今年は実に雨が多く、肌寒い秋です。いったい9月は晴れた日が何日あったでしょうか・・・。9月中旬には早くもストーブを引っぱり出しました。おかげで稲の刈り取りもすっかり遅れ、いまだに黄金色に輝いている田圃もあります。店の売り上げも・・・、ハハハ愚痴はやめましょう。 ワインは味噌汁である |
そのことは、ワインが広まっていった歴史を考えてみれば分かります。ワインがいつ頃どこで生まれたかについては定かではありませんが、ブドウの原産地がユーフラテス川とカスピ海に挟まれた一角といわれていますのでおそらくその辺でしょう。ワインが文献に最初に登場するのは、古代バビロニアのギルガメシュ王を讃えた「ギルガメシュ叙事詩」(紀元前2000年頃)です。紀元前1000年頃、ギリシャに入りその後ギリシャ文明がローマへと伝播するにつれ、ワイン文化もローマへ入っていきます。ローマは強大な軍事力で国を拡大しますが、そのときにワインも広まります。 なぜワインがローマ軍とともに広まったのでしょうか。いろいろ理由はあるでしょうが、一番大きな理由は水のせいではないかと思います。皆さんご存じのように日本と違って、大陸は安心して飲める水が非常に少ないのです。ワインは通常、製造過程において水をいっさい使いませんから(ブドウをつぶして発酵させるだけ)、安心して飲めます。兵隊が変な水を飲んで腹をこわしたり、病気になったのでは戦いになりませんものね。それにワインのアルコールは兵隊の志気を高めるのに大いに役立ちます。こうしてローマ軍は支配地にせっせとブドウの木を植えワインを広め、食事の時に飲みました。 | |
つまり、ローマ軍にとってワインとは、口の中の食べ物をのどに落とすのに欠かせない水の代わりだったのです。これは、日本人にとっての味噌汁と同じです。それが証拠に、良い水が大量にしかも安く提供されるようになった今日、ヨーロッパではワインの消費量が激減しています。ワインが水に追い出されたのです。 ワインはなぜ料理との相性にうるさいのか 私も一応、酒屋の端くれですから、ワインの講習会にも顔を出します。 ワインの講習会が一通り終わって、待ちに待ったワインと料理の時間がきます。講師の先生が「はい、まず生ガキを口に入れて下さい。それからシャブリ(フランスの辛口白ワイン)を口に入れて、口の中で混ぜ合わせて下さい。どうです?絶妙のハーモニーでしょう」・・・日本人の私には、どうもしっくりこない。生理的に合わないのです。 ワインはなぜ料理との相性にうるさいのか。それは、前に書いたようにワインが料理を食べるときの水代わりだからです。つまり口の中の料理をのどに落とすものだからです。口の中で料理とワインが混ざります。相性が決定的に重要になります。相性が悪いものが口の中で喧嘩したのでは、料理が台無しです。 では、おいしい日本酒(まずい日本酒は料理との相性以前の問題)はどうでしょうか。結論から先に言ってしまいますと、たいがいの料理と合います。なぜでしょう。それは飲み方に原因があります。 |
皆さんご自分が料理を食べながら、日本酒を飲む場合を思い出して下さい。なに思い出すまでもない、今飲んでらぁですって、・・・失礼いたしました。どうです? 日本酒と料理が口の中で混じり合うことがありますか? あまりないでしょう。 たいがいの人は、料理を口に入れて味わって飲み込んでから、酒を口に入れ、それを味わってからまた料理を口に入れる、という具合にしていると思います。 料理や酒の余韻が酒や料理と混じり合うことはあっても、料理と酒そのものが口の中で混じり合うことはない。お互いを尊重しながら協調し合う。多少相性の悪い相手でも、音楽における不協和音が音楽の幅を広げるように、食事の幅をより一層豊かにしてくれる。これが日本酒の食文化なのです。 話は変わりますが、バブルの崩壊とともにワインで食えなくなったソムリエたちが、日本酒の世界に乗り込んできてきき酒師なるものを作り、さかんに日本酒と料理の相性なるものを説いているようですねえ。それをやらなければ自分たちが食えないということは分かりますが、ワインと日本酒の食文化の違いを無視したあまりのこじつけはかえって滑稽ですよね。……乾杯!! | |
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