第70号(93.07.10)


日本酒Q&A

 今、新庄は栗の花のまっ盛り。「栗の花の盛りが梅雨の盛り」とか。
 でも、この2、3日は梅雨の中休みといったところで、実に爽やかな日が続いています。
 今回の富田通信は、日本酒について皆さんからのご質問の中からいくつかを選んで書いてみたいと思います。

○日本酒のラベルの原料の所に米麹と書いていますが、米麹とは何ですか?
 米麹とは、蒸し米に麹菌というカビの一種を生やしたものをいいます。カビというと何だか汚い物のように思われがちですが、ペニシリンが青カビから作られたように世の中には役に立つカビも有り、麹菌はデンプンを分解して糖分に変える働きをします。
 『一麹、二もと、三造り』と言われるように、米麹造りは酒を造る工程で最も大切な部分です。

○「火入れ」とか、「生酒」とかいいますが、その違いは何ですか。
 
「火入れ」とは、酒が貯蔵中に腐らないように、65℃位に酒を熱して殺菌することをいいます。今、売られている酒のほとんどが火入れをした酒です。 また火入れにより、酒が熟成して味が丸くなるというのも火入れの効用の一つです。
 「生酒」とは、火入れを一切しない酒をいいます。ですから出来た酒は、変質を防ぐために冷蔵庫で貯蔵しなければなりません。
 最近は蔵元も大型冷蔵庫や蔵そのものを冷蔵するなどして、生酒の量も大分増えてきました。

 生酒はフレッシュ&フルーティなお酒です。


○精米歩合60%とか40%とか書いていますが、精米歩合とは何ですか?
 玄米を削って白米を得ることを精米ということは皆さんご存じの通りです。 精米歩合とは、玄米の重さに対する白米の重さの割合で下の式で求めます。

           白米の重量
精米歩合(%)=────── ×100
           玄米の重量

 従って、数字が小さくなればなるほど玄米を削ったことになります。

○米を精米する目的は何ですか?
 玄米食とか、胚芽米とかは、栄養があるといいますよね。米粒の成分は、表面と中心部では違うのです。表面に近い部分は、蛋白、脂肪、ビタミンなどが多く含まれ、中心部に近ければ近いほど、デンプンの割合が高まります。
 ところで酒を造る場合、米の表面に近い部分の栄養成分は味に雑味を与え、くどい味の酒になる原因をつくります。
 ですから美味しい酒を造るために、米を削るのです。

○酒造好適米って何ですか?
 酒造好適米とは、酒を造るのに適した米のことです。酒造好適米は大粒で、心白といわれる中心部に白い不透明部分があるという特徴があります。(当店に山田錦の玄米と精米した見本がありますので、興味のある方はご覧になってください。)
 もちろん普通の米でも酒は造れますが、酒造好適米には蛋白質含量が低いとか、麹が造りやすいとか、その他多くの優れた特性があります。

−1−




 現在、酒造好適米には山田錦・雄町・八反・五百万石・美山錦など30数種類があります。山形県でも美山錦などが栽培されています。

○徳利(とっくり)と銚子(ちょうし)はどう違うのですか?
 銚子はつぎ口のある鍋形をしていて、おおむね長い柄か鉉(つる)をつけたもので、「長柄の銚子」ともいいます。今でも神前結婚式で三三九度の盃に巫女(みこ)が酒を注ぐ時に用いているのが、この長柄の銚子です。
 徳利は皆さんご存じで説明の必要はないかと思いますが、酒を燗して飲むようになってから一般化して現在にいたったもので、その呼び名は室町時代の半ば頃からあったとのことです。

○山形県の酒がおもしろいという話を聞きますが、それはどういうことですか?
 山形県には現在約60の蔵元がありますが、その特徴として、幸か不幸か、規模(石数)の小さい蔵が大部分を占めているということがあげられます。これは言い換えれば、地元密着、地元消費の蔵が大部分だということです。
 従ってその土地、その土地の食文化の違いに合わせて、酒の味も実にバラエティーに富んでいます。山形県の酒の味の特徴は一口でいって・・・などとはとても言いきれるものではありません。
 さらに酒質に関しては、東北鑑評会や全国鑑評会で多数の金賞を取っていることからもわかるように、全国のトップレベルにあります。


 ただ残念なことに蔵が小さいがための宣伝力不足と、そのほとんどが地元で消費されるという特質のために、まだまだ知られていないのが実情です。
 山形の酒を愛する皆さん、どうぞいろんな酒を飲んでみてください。きっと胸踊る出会いがあなたを待っています!



……… 商 品 紹 介 ………

出羽桜『吟醸・一耕セット』
 このセットのために詰めた大吟醸と、口中で豊かに広がる風味の純米酒一耕の毎年大好評のセットです。

各720ml/2本入  ¥3,000


出羽桜『大吟醸年代別セット』
 出羽桜酒造の超限定品のセットです。内容は大吟醸の88年の古酒が2本と92年が3本の詰め合わせです。大吟醸の古酒の良さがしみじみ分かります。 入荷予定は7月中旬です。お早めにお求めください。

30セット限定入荷

各300ml/5本入  ¥5,000

−2−


栄光冨士『純米吟醸酒・純米酒セット』
 『古酒屋のひとりよがり』ですっかり有名な、栄光冨士さんの純米吟醸酒「雪の降る町を」と純米酒「庄内平野」のセットです。ラベルは、栄光冨士さんの新婚ホヤホヤの御子息、加藤有慶さんがこのセットのために考案したもので、写真を使った実にいい雰囲気のラベルです。

各720ml/2本入  ¥3,000

初孫『しおさい物語』
 初孫さんより去年に引き続き、特別本醸造(精米歩合60%以下)『しおさい物語』が発売されました。冷やすと旨さが一段と冴えるお酒です。

夏期限定発売

各720ml/2本入  ¥3,000

…… 編集後記 ……

 富田通信も70号。毎月のネタ探しの苦しさと不景気風の冷たさに、富田通信を書き続けて何になるんだろう、富田通信は私の自己満足に過ぎないんじゃないか、もう書くのを止めようかと思い悩むこともしばしば。でもその度に、誰かから手紙を頂いたり、電話を頂いたり。現に今も出羽桜の常務の仲野さんから「富田通信の5月号、今頃読んでんだけど、天然ヤマメって美味いの?養殖ものしか食ったことがないからよ」との電話。・・・冷えきった心の芯がポッと暖かくなります。・・・もうちょっとだけ富田通信を続けてみます。

−3−



E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール