第77号(94.02.10)


お酒の常識 ウソ・ホントII

 朝、夕は路面が凍結し、まだまだ寒さが厳しいですが、立春を過ぎたあたりから、光に風に、ほんの微かながらも春の匂いを感じさせる今日この頃です。 先月10日の気象庁の発表によると、昨年の年間日照時間の総計は、新庄が1144.1時間で全国で最も短かったそうです。一日当たりの日照時間はわずか3時間余り。色白の新庄美人の原因はあんがいこのへんにあるのかも?

 さてと、新庄自慢?はこのくらいにして、本題に入りましょう。今回の富田通信は酒席でよく話題の「お酒の常識」なるものについて書いてみたいと思います。

糖尿病と日本酒

 「医者から糖尿の気があると言われたから、日本酒をやめて、糖分の入っていないウイスキーや焼酎にした」などという実に説得力のある話をする人がいますが、本当にそうなのでしょうか?

 一日に摂取する総カロリーが大幅に高く、一方では運動不足が長年続きますと、肥満となったり、血糖値が異常に高まって、尿にまで糖がまじり、糖尿病になったりします。この病気が出ると、高血圧症、神経系の障害、高コレステロール症、肝機能低下、心臓病などを併発しますから、大変恐れられています。


酒のアルコールは高カロリーで、日本酒1合(180ml)は190カロリー、ビール大びん1本240カロリー、ウイスキーダブル2杯で300カロリーもあります。このカロリー量は、日本酒の場合、茶わんにこ飯1杯半、ビールでは2杯、ウイスキーでは2杯半のカロリーとほぼ同じくらいになります。だから酒を多飲し、運動不足のうえに過食すると糖尿病が起こりやすいというわけです。

 よく糖尿病の患者が、医者から少しの酒を許されて、ウイスキーや焼酎をすすめられたということを耳にしますが、これはとんでもない間違いです。あくまでも摂取する総カロリーが問題ですから、アルコール度数の多い酒ほど高カロリーであることを忘れてはなりません。

吟醸酒は必ず冷やでなければ

知ったか振りの居酒屋のおやじに吟醸酒を燗で注文したところ、えらい剣幕で叱られたなどの話を聞くことがありますが、吟醸酒は必ず冷やして飲まなければならないのでしょうか?
 確かに、果物のような香り、いわゆる吟醸香の高い吟醸酒は、お燗をするとその香りが消えてしまいますので冷やの方が美味しいとは思います。
 しかし、吟醸酒の中には吟醸香の低い、いわゆる味吟といわれるタイプの酒もあります。こちらは、お燗もイケます。

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 酒は、嗜好品なのですから、決めつけをせず、酒のタイプに合わせて、また自分が美味しいと思う飲み方で飲むのが一番なのです。

 ちなみに、生酒の古酒をお燗にして飲んだら抜群に旨かったという話も聞いています。

酒に強い人は肝臓が丈夫か

 「あなたは、酒が強いわねぇ。肝臓が丈夫なんだわ、きっと。」とか「俺は酒が強いから、人並み以上に肝臓が丈夫なんだ。」などの話を聞きますが、はたしてそうなのでしょうか。
 酒のアルコールは肝臓で主に分解されますから、肝臓に異常がない場合は、アルコールの分解もスムーズに行なわれます。
 しかし、酒に強い、弱いと肝臓機能の活力は本質的には相関はしていません。酒に弱い人でも肝臓は強かったり、酒に強い人でも肝臓障害を受けている人もいます。

 特に大酒を毎日のように飲んでいる人には、何らかの肝臓異常があるものですが、酒だけはめっぽう強いため、過信してとり返しのつかないことになる危険もあります。皆さん経験上からご存じのように、肝臓におけるアルコールの分解は、アルコールに接すれば接するほど、それに伴って強くなります。


 しかし、肝臓の本来の働きはアルコールの分解だけではなく、消化と吸収、栄養物の貯蔵、解毒などの働きの方が主体ですから、酒によって肝臓を病むと、体全体のバランスがくずれ、疲労や食欲不振などが起こり、酒にも弱くなります。

 よく酒は健康のバロメーターともいわれますが、それを誤解して過信しますと、とんでもないことになるのです。

 皆さん、お酒は適度に楽しくやりましょう。では、乾杯!



…… 商 品 紹 介 ……

出羽桜・『枯山水』再入荷
 10月に入荷した出羽桜・本醸造三年古酒『枯山水』、残りわずかとなりま したが、2月中旬に再入荷いたします。サラリとした飲み口が、ぬる燗をす ることでさらに旨さを増す「燗上がり」するお酒です。
 今年分はこれが最後の入荷ですので、お求めはお早めにお願いいたします。

1.8L  ¥3,030

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最上川・本醸造しぼりたて新酒
 昨年度は麹室(こうじむろ)を改良し、酒質が数段アップしたお蔭でアッと いう間に売り切れてしまいました。
 今年度は蒸米を作るカマドの改良と、酒を搾る圧搾機が新しくなりましたの で、さらに美味しくなりそう!

1.8L  ¥3,030


…… 本 の 紹 介 ……

『蔵 』上・下 宮尾登美子著 
 蔵とは酒蔵のことです。すでにお読みになられた方もいらっしゃると思いま すが、涙なしには読まれない本です。
 酒を愛する人にぜひ一読をお薦めいたします。

毎日新聞社刊 各1,300円


…… 編 集 後 記 ……

 先日、屋根の雪おろしが三日がかりでやっと終わりました。屋根に積もった雪は多いところで120センチ余り。何メートルも降った雪が圧縮されて屋根の上にあるわけですから、その重いこと! 

 親父と二人でシャベルでひとすくい、ひとすくい、何十トンもの雪を下ろし続けるわけです。

 おかげで腰は痛いわ、手にできたマメは潰れるわ・・・。
 雪おろし作業は大変危険な作業で、毎年何人かの人が屋根から滑り落ち、怪我をしたり、命を失ったりしますが、しかしまた同時に楽しみもあります。晴れた時など屋根の上から見える回りの山々の崇高な姿、雪を下ろし終えた時の達成感と安堵感。それになにより、この日ばかりはカアチャンに遠慮せずに、酒が飲める・・・いやぁ、最高ですなぁ!
乾杯!!

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