毎度馬鹿ばかしいお笑いを一席 書 道 |
というんで、書き始めた。まず、横に「一」の字を書いて、上から棒ををひっぱって「十」という具合になって、その下を右に曲げようとしたから、見ているほうが、 「おーッと、こりゃァおごらされたな」 てえと、書いてくる奴ァ、 「その手はくわねえ」 てんでナ、グイっと左に曲げた、なんてえはなしがございますが、これもその時分のおはなしで、親父ァまるで書けない、読めない。ところが倅のほうが、物心のつくころから寺小屋へ通わせて、すっかり手(書道)があがって、親父ァ何より自慢でございます。 甲「お宅の息子さんは、まだこんなに小さいのに、いい字をお書きになるんだそうですナ」 親父「いえ、それほどのこたァございませんが、エヘヘ・・・」 甲「いえね、寺子屋の師匠が、えらくほめておいででしたよ。ひとつ、書いて見せていただけませんか」 親「さいですか。じゃァ、金坊、何かお書き申してみな」 倅は、スラスラと、苦もなく、紙いっぱいに書いて見せます。 |
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甲「なァるほど、こりゃァ結構なお手で・・・。それに、親父さまのご好物を、即座に字にするなんざ、にくいじゃござんせんか」 親「いえ、いえ、テへへ・・・」 親父ァ、すっかりテレて、もどって参りまして、 親「やい、金坊ッ!」 金坊「はいッ」 親「人中で書く字も多かろうに、なんであんな字を書いた? え、おまえは、親父に恥をかかせる気かッ!」 金坊「あら、お父ツつあん、アレ酒とうい字だよ」 親「なんだい酒かい?わしはまた、女という字かと思った」 嫁の力 えー親子そろって、お道具のほうの力自慢のご家庭の話しを一つ...。 息子「おとっつアあんも、昔ァどうだか知らねえが、その年になっちゃァ、とてもおいらにゃかなうめえ」 親父「なにいやァがる! 年ァとっても、おめえなンぞに負けるもンか!」 息子「じゃ競争しよう」 親父「どうするんだ?」 |
息子「ここの土瓶が二つあるから、こいつを(と一物をさし)ここへひっかけて、ぶらさげたまンまで二階へ上がるんだ」 親父「よし、おもしれエ・・・」 てンでね、二人してピーンとおっ立てたやつに土瓶をひっかけて、階段をのぼり出す。息子の嫁も母親も、こうなると応援団きどりでございます。 階段の踊り場ンところから、声援をおくっておりますと、三段、四段あがりますうちに、どうしたことか、息子のほうが見る見るおとろえまして、土瓶が落っちそうになった。さア、お嫁さんは気が気じゃァない。 嫁「ちょいと、おまえさん、しっかりおしよ! そうだおまえさん、これごらんよ!」 てンでヒョイと前をまくると、そいつを見た息子のほうが見る見る勢いづく。負けてはならじと、母親のほうもナ、 母「おまえさんッ! おまえさんも、ここをごらんよ」 これまた、前をまくると、とたん土瓶が、ガラガラガチャーン! | |
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****編集後記**** | |||||
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