第105(96.06.10)


田楽・山楽inかねやまに参加して

 寒さのため、例年より一週間から十日程遅い田植えも終わり、水の張った田圃には小さな苗が整然と並んでいます。近くの山々の雪渓もずいぶんと小さくなり、新庄は一年で一番爽やかな季節を迎えています。 さて、今回の富田通信ですが、4月22日付けの富田通信号外でお知らせした『田楽・山楽inかねやま』(新庄市の北に位置し、金山杉と白壁の家が多く建ち並ぶ町並みが、小京都を思わせる美しい金山町。その金山町はまた、山形県の酒米の一大生産地としても有名です。人と自然環境との関わりが大切になっている今、春の酒米の田植え、秋の稲刈り、または炭焼きを通して、自然の偉大さ大切さと酒について学ぼうという企画)の田楽コースに参加してきましたので、その時の様子をご紹介しましょう。

5月25日(土曜日)曇りのち晴れ
 午後1時30分、金山町中央公民館に集合とのことで1時25分に車で着くと、すでにほとんどの人が集まっていました。「地元が一番遅いんでないの」と皆に冷やかされながら受付へ。参加者名簿を見ると県外と県内の人が半々ぐらい。一番遠くは山梨県からの参加でした。イャ〜熱心ですねぇ。

 2時に金山杉を使った白壁の街並資料館で、岸金山町長はじめ関係者の挨拶を交えた歓迎セレモニーがあり、それが終わるといよいよバスで田楽コースは田圃へ、山楽コースは炭焼きへと向かいました。


 私にとって田植えは小学校時代以来(私が小学生のころまで家では田圃の小作もやっていましたから)。ズボンを膝上までまくりあげ、出羽燦々という酒米の苗をもらうと早速裸足で田圃へ。温かく、優しい土の感触は、たちまち私を小学生にひきもどしてしまいました。土が人間を童心に帰す効果はどうも私だけではないようで、約40分程の田植え実習後の、プロの農家と一般参加者との田植え競技は、さながら小学生の運動会のよう。歓声あり笑いありでみんなすっかり子供にかえっていました。競技の結果は・・・もちろんプロの圧勝です。

 4時30分、バスで金山町のホットハウスカムロという温泉へ(山形県は全部の市町村に温泉があるのです)。イャ~風呂上がりのビールは旨い! ビールで喉を潤してから近くの山に散策へ。山を流れる小さな沢にはイワナが泳いでいました。山から帰ると、きなことゴマをつけたおにぎりが用意されていました。ああ、米が旨い。

 6時。再びバスで、田植えをした田圃のわきの神社境内へ移動。いよいよ本日のクライマックス、野外クラシックコンサートの始まりです。演奏者はバイオリニストの安部敦子さん(オーストリア国立ウィーン音楽大学卒業)とピアニストの郷津由起子さん。美味しい山形の純米吟醸酒、DEWA33を飲みながら、山に沈む夕日と、オレンジ色から深い藍色へと変化する空をバックに流れる美しい音楽・・・、あぁ、なんというぜいたく、そして至福のひととき。

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 ・・・そして、余韻の覚めぬままホームステイ先の佐々木栄太郎さんのお宅へ。山菜料理でもてなされ、余韻はやがて酔いに変わり、いつしか深い眠りについていました。

5月26日(日曜日)快晴
 佐々木さん宅でワラビたたきで朝食をご馳走になった後、佐々木さんに送られて9時に金山町役場町民ホールへ。金山町の町づくりについて役場の人の説明を聞いた後、役場の人の案内で街並み散策へ。街の中を流れる石積みの農業用水路には鯉が泳いでいて、町のあちこちに点在する金山杉を使った白壁の家々を見ていると、先程の役場の人の「金山町の町づくりは100年かけての完成を目指しています。ゆっくりと時間をかけて金山杉を使った白壁の町並みを造っていくのです」という言葉が実感として伝わってきます。さすがに杉と一緒に育ってきた町です。時間がゆっくりとそして確実に流れていきます。

 その後、宮沢賢治の「どんぐりと山猫」の創作舞踊を見て、270年の金山杉の杉林へ。そそり立つ巨木に手を触れ、上を見上げると、その大きさと遙かな時間を生きてきた生命力に圧倒されます。また、いつか会いにこよう・・・。

 昼食後、秋の再会を約束して解散になりましたが、今回の田楽・山楽は多くの人の善意に支えられた実に素晴らしい企画でした。秋の稲刈りが楽しみです。農業にそして林業に生きる人々に感謝と尊敬をもって・・・乾杯!


全国新酒鑑評会金賞受賞酒発表(北海道・東北)

 去る5月17日、全国新酒鑑評会の公開きき酒が、東広島市の国税庁醸造試験所で開かれました。去年は醸造試験所の東京から広島への移転のため中止になり、今年は2年振りの開催です。

 ある筋から聞いた話によると、山形県の金賞受賞酒が東北の鑑評会に比べて少なかったのは、会場が広島に移ったため、東京よりは暑いだろうということで、酒の香りがひらく温度を高めに設定したところ、審査日の気温が低く、香りが立たなかったのが原因だそうです。鑑評会で金賞を取るのは本当に大変なんですねぇ。 なお、紙面の関係で北海道と東北地区の金賞だけをお知らせ致します。

北海道 千歳鶴
青森県 桃川・陸奥男山・菊駒・みちのく高貴鳳瑞
秋田県 高清水・新政・天洋・太平山・北鹿・太平
    楽・千歳盛・白瀑・由利正宗・天壽・飛良
    泉・出羽鶴・秀よし・天の戸・まんさくの
    花・爛漫・一滴千両
岩手県 あさ開・関山・大吟醸秘春玉の春
山形県 寿久蔵・澤正宗・あら玉・みちのく六歌仙
    花羽陽・東北泉・蔵古流・くどき上手・羽
    陽桜川・米鶴
宮城県 鳳陽・浦霞・於茂多加男山・黄金澤・玄昌
    ささ錦
福島県 奥の松・地酒三春駒・鳳金寶穏・寫樂・天
    香・蔵粋・又兵衛吟醸

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編 集 後 記
○6月5日、新庄・最上地区の酒の小売店の青年部と酒のメーカー・卸しとのソフトボール大会がありました。この業界もごたぶんにもれず後継者難で、人数確保のため幸か不幸か私もまだ青年部。最年長ということでピッチャーをするはめになりました。本人はまだまだ若い気でピッチャーゴロに飛びついたまではよかったのですが、立ち上がって一塁送球、アウト! のはずが、立ち上がろうとしても足がもつれて起きられません。やっと立ち上がったときには、バッターは一塁ベース上。・・・あああ、やっぱり歳ですかねぇ。それに次の日の足腰の痛いこと。・・・今年でめでたく青年部定年です。

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