第96号(95.09.10)


左きき(酒飲みの異名)

 新庄祭りが終わったら、急に涼しくなりました。油絵のように質感があった回りの風景も、いつの間にか透き通った水彩画に変わりました。秋ですねぇ・・・。
 稲穂は黄色を増し、今月中過ぎからの刈り入れを待っています。
 祭りの山車制作の間は、やれビールだ、やれ焼酎だと言っていたのに、涼しくなると途端に酒が恋しくなります。
 そこで今回の富田通信は酒飲みを表す、「左きき」という言葉について『酒おもしろ語典』より拾ってみましょう。

左きき

名匠左甚五郎は“左きき"であったと言われますが、その左ききというのは左ぎっちょであったのでなく、実は酒の方が“左きき"すなわち飲ん兵衛だったんだとの説もあります。

 ご存じのように、彫刻するときは右手に槌を持ち左手にノミを持って、トントンとノミの頭を叩いてするのですから、左手はすなわちノミを持つ手になります。甚五郎はそのノミの手の冴えで次々と名作を世に残したのですが、そのノミの手は彫刻を休む間には“飲みの手"としても大いに使ったとのことです。


 それでは酒飲みを左利きという語源はその左甚五郎から出たかというと、源はそれより先、佐渡の金山から出たもののようです。というのは、金鉱地が大繁盛し、遊女屋などが軒をならべていたころ、金山言葉と言って、鉱山関係の言葉をもじった新造語が、ここを中心に流行しました。この「左利き」もその中の一つで、前述のノミを持つ手から「酒飲み」イコール「左利き」となったわけです。

 しかし「ノミの手説」は説は説としても、盃はどうも左に持った方が便利であり合理的のようです。それは、独酌してみればよく判ります。お銚子と盃が卓の上にのっているとして、まず銚子を持つのは右手が普通です。すると、左手に盃を持ってコポコポと注いで飲むということになります。そして、肴は合の手に、右手の箸でつまむ のも、左ぎっちょでないかぎり当たり前のことです。

 かりにあなた自身が飲ん 兵衛の気分になって考えて見てください。(かりにで なく、本当に“左利き"でしたらなおさらお分かりのことと思いますが)卓上の盃に右手で銚子を持って注ぎ、そして銚子を置いて盃を持ち替えて酒を飲み、またその盃を置いて銚子を持って酒を盃に注ぎ、そしてまた─── なんていうのは、きっとまだるっこいことに違いありません。そこで盃を離す間も惜しいので左手に盃を持ったままの独酌ということになりましょう。

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 もう一つの見方として、盃を左手に持つのはイキな飲み方だとも言われます。もともと普通には、やはり盃も右手に持っていたのですが、役者か誰か、あるイキな男が左手で盃を持って飲んだのを他の人が見て、その手の運びもスムーズでもあって「なるほど、ありゃイキだ」というので、だんだん同調者ができていったのかもしれません。




編 集 後 記
 お盆が過ぎ、新庄祭りが過ぎ、子供たちの夏休みも終わり、やっと静かになって、やれやれ、これで疲れが取れるぞと思ったら、日を重ねる毎に疲れが出てきます。年ですかねぇ。何もする気が起きません。ふと、思い立って学生時代に弾いたギターなんぞを引っ張り出して弾いてはみるものの、それとて弦を押さえる
 指先がすっかり柔らかくなってしまっていて、痛くて10分とは持ちません。
 こうなったら、裏庭に腰を下ろして、ボケーッと日向ぼっこでもして、気力の回復を待つことにしましょうか。


……… 酒の頒布会のお知らせ  ………

米鶴『吟醸酒』頒布会

頒布品 /吟醸酒720ml詰・2本化粧箱入り

頒布期間/平成7年10月〜平成8年1月まで4回
会  費/毎月3300円×4回
予約締切/平成7年9月30日
内  容/〔10月〕純米吟醸酒2本
     〔11月〕吟醸酒2本
     〔12月〕生吟醸酒2本
     〔1月 〕 山廃吟醸酒2本

純米酒特撰頒布会
頒布品/各社純米酒1. 8L×3本
頒布期間/平成7年10月〜平成8年1月まで4回
会  費/毎月6000円×4回
予約締切/平成7年9月30日
内  容/
〔10月〕綾菊・香川県 環日本海・島根県 末廣・福島県
〔11月〕鯉川・山形県 あさ開・岩手県 萬歳楽・石川県
〔12月〕冨の寿・福岡県 招徳・京都府 澤乃井・東京都
〔 1月〕醉心・広島県 吉乃川・新潟県 七賢・山梨県
※各頒布会とも、商品発送の場合には運賃が加算されますので、ご了承下さい。


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ホットニュース

出羽桜・桜花吟醸酒が吟醸酒部門第一位
 酒の情報誌「びくん」で全国の地酒屋が選んだ吟醸酒部門で、7年連続の日本一を続けている出羽桜酒造が、今度は東京の名酒料理店100店が選んだ地酒の人気銘柄ランキングの吟醸酒部門で、一位を獲得しました。

順位 得点  銘柄    産地   商品名   価格(1. 8L)

1位  737  出羽桜  山形県   桜花吟醸酒   2,580円

2位  355  白瀧   新潟県  上善如水    2,600円

3位  185  天狗舞  石川県  山廃仕込吟醸  5,000円

4位  172  八海山  新潟県  特撰吟醸    5,300円

5位  166  菊姫   石川県  山廃吟醸    6,000円

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