第103(96.04.10)


コシキの秘密

 新庄は4月に入って5日間、雪。土曜日からはさすがに雪も降らなくなりましたが、気温は低いままです。田圃はまだまだ白い部分が圧倒的に多く、子供たちが歩くスキーとやらを楽しんでおります。お花見は何時のことやら・・・。
 それでも、雪の消えたわずかばかりの黒い土にひょっこり顔を出したフキノトウや、家のまわりで鳴く雀の声の多さと力強さとに春の到来を感じ始めています。 さて、本題に入りましょう。皆さんは「コシキ」をご存じでしょうか? 酒蔵にいくと、直径1.2〜1.5メートルぐらいの大釜がありますよね。コシキとは、その上に据えて米を蒸す大型のセイロのことです。
 酒造りは、一に麹、二にモト、三に造りと言われますが、いい麹を作るためには、いい蒸米を作らなければなりません。
 今回の富田通信はいい蒸米を作るために先人が考えだした、コシキの秘密に迫ってみたいと思います。

コシキの穴の秘密
 縦、横1.5〜1.8メートルぐらいの大きな木桶の様な形をしたコシキの底には、その中央に小さな穴が開いています。その穴から勢いよく蒸気が吹き出す訳ですが、穴の大きさに秘密があります。穴の直径は漠然と決められている訳ではなく、大釜の直径のX分の1と決まっているのです。穴が大きいと蒸米は柔らかくなり、小さいと硬くなるといわれています。


コマの秘密
 コマといっても、紐を使って遊ぶあのコマではありません。コシキにもコマと呼ばれる道具があるのです。コシキ穴の上にかぶせてある物をいいます。

 いい蒸米を作るためには、強い蒸気が必要です。そのためにコシキ穴の径が決められました。今度はその穴から出てきた強い蒸気を平均に米に回さなければなりません。どのようにしたらよいのでしょうか? 杜氏たちは必死で蒸気を導く方法を考えました。そして出来上がったのが、コマと呼ばれる蒸気分流機なのです。

 コマは杜氏たちの手作りで、その形は秘中の秘とされました。樫の木を輪切りにし、それに蒸気を導く溝をつける。溝では駄目だ、くり抜いた穴の方がいいだろう。底部で蒸気が渦を巻くように広げたい。それには穴を渦巻き状に放射方向につける。放射状の穴に蝸旋を切る・・・これでは、そう簡単に人に見せるわけにはいきません。酒造りが終わって里に帰る時、杜氏がコマを懐にしまって持ち帰ったというのもうなずけます。

 現在は、ボイラーを使っていますから、蒸気の量も圧力も思い通りに調整できるようになり、蒸気をコシキの底部にたくみに誘導するための巧妙な仕掛けをもったコマも不要になり、アルミのものが多くなりましたが、杜氏の苦心には頭が下がります。

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ぬけ掛け法

 人を出し抜く、あの抜け駆けではありません。米を蒸す方法です。先程説明したコマの上に、コマの置いてある部分が空間になるようにサナと呼ばれるスノコを置きます。その上に布を敷き、その上に米を張り込みます。その、米の張り込む方法にぬけ掛け法といわれる方法があります。コシキに米を入れる時の方法で、コシキの仕組みとは直接関係ありませんが、コシキにふれたついでに書いてみました。

 まず、蒸気がコシキに立ち始めた時点で、水を吸わせた米をコシキの底に平均に置きます。コシキに置いた米のある部分から蒸気が吹き抜けると、木のスコップでそこに新たに米をのせます。また蒸気が吹き抜けるとそこに米をのせます。この繰り返しで米を張っていく方法をぬけ掛け法といって平均に米を蒸すための方法です。

 余談ですが、こうして蒸しあがった米を杜氏さんに頼んでひとつまみ分けてもらって、掌に乗せ、ギュッとひねり潰すと餅のようになります。これを「ひねり餅」といいますが、このひねり餅、こしがあって本当に美味しいですよ。


…… 商 品 紹 介 ……

蔵王スターワイン『ヴィンテージ』
 1981年NHKウルトラアイ目隠しコンテスト第1位の蔵王スターワインから『ヴィンテージ』が出ました。ヨーロッパ系の高級ワイン用ぶどう(自家農園にて自然農法栽培・収穫)をたっぷりと使用し、樽熟成後にブレンドした、販売店限定、数量限定のワインです。

ザオースターヴィンテージ(白・辛口)
720ml \1,500

ザオースターヴィンテージ(赤・辛口)
720ml \1,500

 売り切れました!
 出羽桜酒造さんの『出羽燦々誕生記念酒』1.8L \2,850が売り切れました。4月下旬に数量はわずかですが再入荷の予定です。
なお、麓井、最上川、栄光冨士さんのDEWA33は、まだ在庫がございます。

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山形の吟醸酒を楽しむ会

 山形吟醸酒推進協議会(県内28蔵元)が主催の吟醸酒を楽しむ会。県の工業技術センターの小関先生のお話を聞きながら、春の東北・全国の鑑評会の金賞受賞酒を初めとして会員蔵元の素晴らしい吟醸酒が楽しめます。

 それに何より、酒田の舞娘さんの舞も見られます。参加しなくては・・・

日時 平成8年6月12日(水) 午後6時30分

場所 東京第一ホテル鶴岡(鶴岡市)
   TEL 0235-24-7611
定員 200名(先着順)
会費 5,000円
申し込み先
     山形県酒造組合連合会
        (〒990山形市緑町1-7-46)

※お申し込みは、はがきに住所・氏名・参加人数を明記して、上記まで。

定員までの方に、振込用紙を送付、振込を確認次第、入場券を送ります。


編 集 後 記

○4月から長女が中学生。セーラー服を着た娘の姿は、晴れがましくて、何とも眩しいような、照れ臭いような・・・。

○今年は雪が多くて、まだ、ヤマメに会いに行けません。頭の中ではヤマメが泳いでいるのに・・・。雪解けを待ちながら釣りの仕掛けでも作りましょう。

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E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール