第97号(95.10.10)


日本酒Q&AパートIII

 10月に入って、朝晩には、息が白く見えるようになりました。月山の山頂も白くなり、家ではストーブを使い始めました。
 裏庭の柿も色づきを増し、枯れ草の上に突き出たスズランの小さな真っ赤な丸い実が、妙に心を掴みます。
 ところで、10月と言えば、お酒の月(干支の10番目は酉。酉は酒壺の象形文字で酒を表します。文字通り、酉の月、10月は、酒の月です)。そこで、今回の富田通信は、酒の月にちなんで、日本酒Q&Aと参りましょう。

日本酒度という言葉を聞きますが、どういう意味ですか?

酒ビンの裏ラベルに日本酒度(にほんしゅど)- 2とか+5とか書いてあるものがありますよね。あの数字は何を意味するのでしょうか。また、そもそも日本酒度とは何を表すのでしょうか。

 一言でいえば、日本酒度は、酒の中のエキス分の多い少ないを表す指標です。その測定には日本酒度浮ひょうという比重計を使います。

 酒の中のエキス分が多いと酒に浮かべた比重計はどうなると思いますか? 真水に沈む卵も濃い塩水には浮くように、比重計は浮き上がりますよね。反対にエキス分が少ないと比重計は沈みます。


 その時の比重計の目盛りを読むと、エキス分の多い時は浮き上がりますから目盛りはマイナスを示し、エキス分の少ない時は沈むのでプラスを示します。

 そして、酒のエキス分はほとんど糖分ですから、 糖分の多い酒(甘い酒)はマイナスを示し、糖分の少ない酒(辛い酒)はプラスを示します。

 つまり、日本酒度+5の酒の方が日本酒度-2の酒よりも辛いということになります。日本酒度は酒の甘辛を知るための目安なのです。

日本酒度+5の酒と+2の酒を飲み比べたら+5のほうが甘く感じました。私の舌がおかしいのでしょうか?

 確かに、日本酒度だけからみれば+2の酒のほうが+5の酒よりも甘いはずですが、酒の味は日本酒度だけでは計れないのです。酒に含まれる酸の量や、香りの成分、その他色々な要因 が複雑に絡み合って酒の味が構成されているからです。

 一般に日本酒度が同じ場合には、酸が多い方が辛く感じると言われていますし、吟醸酒などはその果実様の香りによって甘く感じることが多いようです。

 ですから、酒の裏ラベルなどに書いてある日本酒度や酸度などは、あくまでも一応の目安と考えてください。日本酒度や酸度を見て、その酒の味を言い当てられる人などは、恐らく誰もいないのですから。

−1−






 もちろん、ご質問にあったように+2の酒よりも、+5の酒のほうが甘く感じる場合も多々ありますし、何よりもあなたがそのように感じたならそれが正しいのです。情報は情報として、自分の舌と感覚を信じてお酒を楽しんで下さい。

酒の飲める人を上戸(じょうご)、飲めない人を下戸(げこ)と言いますが、そのいわれは何ですか?

 たしかに、酒好きの人を上戸、飲めない人を下戸と言いますが、そのもとは秦の始皇帝(紀元前220年頃)が万里の長城を護る番兵に渡した加給品から来たといわれています。
 即ち、寒い山の上にある長城の門(上戸)を守備する兵には身体を暖めるために酒を、そして往来のはげしい平地の門(下戸)の歩哨には甘い物を渡したところから言われるようになったといいます。

 また一説には同じく始皇帝が作った巨大なる大建造物・咸陽宮(かんようきゅう)の上の方の門を守る人には、寒いので酒飲みを選んで戸を開閉させ、下の方の戸は寒くないので飲まない人に守らせたことから、酒飲みを上戸、酒が飲めない者を下戸というようになったともいわれています。

 なお、余談ですがびんなどの口の狭い入れ物に酒や水を入れる時に使う道具をじょうご(漏斗)というのも、酒を飲み込むということから上戸が転じたものだそうです。


……… 商 品 案 内  ………

栄光冨士・純米吟醸原酒
 『古酒屋のひとりごち』(新発売)

「ひとりごち」とは、ひとりごとを言うという意味だそうです。古酒屋がどんな独り言をいいながら、この酒を仕込んだのでしょうか。

 そっと耳を傾けながら飲んでください。きっと楽しい「ひとりごち」が聞け るかもしれません。

内容:度数/17. 8% 酸度/1. 6
日本酒度/+2. 5  米・精米歩合/山田錦50%

10月中旬入荷予定(限定品) 720ml \2,400



栄光冨士・純米原酒
 『古酒屋のひやおろし』
 冬に仕込まれた酒が、ひと夏を涼しい酒蔵の中で過ごし、秋風の吹く頃に出 荷された酒が「ひやおろし」。熟成によって、なめらかで芳醇な純米原酒に なりました。冷やであるいはオンザロックでお楽しみください。
内容:度数/17. 8%  酸度/1. 6
日本酒度/+2   米・精米歩合/美山錦64%

只今、好評販売中 720ml \1,350

−2−






出羽桜・本醸造三年古酒『枯山水』
マイナス2℃で熟成させた本醸造・三年古酒『枯山水』が間もなく入荷しま す。サラリとした上品な熟成味は、毎年多くの酒通を唸らせています。
「燗上がり」する酒で、お燗をするとその味わいが更に軟らかに優しくなり、お燗の苦手な人も、お燗の素晴らしさを再認識して頂けると思います。 今年もまた数量限定の出荷です。只今、予約受付中。
内容:度数/15. 5%  酸度/1. 2
日本酒度/+6  米・精米歩合/麹米・美山錦55%
掛米・雪化粧55%

10月下旬入荷予定 1. 8L \3,030

編 集 後 記
富田通信を書き始めて9年目。長かったような短かったような・・・実感としてはとても8年間も書き続けてきたような気がしません。いつまで続くのか自分でも分かりませんが今後とも宜しくお願いします。何はともあれ乾杯!

−3−


E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール