7月3日、去年より一週間遅れて裏庭のアヤメの花が咲きました。激しい雷雨の中、朝に蕾の先端を割って出た白い花が、まるで蝶の羽化のように花びらを広げ始め、昼頃には白にわずかの青を散りばめた優雅な姿を現し、雨にゆれていました。・・・アヤメには雨が似合います。 この木はこれが初めてではなく、十数年前にも、酒精水が出たことのある、いわば酒泉樹で、永い間に酒のこぼれを吸ったのだろうと評判になり「酒杉」と命名されて、県の史跡名勝記念物に指定されましたが、惜しいことにその木は枯れてしまったときいています。 |
また、数十年前、ルードウィヒ教授が、山林の中にある大木の幹からしみ出ている樹液のもとに、蜂、蟻、蝶、カブトムシ、カタツムリ等の無数の昆虫や、野鼠、リス等の小動物の類が争い群がっているのに気付き、よく調べてみますと、その樹液が自然醗酵をして酒になっていたわけで、博士はその樹液の中から新種の醗酵菌を発見したのであります。 このようなことは不思議なようですが、学術上考えられないことではありません。すなわち、植物の体内を循環している樹液には、幾らかの糖分が含まれていて、それが新しい芽となり、組織となり、また一部は、酸化して樹のエネルギーとなるのですが、その際、酸素が不足すると、分子間呼吸という現象が起こって、自然醗酵により酒精(アルコール)が出来得るのであります。 よく森の中などに行ってみると、樹液のにじんでいるところに、多数の昆虫が集まっているのを見かけられることがあるかと思いますが、それにはおそらく僅かの酒精が含まれていることと思われます。 | |
酒は「神から人類のみに与えられた天の美禄」などと、人間たるもの思いあがるわけにはいかぬものと思います。 ・・・昆虫も酒好きだったとは。ここはひとつ、木に酒でも塗ってカブトムシでも捕まえましょうか。もっとも、カブトムシが集まる前に、酒の匂いに釣られて私のほうが早く木にとまりそうですが・・・。 |
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