第93号(95.06.10)


酒よもやま話

 梅雨入り前の一番爽やかな季節・・・と書きたいところですが、今年の新庄は肌寒く、ぐずついた日が続いています。去年の夏の猛暑と渇水は、ヤマメにとっても厳しかったようで、例年4月5月で500匹ほど釣る近所の釣り人も今年は諦め顔です。かくいう私も川に3回行ったきりで、釣果はたったの7匹。今年のヤマメは貴重品です。
 さてと、気を取り直して本題に入りましょう。今回の富田通信は酒よもやま話と題して、酒にまつわるあれこれを書いてみましょう。

日本に禁酒令はあったか

 世界の多くの国々には、そ の民族の生んだ独特の酒がありますが、中にはまったく酒を持たない民族もあります。カナディアンエスキモー(イヌイット)、アフリカのピグ ミー、北米インディアン、オーストラリア原住民などはその例です。

 また、宗教上の戒律で酒を否定している民族もいます。イスラム教(回教)は酒を禁じていますし、ヒンズー教でも飲酒は反社会的な罪のひとつとして戒めています。1920年代の有名なアメリカの禁酒法も、端を発したのはピューリタン(清教徒)の禁酒運動でした。
 さて、日本はどうでしょうか。仏教では、禅寺などの寺門に「不許葷酒入山門」とあるので酒はだめなのかと思えば、般若湯(はんにゃとう)と称して飲みますし、神道でも京都の松尾大社や梅宮神社、奈良の三輪神社などは酒造りの神社で、神棚には御神酒を供えます。


 だから日本には昔から酒を飲んではいけないという禁酒令はなかったかというと、それは間違いです。大変古い時代から禁酒令は出ていましたが、それは宗教的な戒律によるものではなく、多くの場合は干ばつや疫病の年に発令され、また乱酒の流行で農民が禁酒を命ぜられたことも多くありました。最も古いものは大化2年(646年)に出され、以後江戸時代が終わるまで、数十回となく発布されていたのです。

   
───「粋な日本酒」より───

晴天を祈る“酒"

 酒は“聖水"として、神事のたびごとに用いられています。 超高層ビルの地鎮祭には、日本酒が必ず登場し、工事の安全を祈願しています。進水式や山開き、海開きなどでも同様です。

ところで、梅雨時などに、晴天を祈る際にも身近なところで“酒"が登場するのをご存じでしょうか。

 ♪あ〜した天気にしておくれ♪と、晴れを祈って子供たちが軒下に吊るすあの“テルテル坊主"。

実は、これにも日本酒が欠かせないのです。今では古式に則って、この人形の頭に酒をふりかける人は少ないようですが、本来は、酒でけがれをはらわないと願いごとが神様に通じないのだそうです。

 
───「日本酒おもしろ百科」より───

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酒に五味あり

 皆さんはよく、日本酒は辛口に限るとか、いや甘口が好きだ、とかいいますよねぇ。

 では、本当に良い日本酒とはどんな酒をいうのでしょうか。

 昔からお酒には、甘・酸・苦・渋・辛の五味があり、この五味がほどよく調和しているものが良いお酒だといわれています。ちなみに、酒の大家として有名な故・坂口謹一郎博士もその著「日本の酒」の中で、さわりなく水の如くに飲めるのが良い酒だと述べておられます。

 ここで誤解しないで頂きたいのですが、私は何も水のような酒が良い酒だと言っているのではありません。いろんな味の水があるように、酒の味にも濃醇・淡麗・甘口・辛口など実に様々なタイプがあります。ただ、どんなタイプにしろ、香味のバランスのとれた酒が良い酒だと言っているのです。

 人にも五みがあるといって、そねみ・ねたみ・うらやみ・やっかみ・ひがみなどがあげられますが、これらがほどよく調和しているのが良い・・・アハハ、人にはこれらは無い方がよさそうですね。失礼しました。
 いずれにしても、自分の舌を信じて、自分に合った酒、自分に合った飲み方、そして様々なタイプのお酒を楽しんで下さい。それでは乾杯!


……… 商 品 案 内  ………

出羽桜『フロスティ300』
 香りの淡い吟醸タイプの生酒。食中酒として料理がグ〜ンと引き立つ、フレッシュで爽やかな辛口のお酒です。
 また、くもりガラスの涼しげな容器は、飲み終わった後、徳利として利用できます。

300ml  480円

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本の紹介 『花岡先生を偲ぶ』

 秋田県酒造組合、秋田醸友会は、昭和29年に長野県で発刊された「花岡先生を偲ぶ」の復刻版(B6版)を刊行し、定価2500円(税込み、送料別)で販売しています。(初版200部)

 花岡正庸先生は明治16年長野県に生まれ、大阪工業醸造科卒業後、丸亀税務監督局鑑定部から大正7年仙台税務監督局に移り、秋田県技師を兼ねて、東北各地の酒造技術の指導を行い、昭和2年秋田県醸造試験場の初代場長に就任し、昭和17年の退任時まで秋田県酒造技術の発展に寄与した第一人者。

 また、吟醸酒の誕生に深くかかわった人で、篠田次郎氏もその著『吟醸酒の来た道』の中でこう書いています。「花岡正庸、彼は未来人だ。私はそう思っている。われわれ吟醸酒ファンのだれかの子孫なのだ。先祖であるわれわれに吟醸酒を届けようと、タイムマシンに乗ってこの世にやってきたのだ。私はそう信じている。」

申し込み先:
秋田市八橋戌川原47 秋田醸友会
         TEL0188-63-6455


編集後記
6月9日に山形市のメトロポリタンホテルで開かれた「山形の吟醸酒を楽しむ会」に行ってきました。会場に着いたのが5時15分。受付が6時からというので、時間つぶしにホテル内の喫茶店でビールを飲んでいました。そこへ、栄光冨士の加藤常務、亀の井の今井さん、奥羽自慢の佐藤さんが現れて4人でワイワイ、ガヤガヤ。話が盛り上がった頃、ウエートレスが「ビール、おかわりいかがですか」・・・。美味しい吟醸酒を飲む前に、軽く喉を湿すだけのつもりが、会場に入った時にはすっかりほろ酔いになっておりました。反省。

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