第98号(95.11.10)


日本酒も国際化!?

 11月2日、新庄に初雪が降りました。富田通信を書いている今も、窓に冷たい雨が吹きつけています。天気予報では今夜は吹雪になるそうです。いよいよ冬将軍が間近に迫ってきました。
 今年の秋は雨の日が多くキノコは全くの不作。中庭の紅葉の葉も赤くもならず、そのまま枯れて風雨に散っています。寂しい晩秋です・・・。
 寂しいと言えば、11月3日の山形新聞に『日本酒に国際化の波』と題して以下のようなお寒い記事が載っていました。今回の富田通信はこのことについて考えてみたいと思います。

日本酒に国際化の波(山形新聞・11月3日・朝刊)

 国産が当たり前だった清酒にも国際化の波が押し寄せ、安い原料米を利用した韓国、中国、米国産などの輸入が相次いでいる。価格破壊が進む中、「数年以内にブレンド用を含めて半分以上は外国産が占めるようになる」(流通業者)との見方も出ており、中小メーカーの多い国内業界は「国内のコメがもっと安くならないと、日本酒が日本酒でなくなる」(日本酒造組合中央会)と危機感を募らせている。

 清酒の輸入は、円高の進行もあって昨年が前年比3倍の839kl、今年1〜9月が前年同期比3. 3倍の1509klと急増。コストが安いだけでなく、日本の醸造技術や設備などを導入して品質も向上しているといわれ、今後、オーストラリア、タイ、ベトナム、ミャンマー産などの登場も予想されている。


───中略──  昨年10月から韓国の醸造会社が生産した原酒に国内醸造

酒10%をブレンドして「百済鷹」を販売している鷹正宗(福岡県久留米市)は、年末までに2,000klの輸入を予定。希望小売価格は1.8L980円〜1,280円で「同等クラスの国産純米酒に比べ約半値だが、味、香りともに遜色はない。これからは清酒も国際化の時代」と輸入販売の増加に期待している。

 以上が記事の写しです。皆さんはこの記事をどう読まれましたか? 確かにここに書いてあることが本当だったら素晴らしいことですよね。なにせ旨くて安い酒が飲めるのですから。ですが本当にそうでしょうか? 私には大手商社や大手スーパーの国民無視の金儲け至上主義の影がちらついて仕様がないのです。

例をあげて説明しましょう。

200円台ワインの正体

 去年でしたか、価格破壊と消費者の味方をモットーとする某食品大手スーパーが「旨くて安い」200円台のスペインワインを輸入販売しました。今も売られていると思います。実はこのワイン、スペイン国内では市場に出回ってはいないのです。つまりワインとして売られていないのです。では何かと言うと食品加工用なんですよ。そんな代物を消費者が知らないことをいいことにして「消費者の味方」を装って売っているのです。まったく馬鹿にした話です。

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輸入ミネラルウォーターのカビについて

 昨年の猛暑と水不足。水が儲かるってんで、大手商社、スーパーが一斉にミネラルウォーターの輸入を始めました。現地視察もしないで! 皆さんご存じかと思いますが、ヨーロッパやオーストラリア、アメリカなどは日本と比べて遙かに湿度が低いのです。現地ではお粥を炊いて一週間そのままにしてもカビが生えないというくらいカビの発生は少ないのです。したがって日本と比べて雑な瓶詰めでも、同国内を流通する分にはカビの問題などは生じないのです。

 本来であれば、そのような商品を輸入する商社は、国民の安全を守るために現地を視察し、日本の風土に適合するように瓶詰めの方法などを指示するのが当たり前のことだと思うのですが、あまりカビのことを問題にすると新たな輸入障壁の問題が生じるなどと自分の責任を棚に上げ、輸入障壁の問題にすり替えて新聞に発表していました。何のことはない、商社が自分で金を出して、日本に合うように瓶詰めの装置を改良すればいいだけの話なのに。・・・儲けが減るか。

 このように大手商社や大手スーパーは、価格破壊、消費者の味方を隠れ蓑にして、目先の利益だけを追う儲け至上主義になりさがっています。また、新聞も残念ながら、大スポンサーである彼らに対して本当のことを書きません。


 本来、酒というものは、その国の気候、風土、食文化に合わせて、何千年、何百年の歳月をかけて磨かれてきたものです。日本もまた、多湿の気候に合わせて、カビを利用した焼酎や日本酒を生み出しました。世界に誇れる酒です。

 真の意味の国際化というのは日本酒に限らず、自国の文化に誇りを持ち、その結果として他国の文化の素晴らしさを認めることから始まると思うのです。ただ単に安く出来るからといって自国の文化を衰退させたのでは、国際化どころか、日本という国が無くなってしまうのではないでしょうか。




……… 商 品 案 内  ………

麓井・大吟醸五年古酒『つぶより圓(まどか)』
五年間、10〜12度の低温で熟成させた大吟醸酒。歳月が醸し出したまろやかな味をお試し下さい。後味もすっきりしていて食中酒に最適です。
内容:度数/16〜17度  酸度/1. 3
日本酒度/+6 米・精米歩合/麹米・山田錦50%
掛米/美山錦50%

500ml \2,000

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初孫・吟醸初しぼり『雪色ぽえむ』
 酒蔵の軒先に真新しい杉玉(さかばやし)がつるされる頃、蔵の中には新酒の芳醇な香りがたちこめます。 『雪色ぽえむ』は爽やかな香りと新鮮な味わいの美山錦100%の吟醸初しぼりです。11月下旬入荷予定ん。
内容:度数/17. 8% 酸度/1. 6
日本酒度/+2. 5  米・精米歩合/山田錦50%

720ml2本化粧箱入り \3,000


出羽桜『吟醸・一耕セット』
 このセットのために特別に詰めた吟醸酒と、軽い味わいながら口中で豊かに広がる香味で好評の純米酒・一耕の詰め合わせ。いつも真先に売り切れます。 吟醸酒は冷やして、一耕は冷や又はぬる燗でお召し上がり下さい。

11月下旬入荷予定 720ml×2本 \3,200

出羽桜『大吟醸年代別セット』

 数量超限定の大吟醸酒の年代別セット。93年が2本、94年が3本です。低温熟成による香味の変化をお楽しみ頂けると思います。

 なお、数量に限りがございますのでお早めにお求め下さい。

11月下旬入荷予定 300ml×5本 \4,500




編 集 後 記
 先日、鳥海山の裾野の八幡町にある麓井酒造さんに「つぶより圓」の味をみに行ってきました。美しい若奥様のお茶を頂きながら、79才になられる老社長の吟醸酒の熟成に関する熱っぽいお話を伺ってきました。あのお歳にしてこの研究熱心さ! これなんですよねぇ、このような素晴らしい人達の思いを乗せて吟醸酒は生まれるんですよ。素敵な出会いと吟醸酒に乾杯!

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