第75号(93.12.10)


えー、お後がよろしいようで

 12月に入り、青空を見る機会がめっきり少なくなりました。屋根にうっすらと積もった雪が雨垂れとなって軒下に落ちています。

 ところで、12月といえば忘年会。そこで今回の富田通信は忘年会の酒席で役立ちそうな、ちょっと艶っぽい忠臣蔵の小ばなしをいたしましょう。

 えー、お後がよろしいようで・・・

忠臣蔵(小島貞二編 「定本艶笑落語(全)」より)

 殿中松の廊下にて刃傷の罪を問われ、塩谷判官(えんやはんがん)、今、切腹の席に臨み、
判官「力弥、力弥、由良之助はまだか?」
力弥「ハッ、いまだ参上つかまつりませぬ」
 是非に及ばずというので、短刀、腹に突き立てたところで、タ、タ、タ、タ、タと付け打ち。花道より由良之助が、駆けこんで参りまして、
由良之助「由良之助、ただ今、参上!」
判「おお、遅かりし由良之助!」


 忠臣蔵四段目、いいですなア。

 その後も忠義な由良之助、主君の仇、高師直(こうのもろなお)をつけ狙うかたわら、南部坂に寂しく暮らす判官の未亡人瑤泉院(ようぜんいん)を、折々に訪ねては、なぐさめております。
 今日も、やって来た由良之助に、瑤泉院が人払い……。

瑤泉院「由良之助、そちをみこんで、頼みがある……」
由「ハハッ、なんなりとも……」
瑤「じつはじゃ、申すも恥ずかしきことながら、にわかに殿と別れて独り寝の身、近ごろムズムズいたし、かっかと火照り、夜も寝られぬくらいじゃ、なんとか殿の代わりとなるものが、ないものかのう」
由「それなれば、張形と申すものがござります---」
瑶「おお、音に聞く張形……そなたの手にて求められるかの?」
由「はッ、いと易きこと。それを商う店に知るべがござる、明日にても持参いたしましょう」
瑶「かたじけないぞや、由良之助」
 てんでナ、翌日は瑤泉院さま、朝からお待ちかね。夕刻近く由良之助が参りまして、

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由「えー、これがお求めの品でござります」
瑶「おお、うれしや。こうしている間も心が急く。由良之助、別室でためしてみる間、しばらく、それにて待ちゃ……」
 てんで、隣の部屋に入りました瑤泉院、しばらくしますてえと、無念の一声、瑶「おお、細かりし、由良之助!」
 元禄も15年となり、吉良邸討入りのときも近づきましたある日、大石内蔵助良雄は、義侠の商人天野屋利兵衛の家をたずね、武器調達の密談を重ねまして、その夜はそのまま、利兵衛の家に泊まります。
 えェ、ところでこの利兵衛の家に、ちょいと、この……渋っ皮のむけた女中が一人おりましてナ、なンしろ利兵衛は、その志を知らぬ女房の父親のために夫婦仲をさかれまして、ここしばらくはヤモメ暮らしでございます。
利兵衛「あア、毎晩毎晩、自分の膝っ小僧ォ抱いて寝るのは、かなわんなア。よし、今夜ァひとつ、あの女中をコマしたろかい」

 てンで、女中が手水場(てちょうず)に立ちましたあいだに、こっそり女中部屋に忍びこみ、ふとんにもぐりこんで女中の帰りを待っております。
 思いは同じ大石内蔵助、妻子は早く但馬(たじま)の豊岡に送り帰し、エー、ここンとこ忙しく祇園にも通えず、モヤモヤしているところへ、昼間、あの女中を見ましたから、もう我慢ができません。


 これまた、女中部屋へ忍びこむと、くらやみの中で、ふとんにもぐり、やにわに股の間に手を突っこんだ……。
 ウワァと相手がはね起きたかと思うと、
利「天野屋利兵衛は、男でござる!!」




…… 編 集 後 記 ……

 先日、酒屋の若手の研修会で仙台に行ってきました。日中は山形県の高畠ワインさんで、みっちりワインを研修し、夜は仙台です。ホテルについて酒を飲みながら晩飯を食べ、さア、夜の仙台の研修だァ! てなもンで、一同揃って何やらあやしげなビルへと繰り出しました。私のとなりに座ったのは20才の美人のホステスさん。ラッキーっと鼻の下を伸ばしたまでは良かったのですが、……ふと気付くと、まだ吟醸酒を飲んだことがないという美人ホステスさんに吟醸酒の素晴らしさや仙台で吟醸酒を買える店を一所懸命に話していました。……大変きれいな仙台の夜でした。アア、吟醸酒が憎い。

 今年一年、本当に有り難うございました。よいお年をお迎え下さい。

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出羽桜の桜花吟醸がグランプリ獲得!
 こだわりの逸品を紹介している月刊誌「特選街」の全国日本酒コンテスト・普通吟醸酒部門で、出羽桜酒造の『桜花吟醸酒』が堂々の一位を獲得しました。
 同コンテストは今年で通算20回を迎え、民間最大のコンテストとして年々、参加蔵元が増えており、今回は全国から1,118点(普通吟醸酒部門には162点の出品)もの銘柄が日本一を競いました。
 審査は、穂積忠彦氏ら3人の審査員の完全目隠しによるもので、穂積氏のコメント「貯蔵庫をすべて完全冷蔵化して完璧な熟度管理に支えられた香気の素晴らしさは他にその類をみない」を始めとして3人が3人とも異口同音に出羽桜の『桜花吟醸酒』を絶賛していました。
 実を言いますと、私が15年ほど前に初めて吟醸酒というものを知り、その世界にのめり込むきっかけとなった酒がこの『桜花吟醸酒』でした。その時の旨さと驚きの感動は未だに忘れられません。本当にうれしく思います。
 類ひなき思ひ出羽の桜かな
     薄くれなゐの花のにほひは   西行

…… 商 品 案 内 ……

出羽桜・新酒しぼりたて
 全国屈指の吟醸蔵・出羽桜酒造さんより今年も下記の新酒しぼりたてが発売 されます。
新酒しぼりたて『桜花吟醸本生』
 価格 1.8L:2,680円 720ml:1,315円
新酒しぼりたて『春の淡雪』(本醸造酒オリ酒)
 価格 1.8L:2,180円 720ml:1,015円
新酒しぼりたて『一耕本生』(純米酒)
 価格 1.8L:2,530円 720ml:1,215円
入荷予定:12月中旬(一耕本生のみ12月下旬)

亀の井・美山錦純米新酒『雪しずく』
 毎年大好評の亀の井酒造さんの初しぼり生酒『雪しずく』が今年も発売され ます。雪にすっぽり囲まれた時の暖かさを感じさせる、ちょっと甘めの純米 新酒です。
 価格 1.8L:2,300円 720ml:1,200円
 入荷予定:12月中旬

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