第114(97.03.10)


日本酒Q&A 健康編

 晴れて暖かい日に、雨垂れ音がしなくなりました。田圃はまだ一面の白ですが、屋根の雪はすっかり消えました。春の息づかいが微かに感じられる今日この頃です。

 3月から4月にかけて、歓送迎会やらなにやらで酒を飲む機会が増えますよね。そこで今回の富田通信は日本酒と健康について、日本酒造組合中央会発行の「日本酒読本」より拾ってみました。

「飲むときには蛋白質やビタミンを取れ」というのは、なぜですか?

 アルコールのほとんどは肝臓が分解してくれます。アルコールをたくさん飲めば、アルコール脱水素酵素などのアルコールの代謝にかかわる酵素が消耗されます。この酵素系を補うためには蛋白質やビタミンが必要になるわけです。従って、蛋白質やビタミンが不足している状態では、この酵素の働きは弱ってしまうことになります。これらを取らずに飲めば肝臓の負担を大きくしてしまうのです。
 このほかにも、ビタミンB群などはアルコールを飲むと吸収されにくいことが知られています。ですから、日常の食生活で良質な蛋白質やビタミンを十分に取る必要があるのです。これはまた、肝臓を丈夫に維持してしくためにも必要なことなんです。十分に蛋白質を摂取している場合は、二日酔いや悪酔いの原因となるアセトアルデヒド(アルコールが酸化するときに出てくる中間体)ができにくいのです。気持ちよく飲むためにも、刺身などの肴は有用なのです。

「適量飲酒は心臓病の予防になる」と聞いたが、本当なんだろうか?
 ある追跡調査から、全然お酒を飲まない人よりも適量を飲む人のほうが狭心症や心筋梗塞など動脈硬化性の心臓病にかかりにくく、長生きするということが明らかになりました。その後もいろいろな国で同様の調査が行われていますが、ほぼ一致した結果が得られています。そして今日では適量の飲酒が心臓病に良い、ということは国際的に認められてきました。

 この理由としては、お酒を飲むことで善玉のコレステロールが増え、動脈硬化が抑制される、というのが疫学的な定説です。コレステロールに悪玉と善玉があることはよく知られるようになりましたが、善玉が増えることで、血管の壁に溜まった余分なコレステロールを肝臓に運び、分解・代謝し、動脈硬化を防いでくれるということなのです。他に私の研究では、飲酒量が日本酒で毎日二合程度なら、まずアルコール性の心筋症の心配はありません。おいしいお酒は、心と体の強い味方。楽しく長い付き合いをいたしましょう。

「日本酒には制ガン効果がある」って、本当なんだろうか?
 戦後の日本の全国市町村別標準化死亡比を見ると、肝硬変や肝ガンによる死亡率に大きな地域差があることがわかります。そこで、全国のアルコール消費量を種類別に比較照合してみたところ、東北地方を中心とする東日本、つまり日本酒をよく飲む地方の人たちの死亡率が非常に低いことがわかりました。

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つぎに、ヒトのガン細胞に日本酒の濃縮液を添加する実験を行ったところ、ガン細胞の増殖が著しく抑制されました。こうした結果は、ウイスキーやブランデーでは認められないもので、そこから日本酒に含まれる何らかの成分がガン細胞増殖抑制作用を持つのではないかと考えたのです。
 戦後ずっと肝硬変、肝ガン死亡が東低西高の地域差を示しているという事象は、私たちの実験結果が裏づけているといえるかもしれません。日本酒のどの成分が制ガン作用を持つのかの特定が今後の課題として残されてはいますが、日本酒の効果は、事実として知ってほしいと思います。

「糖尿病と日本酒には直接の関係はない」といわれましたが?

 糖尿病という病気は、血液中の糖分をエネルギーに変える働きをするインスリンというホルモンが不足するために、摂取した糖分が有効に利用されずに血液中に増えてしまう病気です。遺伝のほかに、食べ過ぎや運動不足による肥満、ストレスがきっかけとなって発病し、放置すると恐ろしい合併症が出現します。日本では最近患者数が急激に増加しており、特に40歳以上の人は精密検査で一割程度見つかります。
 ところで、糖尿病には日本酒の糖分がよくないとか、日本酒はカロリーが高いから、などという人がいますが、日本酒と糖尿病には直接的な関係はありません。アルコールは1gにつき7キロカロリーあり、これはどんなお酒でも同じで、摂取カロリーは飲んだお酒に含まれるアルコールの量に比例します。


 糖尿病の予防には、なによりも、一日に取る食べ物その他の総摂取カロリーの抑制と適度な運動が必要です。それらに注意し、おいしいお酒を飲みましょう。

 アレ? ひょっとして、酒飲みの弁解で書いたんじゃない、な〜んて思ってません? あたしゃ、そんなことはしませんです、はい。これは、お医者様がおっしゃったんですから・・・。よ〜し今夜は心臓のために・・・エヘヘ。




商 品 紹 介
  純米吟醸DEWA33

 2月12日、山形市で純正山形酒(米・麹菌・酵母・水のすべてが山形オリジナル)DEWA33の一般公開があり、31の蔵元の新酒が出品されました。

 山形で開発した出羽燦々という酒米での酒の仕込みも今年で二年目に入り、各酒蔵でその性格をつかんだためか、去年のDEWA33よりも味が引き締まり、とてもいい酒になっていました。ぜひ、ご賞味下さい。

○麓井・DEWA33圓
        720ml \1,300
○最上川・北国浪漫DEWA33
        720ml \1,450

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○松嶺の富士・秘めごとDEWA33
        720ml \1,500
        1. 8L  \2,500
○栄光冨士・古酒屋栄光冨士DEWA33
        720ml \1,800
○出羽桜・出羽燦々誕生記念酒
        1. 8L  \2,850

編 集 後 記

○御陰様で2月22日の第9回「名酒を楽しむ集い」は、案内状がお客様に届いたその日の夜に、定員になってしまうほどの盛況ぶりでした。その上、今回は東京や山梨からご参加いただいたお客様もございました。本当に有り難うございました。

 思えば昭和63年に、一人でも多くの皆様に吟醸酒の素晴らしさを知ってもらおうと始めた集い・・・、当初の目的は達成したと思っております。ここらが潮時とも思うのですが、「この次は10回目だねぇ」とか「今度はぜひ友達もつれてくるよ」とか「本当に参加してよかった、満足しました」とか言われると止めるわけにもいかず・・・。

 なぁ〜んて偉そうなことを言いましたが、本音を言えば、会場のつたや本店さんの素晴らしい料理と吟醸酒を囲んで皆さんと過ごす時間が楽しみなのです。本当は私が一番楽しみにしているのかもしれません。来年の会場の予約はもう済ませました。

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