第73号(93.10.10)


酒を讃える歌

 例年だったら収穫の喜びに沸く季節ですが、今年は未だに稲の刈り取りが始まりません。9月に発表された米の作況指数では、新庄・最上地方が60台でした。私の見たところでは50もいくかどうか・・・、新庄の山間部や最上町方面は壊滅状態です。年老いた百姓の額の皺がさらに深くなったような・・・。 さて、本題に入りましょう。10月はお酒の月(干支の10番目は酉、酉は酒を表す)です。今回の富田通信はこの「お酒の月」に敬意を表して、奈良時代の歌人・大伴旅人の酒を讃える歌十三首(万葉集巻三)をご紹介しましょう。

験(しるし)無きものを思はずは
 一坏(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらし
(甲斐もない物思いなどに耽らないで、一杯の濁酒でも飲むべきであろう)


酒の名を聖とおほせしいにしへの
       大き聖の(こと)のよろしさ
(酒の名を聖とつけた昔の大聖人の言葉の何とよいことよ)


いにしへの七(なな)の賢(さか)しき人たちも
   欲(ほり)せしものは酒にしあるらし
(竹林の七賢人も求め欲したのは酒にこそあったのだ)


賢(さか)しみと物言ふよりは酒のみて
  酔泣(えいな)きするしまさりたるらし
(賢人ぶって物を言うよりは、酒を飲んで酔い泣きする方がかえってまさっているらしい)


言はむすべせむすべ知らずきはまりて
  たふときものは酒にしあるらし
(何とも言いようも、しようもないほど、極めて貴いものは酒であるらしい)


なかなかに人とあらずは酒壺(さかつぼ)に
  なりにてしかも酒に染みなむ
(中途半端に人間でいずに酒壺になってしまいたいものだ。そうしたら、酒にたっぷり染みることができるだろう)


あな醜賢しらをすと酒飲まぬ
  人をよく見れば猿にかも似る
(ああみっともない。「馬鹿馬鹿しい酒など飲んだりして」と利口ぶって振る舞う人をよく見ると猿に似ているよ)


価無き宝といふとも一坏(ひとつき)の
  濁れる酒にあに益(ま)さめやも
(仏法などで評価を超えて貴い宝というが、それも一杯の濁酒に何のまさることがあろう。ありはしない)
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夜光る玉といふとも酒のみて
 情(こころ)をやるにあにしかめやも
(述異記や戦国策などに夜光の珠、あるいは璧のことを伝えているが、それも酒を飲んで心をはらすことになんで及ぼう。及びはしない)

世の中の遊びの道にすずしくは酔泣きするにあるべかるらし
(世間の遊興の道に心楽しまないならば、酒を飲んで酔い泣きをすべきものであろう)

今の世にし楽しくあらば来む生には虫に鳥にもわれはなりなむ
(この世で楽しく酒を飲むなら来世では畜生道におちて虫にでも鳥にでもなってかまわない

生ける者つひにも死ぬるものにあれば今の世なる間は楽しくをあらな
(生ある者はついには死ぬるものであるから、この世に生ある間は楽しくありたいものだ)


黙然(もだ)をりて賢しらするは酒飲みて
  酔泣(えいな)きするになほ若かずけり
(だまって利口ぶったふるまいをするのは、酒を飲んで酔い泣きするのに、やっぱり及ばないものだ)



…… 編集後記 ……


○富田通信が満6才になり、私も不惑の歳を迎えました。しかし不惑とはいえ惑いは増える一方。なぜ、経済はマイナス成長というおかしな言葉を使ってまで強迫観念的に成長し続けなければならないのか? ダーウィンの「最適者生存」は本当なのだろうか? 「時は金なり」の名のもとに便利な機械が次々に発明されるのと反比例して生活にゆとりが無くなるのはなぜか???

・・・今日は夕焼けがものすごくきれいです。疲れたら休みましょう。乾杯!


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…… 商 品 案 内 ……

出羽桜・大古酒『枯山水』
上品に枯れた熟成味で、毎年大好評を得ている本醸造・三年古酒『枯山水』。今年も十月と二月の2回に分けて出荷されます。
 『燗上がり』する酒で、お燗をすると味わいが更に軟らかに優しくなります。お燗の苦手な人もお燗の素晴らしさを再認識していただけると思います。
出荷数量は6,800本限定です。只今、予約受付中。
内容:
 本醸造・三年古酒(摂氏-2℃でゆっくり熟成)
 度数/15.5% 酸度/1.2 酒度/+6
 米・精米歩合/こうじ米,美山錦55% 
 掛米,雪化粧55%
入荷予定日:10月中旬 1.8L ¥3,030

栄光冨士・純米吟醸酒『生酒栄光冨士』
『古酒屋のひとりよがり』ですっかり有名な栄光冨士さんの純米吟醸生酒。 新鮮かつ素朴な味わいで、芳醇な香りと自然の旨さが生きています。
内容:
 度数/15.5% 酸度/1.6 酒度/+5
 米・精米歩合/美山錦,50%
入荷予定:11月上旬 720ml ¥2,000

栄光冨士・特別本醸造『花より根』
 辛口全盛の日本酒の中であえて甘口の本醸造酒。高い精米歩合からくる味わ いは、サラリとしていて上品な甘口に仕上がっています。
 『花より根』という変わった名前は、名より実のある日本酒を目指すという心意気が込められています。ぜひ一度お試しください。
内容:
 度数/15.5% 酸度/1.1 酒度/-2
 米・精米歩合/美山錦,54%
 入荷予定:11月上旬  720ml ¥1,300

メルシャン『ラ・フランス』
 山形県産の洋なしの最高品種“ラ・フランス”でつくった、発泡性のお酒です。ラ・フランスの豊かな香りとまろやかな味わいが楽しめます。
 生産量が少ないため東北地区のみの限定発売。当店10ケース限定入荷!
入荷予定:10月下旬  250ml缶/¥250
     1ケース/¥6,000
※『ラ・フランス』発送の場合はケース単位でお願いします。

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