第91号(95.04.10)


節税酒???

 田んぼの雪もほとんど消え、家や植木の雪囲いも取れました。新庄の桜の開花は4月19日頃になるとか。春が触れるとこまで近づいてきました。

 ところで、4月5日付けの読売新聞の1面に「節税酒」なる見出しの記事が載っていました。そこで、今回の富田通信は、この記事を通して酒について考えてみたいと思います。

『“節税ビール”に続いて“節税ウイスキー”も登場─。洋酒最大手のサントリーは4日、ウイスキータイプながら酒税額が低いリキュール類に分類される新洋酒を、4月20日から発売すると発表した。一方、サッポロビールは4日、国産としては二番目になるビールタイプ発泡酒の発売を発表した。これらは、日本の複雑な酒税法を逆手に取り、原料比率や製法を変えることで税率

を低くし、低価格を実現しようという“節税酒”───中略──

 サントリーが発売するのは、ウイスキーと同じ穀物原料を使ったリキュール「ホワイト25」。トウモロコシなどから作ったエキス分を2%以上加えたり、蒸留温度をウイスキーより高くすることなどで酒税法上の分類はリキュールとなり、酒税額はウイスキーの4分の1ですむ。アルコール度数は25%で、価格は640mlで780円。


 同社のウイスキー「ホワイト」(アルコール度数40%)が720mlで1,780円なのと比べると大幅に安く、焼酎並みの価格を実現した。

 一方、サッポロビールが発売するのは発泡酒「サッポロ生〈ドラフティー〉」4月20日からまず関東圏で発売し、6月中に全国展開する。

 水分を除いた麦芽の使用率を67%未満に抑え、酒税をビールより安くする発泡酒の発売は、国産品ではサントリーの「ホップス生」に継ぐものだが、麦芽使用率をホップスの約65%から約24%と一段と引き下げることで、酒税をより安くし、350ml缶で希望小売価格160円と、ホップスより20円安に設定した。

 こうした節税酒の先がけとなった形のホップスは、3月には月間100万ケース以上を出荷するサントリーの主力商品の一つに成長している。』

 以上が読売新聞の記事です。

 節税酒って何なんでしょう? ウイスキーのサントリー「ホワイト」と、リキュールの「ホワイト25」は、分類は違っても中身はほとんど同じというのでしょうか? ビールの「サントリーモルツ」や「サッポロ黒ラベル」と、発泡酒の「ホップス」や「ドラフティー」とは、やはり中身がほとんど同じなのでしょうか?

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 メーカーが、節税酒と称するものに、本来の酒と錯覚させるような名前を付けているのも、その自信の現れなのでしょうか?

 もしそうなら、節税酒は確かに安くて美味い歓迎すべき酒です。

 しかし、それならばサントリーはウイスキーメーカーを止めてリキュールメーカーになるべきですし、サントリーとサッポロはビールメーカーを止めて発泡酒メーカーになるべきです。
 なぜって、すでに自分が造っているウイスキーやビールと比べて遜色ない味で、なおかつ安い、リキュールと発泡酒を手にいれたのですから・・・。
 私が言いたいのは、そして最も恐れているのは、「節税」とか「消費者のために少しでも安く」などの正義の御旗の下に堂々としかもひっそりと、本物の酒が、何やらわけの分からないにせものに取って変わられる日が来やしないかということなのです。

 この心配は何も、ウイスキーやビールに限ったことではなく、わが愛する日本酒についても言えます。

 あの一昨年の米不足の時には、一部大手メーカーでは輸入米で清酒を造りましたし、現在も造っているかもしれません。また、某大手スーパーでは、中国で清酒を造らせ、それを輸入して安く販売しようとしております。もちろん、日本酒として・・・。
 私は何も、リキュールや発泡酒、また輸入米や国外で造った清酒をだめだと言っているのではありません。


 私が許せないのは、リキュールや発泡酒でありながらウイスキーやビールを装う、輸入米や国外で造ったものでありながらそれを隠して純国産の日本酒のようなふりをすることなのです。

 そこには、生産者としての誇りは少しもありませんし、「節税」とか「消費者のために少しでも安く」という言葉とは全く正反対に、消費者をバカにした生産者や流通業者の奢りしかありません。

 戦後50年、生産者が誇りをもって造り、私たちが胸を張って売り、そして飲むことによって皆の心が豊かになる、───そんな酒が今後ますます増えるといいですねぇ・・・。乾杯!



…… 商 品 案 内  ……

松嶺の富士 
大吟醸『高橋杜氏のたわごと』(生酒)

 道路の真ん中を水路がはしる、庄内地方の松山町の酒蔵・松嶺の富士さんの大吟醸酒。

 『高橋杜氏のたわごと』とは、ちょっとふざけた名前ですが、中身は山田錦の35%精米の中汲(酒を搾る時の一番いい部分)というとんでもない酒です。ぜひお試し下さい、お買い得ですよ。

限定品 1.8L 6,500円

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松嶺の富士
純米大吟醸『高橋杜氏のつぶやき』(古酒)

 本来の『つぶやき』は美山錦の40%精米の純米大吟醸古酒なのですが、この『つぶやき』は仕込みの年に美山錦が不作で無かったために山田錦の40%精米で仕込んであります。

  しかも、価格は蔵元の心意気で据え置きです。ただし、数量は8本しか有りませんので、あしからず。

限定品  1.8L ¥6,000 




編集後記

○今年はスギ花粉が多く、花粉症の私は外に出るのが億劫なのですが、天気に誘われて2時間ほどヤマメ釣りに行ってきました。涙は出るわ、くしゃみは出るわ、鼻水は出るわで、とても釣りどころじゃないと思っていたのですが、不思議なことに釣りをしている時は花粉症が出なかったんですよ! おかげで、ヤマメの塩焼きが食卓に上りました。花粉症の治療のために店をサボッて、また釣りに行こうかなぁ〜・・エヘ。

○先日、お酒の安売り店なるものを見学に酒田市に行ってきました。店の中はまるで倉庫のようにビールやらウイスキーなどが積まれていました。「消費者のために少しでも安く」をモットーとする店はこうでなければならないのかなどと感心して見て回るうちに日本酒コーナー。ナントあの幻の酒と言われている「越の寒梅」の別撰が定価(2,500円)の実に5倍の1万2千円台の値段が付けられているではありませんか! 酒の安売り店は、本当に儲かるものなんだなぁ・・・と、さらに感心。

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