春が来たってんで、虫やカエルが土の中から顔を出すという啓蟄(けいちつ)も過ぎたというのに、新庄はまだ1メートルを越える雪の中。それでも、時折屋根から滑り落ちる雪の音や、雨垂れの音に春の兆しを感じる今日この頃です。 さて、今回の富田通信はワインだろうが、ビールだろうが、日本酒だろうがこれが無ければ絶対に酒はできないという不思議な生物、酵母についてお話ししたいと思います。 |
醗酵の母と書いて酵母? 酵母の役割とは何なんでしょうか。平たくいうと糖分を食べて増殖しながら、アルコールと炭酸ガスを作ることにあります。私たちは、酵母の作ったアルコールを酒として飲んでいる訳です。 では、酵母は糖分を食べて一体どれくらいのアルコールと炭酸ガスを作るのでしょうか。理論的には、1.11kgの糖分から0.72Lの純アルコールと、約300Lの炭酸ガスが発生します。 余談ですが酒造りの最中に、底にわずかにもろみの残った醗酵タンクを洗おうとして、蔵人が醗酵タンクの中に入り酸欠で亡くなる痛ましい事故がおきるのも、この膨大な量の炭酸ガスのためです。くれぐれも注意しなくてはなりません。 以上見てきたように、酵母の主な役割はアルコール醗酵にありますが、もうひとつ大事な役割があります。それは、美味しいお酒に欠くことの出来ない、高級アルコール類やエステル類などの芳香成分を作ることです。ですから、酵母の違いはお酒の香味を大きく左右します。 | |
話を日本酒に限ってみましょう。一口に酵母と言っても実に色々な性格の酵母があります。酵母に余計なお世話だと言われそうですが、性格の良い奴、悪い奴、アルコールに対して強い奴、弱い奴、果ては殺し屋までいるのです。 そこで、醸造試験所と日本醸造協会では、美味しい日本酒を造るために、特に近年では素晴らしい吟醸酒を造るために、優秀な酵母を純粋培養して、各地の蔵元に分けています。この酵母は協会酵母とよばれ、現在14号まであります。その主なものを紹介しましょう。 また最近はバイオ技術の発達によって様々な吟醸酵母が生まれています。昭和60年に生まれた協会13号は9号と10号の交配によって生まれた酵母で9号と10号酵母の特色をもつ吟醸香を出します。 |
今回は話が難しくなりましたが、何はともあれ美味しい吟醸酒を造ってくれる小さな生物、酵母に乾杯!
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