第80号(94.05.10)


イッキ飲みの危険

 肌寒かったゴールデンウィークも過ぎ、アケビの芽やコゴミなどの山菜が食卓に並び、お酒が一段と美味しい季節になりました。

 ところで、大学生がコンパのイッキ飲みで死亡するという痛ましい事故が先日のテレビで報道されていました。酒、特にアルコールに対する無知が生み出した悲しい事件です。
 アルコールの特性を皆様にお知らせすることも、酒を扱う者の義務と考え、今回の富田通信はイッキ飲みの危険について書いてみたいと思います。

アルコールの特性

 私たちが酒を飲む時は、もちろん酒を飲むのであって、アルコールそのものを飲んでいるわけではありません。しかし、当たり前の話ですが酒の中には、アルコールが含まれている事は、まぎれもない事実です。

 アルコール(正確にはエチルアルコール)の特性の一つは、身体への吸収が極めて速いということです。口から入ったアルコールは胃で20〜30%、小腸で残りの全部がすみやかに吸収されます。

 アルコールは他の食品とは違い、身体の細胞膜を素通りすることができます。胃や小腸の細胞膜を通過したアルコールは血液に溶け込んで肝臓に送られ分解されますが、分解されずに血液に残ったアルコールは、血管壁から滲み出て身体全体に広がります。もちろん脳も例外ではありません。


 よく、アルコールの血中濃度(血液の中に含まれるアルコールの濃度)という言葉を耳にしますが、これは身体の中のアルコールの量を計るときに血液をとって計るのが便利なためで、けっして血液の中にだけアルコールが存在するのではありません。血中濃度とほぼ同じ濃度のアルコールが脳をはじめ身体のあらゆる所(水分の少ない骨や皮下脂肪を除く)にあるのです。

 アルコールのもう一つの特質は、薬物であるということです。その働きの主なものは、脳を眠らせる作用です。その意味で手術に使う麻酔薬と同じです。 ここで皆さんは不思議に思うかもしれません。脳を眠らせるなんてウソでしょ、だって酔うと陽気になって、賑やかになるじゃないと。

 でも、これは事実です。陽気になるのはアルコールが脳を眠らせる時に、場所によって時間差があるからなのです。最も早く眠るのは、脳幹網様体という場所で大脳新皮質に活力を与えている場所です。新皮質は、批判的精神、反省の心など高等な精神活動を司る場所で、ここが真先に眠るために抑制がとれて賑やかになるのです。

 これは、見掛け上の興奮であって、アルコールの作用がもっと進めば、すべては麻痺の方向へ向かいます。そして、アルコールをも含め全身麻酔薬のもたらす状態として、酩酊、麻酔(泥酔を含む)、そして死という三つの段階を分けることができます。
 ただし、アルコールと麻酔薬の大きく異なる点は、麻酔薬が麻酔から死にいたるまでの許容量が大きいのに対し、アルコールは酩酊から麻酔にいたるまでが大きく、麻酔(昏睡)から死までの許容量が極めて小さいという点です。

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イッキ飲みの危険

 イッキ飲みがなぜ危険であるのか? それは、今まで書いてきたように、アルコールの吸収が極めて速いということと、アルコールが脳を眠らせてしまうことにあります。イッキ飲みの危険は、短時間に身体にアルコールが入るため、肝臓の分解(清酒一合かビール一本で約三時間)が追いつかず、急激に血中濃度が高まることにあります。そしてその高まりが永久に脳を眠らせてしまうかどうかは、ロシアン・ルーレットのように運次第という訳です。イッキ飲みがいかに危険かお分かりいただけたと思います。

 以下に血中濃度と酩酊度を書いてみたいと思います。

酒の種類 清酒一合 ビール一本 ウイスキー70ml
血中濃度

0.06%

0.06%

0.06%

ほろ酔い一歩前 血中濃度は0.05%以下。清酒を一合弱飲んだ状態。全身の熱感。
ほろ酔い期 血中濃度は0.1 〜0.15%程度。清酒を二合から三合飲んだ状態。よく笑い、冗談を飛ばし、過去の体験を大袈裟に自慢し始める。手足の動作には、多少円滑を欠き、たとえばマッチをする手付きが危なっかしくなる。
酩酊期 血中濃度は0.2 〜0.3 %。清酒を四合から五合飲んだ状態。吐き気、嘔吐、著しい運動障害。何度も同じことを繰り返ししゃべる。
泥酔期 血中濃度は0.3 〜0.4 %。清酒を六合から七合飲んだ状態。歩行は、はなはだ困難。たえず頭が不安定に下がり、どこであろうと寝たがる。


昏睡期〜死 血中濃度は0.4 %以上。清酒を七合以上飲んだ状態。意識を失い、ゆり動かしても起きない。大小便は垂れ流し、わずかに呼吸している。この状態より更に進めば呼吸が止まり、心臓も停止する。

 皆さん、酒は時間をかけて、楽しく飲みましょう。お互いの健康に乾杯!



 …… 商 品 紹 介  ……
樽平・純米大吟醸生酒『雪むかえ・亀の尾』
 樽平・住吉は知っていても、これは知らない! 樽平酒造さんの超限定商品『雪むかえ・亀の尾』が入荷しました。 樽平らしさを残しながらも、吟醸香が高く、サラリとした味わいのお薦めの逸品です。ぜひ、お試し下さい。
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最上川・大吟醸『金美泉』
            1.8L 5,000円
最上川・特別純米酒『醸心』
            1.8L 2,800円
 去年の暮れより品切れしていた、最上川酒造さんの大吟醸『金美泉』と特別純米酒『醸心』が入荷しました。

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…… お知らせ ……

井上ひさし講演会

 『私が農業にこだわる理由』
 あの『吉里吉里人』などで余りにも有名な山形県出身の作家、井上ひさしさんの講演会が新庄で開かれます。楽しみですね〜!!

 と き:6月3日(金)
     午後6時開場  6時半開講
 ところ:新庄市民文化会館 大ホール
 入場料:1,000円  全席自由

 ※入場券は当店でも扱っております。



…… 編 集 後 記 ……

○イッキ飲み、実に怖いですね。恥ずかしながら私も大学生の時に、ウイスキーを30分たらずの間にボトル5分の4を飲んで正体を失い、病院にかつぎこまれた苦い経験があります。今思い出しても冷汗ものです………。

○ゴールデンウィークの喧騒も過ぎ、雪しろ(雪融け水)による増水の収まる5月下旬頃から、いよいよヤマメ釣りの本番に入ります。体力がすっかり回復した幅広ヤマメとの出合いに、今から胸が高鳴ります。


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