肌寒かったゴールデンウィークも過ぎ、アケビの芽やコゴミなどの山菜が食卓に並び、お酒が一段と美味しい季節になりました。 ところで、大学生がコンパのイッキ飲みで死亡するという痛ましい事故が先日のテレビで報道されていました。酒、特にアルコールに対する無知が生み出した悲しい事件です。 アルコール(正確にはエチルアルコール)の特性の一つは、身体への吸収が極めて速いということです。口から入ったアルコールは胃で20〜30%、小腸で残りの全部がすみやかに吸収されます。 アルコールは他の食品とは違い、身体の細胞膜を素通りすることができます。胃や小腸の細胞膜を通過したアルコールは血液に溶け込んで肝臓に送られ分解されますが、分解されずに血液に残ったアルコールは、血管壁から滲み出て身体全体に広がります。もちろん脳も例外ではありません。 |
アルコールのもう一つの特質は、薬物であるということです。その働きの主なものは、脳を眠らせる作用です。その意味で手術に使う麻酔薬と同じです。 ここで皆さんは不思議に思うかもしれません。脳を眠らせるなんてウソでしょ、だって酔うと陽気になって、賑やかになるじゃないと。 でも、これは事実です。陽気になるのはアルコールが脳を眠らせる時に、場所によって時間差があるからなのです。最も早く眠るのは、脳幹網様体という場所で大脳新皮質に活力を与えている場所です。新皮質は、批判的精神、反省の心など高等な精神活動を司る場所で、ここが真先に眠るために抑制がとれて賑やかになるのです。 これは、見掛け上の興奮であって、アルコールの作用がもっと進めば、すべては麻痺の方向へ向かいます。そして、アルコールをも含め全身麻酔薬のもたらす状態として、酩酊、麻酔(泥酔を含む)、そして死という三つの段階を分けることができます。 |
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イッキ飲みがなぜ危険であるのか? それは、今まで書いてきたように、アルコールの吸収が極めて速いということと、アルコールが脳を眠らせてしまうことにあります。イッキ飲みの危険は、短時間に身体にアルコールが入るため、肝臓の分解(清酒一合かビール一本で約三時間)が追いつかず、急激に血中濃度が高まることにあります。そしてその高まりが永久に脳を眠らせてしまうかどうかは、ロシアン・ルーレットのように運次第という訳です。イッキ飲みがいかに危険かお分かりいただけたと思います。 以下に血中濃度と酩酊度を書いてみたいと思います。
ほろ酔い一歩前 血中濃度は0.05%以下。清酒を一合弱飲んだ状態。全身の熱感。 |
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