいの「トラ」とは、寅の刻(午前4時)までも飲みつづける御仁のことをいうとの一説がありますが、そうだとすると、「トラ」の酒とこの卯酒との間には、2時間の違いしかないわけです。

 しかしその酒の性質からいうと、根本的に違っていて、「トラ」は宵から飲みはじめて、午前様よろしく、午前零時はいつしか過ぎ、かしわの鳴かんとする寅の刻までも飲みつづけ、くだをまく酔っぱらいですから、この酒はいかに早朝とはいえ、朝酒の部類に入れるわけにはゆきません。

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 これに対し卯酒は、早起きをし、そのすがすがしい気持ちのところで、一杯の酒を飲み、しばし陶然となるという酒であります。

 したがって、また同じ朝酒でも、庄助さん流の朝寝朝酒とも違い、迎え酒の朝酒とも違うわけであります。

 卯酒の元祖は、中唐の詩人白楽天(772〜846)らしく、彼の900首にもおよぶ酒の詩のうち、あちらこちらにこの卯酒がでてきます。たとえば、
「卯時酒」には、
  仏法では醍醐を讃え
  仙法では仙人の食う夜半の気を誇称するが
  まだまだ卯の刻の酒の
  回りが速く、利目があるのにはおよぶまい
また、「橋亭卯飲」には、
  卯時に ふと飲んで朝飯時に
  森蔭の高橋の橋上の亭で臥る
  松の影が窓にさす頃やっと目覚め
  竹風が顔を吹いて酔いもやっと醒めた
などとあるように、彼はよほど卯酒が好きであったらしく、またの詩「効陶潜体詩」にその酔い心地を、
  朝に一盃の酒を飲むと
  目のくらむ酔い心地は、造化の元気と合致す

とうたっています。さすがに自らを酔吟先生と号しただけのことはあります。同じ卯酒でも、『大鏡』中・兼通の項に、「この殿(藤原兼通)卯酒の御肴には、ただいま殺したる雉をぞ、まゐらせけるに・・・」

 とありますのは、早朝、狩りに出ての卯酒でありましょう。


編 集 後 記

○1999年7の月・・・といえば、防波堤の際をねらうクロダイのヘチ釣りが始まる月です。去年から始めたこの釣り。右も左も分からず、ただ本を読んだりビデオを見たりしながら、ああでもない、こうでもないと試行錯誤の連続でした。でも、本やビデオじゃ分からないことがたくさんあります。そこで思い切って東京在住のこの釣りの第一人者・山下正明さんに手紙を書きました。そしたらなんと電話がかかってきたんですよ。もちろん山下さんから! いろいろと親切に教えてくださいました。求めよ、さらば与えられん、ですね。
 さぁ、今年は釣るぞ!! 乾杯。

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売り切れ商品のお知らせ

花羽陽・大吟醸『絹』 720ml
   3398円 …… 5月頃入荷予定

鯉川・純米大吟醸生原酒『阿部亀治』 500ml
   2571円…… 4月頃入荷予定



酒粕料理の楽しみ

 いま、まさに酒蔵は寒仕込みの真っ最中。吟醸酒やら純米酒などがつぎつぎと搾られています。と、当然、それらを搾ったとっても香りの高い酒粕(板粕)もつぎつぎと出てきます。でも、栄養もたっぷり、からだも暖まる酒粕の利用法は案外知られておりません。そこで、オーソドックスなものから、ちょっと変わった使い方までを書いてみます。

 なお、当店に吟醸酒を搾ったとってもおいしい板粕がございます。ご希望の方に差し上げますのでお申し出ください。

粕汁(懐石風)
1.酒粕は濃いめのだし汁に2時間ほどつけます。
2.あげどうふ、ごぼう、にんじん、しいたけを細切りします。
3.やわらかくなった粕をすり鉢ですり、だしと具を入れて煮ます。
4.しょうゆで味をととのえお椀にとってみじん切りしたセリをたっぷり振りか けます。

粕漬け
ねり粕を求め、材料をガーゼにくるんでつけます。材料は肉類、白身の魚、野菜などなんでも良い。とくにからすぎる塩ぶり、塩鮭などの塩抜きに最適です。

甘酒

ふつうは、板粕を好みの濃さにといて砂糖、塩を加えて煮ますが日本酒を少量加えれば一層風味が増します。仕上げにはしょうが汁を加えます。また牛乳を入れると洋風の甘酒となり、子どもさんにも喜ばれます。

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酒粕のおやつ

(1)酒粕のジャム巻
 板粕を一枚ずつはがし、あみにのせて両面にこげめのつく程度に焼き、熱い うちに巻すにのせ、ジャムまたはマーマレードをのばして巻き、食べやすい 大きさに小口より切ります。

(2)酒粕点心
 ようかんを薄く切って板粕の間にはさみ、両面を軽く焼いて、お茶うけにし ます。

 これを光琳梅の型などに抜けば、懐石の干菓子としても珍重されます。

 

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