第88号(95.01.10)



ロマンの酒、吟醸酒

 新年明けまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。 去年のクリスマス前に70センチ程積もった雪も、暖冬とやらでだいぶ少なくなってきました。今日はまた何日振りかの青空で、気持ちの良い一日です。 今回の富田通信は、新年のご挨拶にかえまして、私事で恐縮ですが私の吟醸酒との出会いなどを書いてみたいと思います。

 私が吟醸酒という酒に初めて出会ったのは、昭和50年代前半のことだったと思う。白状すると私は酒屋のくせに日本酒が大嫌いだった。甘くてベタベタするし、お燗でもしようものなら匂いが鼻についてますます飲めない。

 だから、出羽桜酒造さんが「これ、飲んでみませんか」と差し出した一升ビンにも、それほど関心が向かなかった。私がその酒を勧められるままに口にしたのは、商売上の義理もあってのことだった。

 ところが、その義理で口にした一杯の酒が、私の酒屋としての生き方を変えてしまったのである。まるでデリシャスリンゴを思わせる香り、爽やかな口当たり、飲めば飲むほどに美味しくなるその味は、私の日本酒に対する考えを根底からくつがえすものであった。ショックだった。私はその時、初めて吟醸酒という酒を知った。



 以来私は、すっかり吟醸酒のとりこになり、吟醸酒を広めようと悪戦苦闘した。しかし売れない。売れないから酒の勉強をする・・・。

 その繰り返しの中で私は、吟醸酒造りに命を懸ける男たちの存在を知った。彼らこそ杜氏を頭とする蔵人である。彼らは吟醸酒造りに入ると、それこそ寝る間も惜しんで酒造りに専念する。杜氏さんは、何キロも体重が減るという。 吟醸酒は、ちょうど母親の体内で胎児が育つように、ゆっくり、ゆっくり、大事に育てられる。吟醸酒が醗酵タンクから搾られる時も、出産に似ている。出産予定日に生まれるとは限らない。杜氏はモロミを注意深く見守り、今を逃さず搾る。

 こうして生まれた吟醸酒は、何とも不思議な力を持つ。何故か人の心と心とを繋ぐのである。まったくの見ず知らずが、いつの間にか旧知の友のような仲になってしまうのである。

 吟醸酒には、心を和ませ、素直にさせる力があるのかもしれない。まさにロマンの酒である。

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出羽桜 吟醸酒部門7年連続日本一!!

 酒の情報誌「びくん」の全国の酒販店が選んだ人気銘柄の吟醸酒部門で、出羽桜酒造がなんと7年連続の日本一です。ほかにも山形県の健闘が光ります。
 以下は「びくん」のコピーです。



 吟醸酒部門(登場した銘柄数480)

順位

銘柄

得点

県名

1

出羽桜

3,400

山形県

2

菊姫

3,110

石川県

3

久保田

2,790

新潟県

4

綾菊

2,600

香川県

5

開運

2,430

静岡県

6

まんさくの花

2,210

秋田県

7

栄光冨士

1,970

山形県

8

幻の瀧

1,880

富山県

9

琵琶の長寿

1,720

滋賀県

10

くどき上手

1,640

山形県


順位

銘柄

得点

県名

11

満寿泉

1,580

富山県

12

天寿

1,410

秋田県

13

天狗舞

1,300

石川県

14

米鶴

1,210

山形県

15

黒龍

1,000

福井県

16

満寿鏡

920

新潟県

17

玉乃光

870

京都府

17

石陽日本海

870

島根県

18

諏訪泉

810

鳥取県

19

雪雀

790

愛媛県

20

梅の宿

720

奈良県

21

米百俵

700

新潟県

22

清泉

650

新潟県

23

白瀧

630

新潟県

23

銀盤

630

富山県

24

七福神

600

岩手県

25

山鶴

540

奈良県

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…… 商 品 案 内  ……

松嶺の富士・大吟醸『香雲』
 「天盃富士」さんが「松嶺の富士」に名前を変えました。山形県の庄内地方の松山町にある小さな酒蔵ですが、亥年生まれの若い社長が張り切ってやっております。『香雲』は山田錦の精米歩合35%の大吟醸で、フルーティな香と豊かな味わいが売り物です。
720ml \2,800


松嶺の富士・純米吟醸『秘めごと』
 ラベルに松山町出身の佐藤公紀画伯の美人画をあしらった純米吟醸『秘めごと』。美山錦の精米歩合50%の味わいは、まるで雪国の清楚な女性を思わせます。
720ml \2,000 1.8L \3,500


第七回『名酒を楽しむ集い』ご案内
     東海道五十三次のお膳と雪見酒

 今回の『名酒を楽しむ集い』では、割烹料亭「つたや本店」さんのご協力により、「つたや本店」秘蔵の東海道五十三次のお膳を使わせて頂くことになりました。

 このお膳は二の膳つきで、色漆を塗り重ねたものを彫って、広重の東海道五十三次の名画を描き出したという、大変貴重なものです。
 このお膳を使って、雪見酒をやろうというわけです。お酒は雪見にちなんで、雪のつく名前の酒を揃えました。ぜひ、ご参加下さい。

日時:平成7年2月18日(土)
受付:午後6時  開宴:午後6時30分
会場:つたや本店
   新庄市常葉町3−25 tel 22-0434
会費:7,000円
定員:53名(定員になりしだい締め切らせて頂きます)
主催:富田酒店
協賛:つたや本店
※酒リスト/出羽桜(雪漫々、春の淡雪)栄光冨士(秘蔵酒、雪の降る町を)樽平(雪むかえ亀の尾大吟醸)他
※お申し込みは、つたや本店か富田酒店までお願い致します。
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E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール