山廃(やまはい)という言葉を聞きますが山廃とはなんですか
山廃とは「山卸し(やまおろし)廃止モト」を詰めてよんだ言葉です。
酒の元になる酒母を造る方法には大きく分けて二つあります。酵母菌を安全に増殖させるのに必要な、乳酸菌を自然に繁殖させる方法と乳酸菌を初めから添加する方法です。
前者を生モト系酒母、後者を速醸系酒母といい、山廃モトは生モト系酒母に入ります。
山卸し廃止モトとは、読んで字のごとく「山卸し」を止めたモトのことです。
では「山卸し」とは何でしょう。酒は明治時代の末まで、すべて生モトで造られていました。
この生モト造りは木製のたらいのような浅い半切桶(はんぎりおけ)を6〜8コならべ、ここにモト一本分の物料(冷やした蒸米、米麹、仕込み水)を均等にわけて仕込むことから始められます。そして、生モトでは仕込み後、12〜24時間後に山卸しという作業が行われます。
山卸しは半切桶1コに3人の蔵人がついて、先端を丸く削った玉櫂(たまがい)を持って、モトの物料を磨りつぶしていく作業です。これは5、6時間ごとに3、4回行われますから、厳冬の早朝から深夜にわたる大変な労働になります。
生モトではこの山卸しが終わると、壺代(つぼだい、モト仕込み用の小桶)の中にモト寄せといって、どろどろに磨りつぶされた物料を合併します。
この山卸し作業の時に声をあわせて唄われるのが「とろりとろりと、いま、するモトは酒に造りて江戸に出す」で始まる「モトすり唄」です。 |
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ところが醸造化学が進歩し、酒がどのようにして造りだされていくかが明らかになるにつれて、「山卸し」作業で米粒をすりつぶさなくても、米粒は米麹の酵素力だけで立派に溶解していくことが実証されたのです。こうして、つらい「山卸し」作業を廃止した「山卸し廃止モト」略して「山廃モト」が誕生したのです。
イヤ〜、質問内容が大変高度で参りました。もっと勉強せねば・・・。
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