第68号(93.05.10)


本流のヤマメ釣り

 あられまじりの氷雨で幕が開けたゴールデン・ウィークも終わり、一部の田では代掻きが始まりました。食卓には山で採ってきた木の芽(アケビの芽)やコゴミ、タラの芽などがならび、春本番といったところです。
 先ほど全国版のある雑誌が調査した結果では、新庄は東北で一番住み良い町だとか・・・。経済効率最優先の現在の日本の価値尺度からみれば、眉に唾をつけてみたくもなりますが、ちょっと見方を変えてみると経済効率を最優先するあまり多くの日本人が捨てさってきたものが、まだ新庄には残っているということなのでしょう。

 たとえば、新庄では人々の会話の中で「山さ、行ってくる」とか「川さ、行ってくる」という言葉がよく出てきます。これは何も、登山や水浴びに行くわけではありません。野や山に入って自分たちが食べるための山菜やきのこを採ってくる、川に行って魚を取ってくるという意味なのです。

 ですから、新庄の人達にとって自然とは、かつての日本人にとってそうであったように、自分たちに恵みを与えてくれる大切なもの、おおいなるものなのです。言葉にすると、とってもキザになってしまいますね・・・。でも子供の頃から遊びの中で身体で覚えた自然観なのです。


 近頃、観念だけの自然保護運動や「俺は山や川に行かないから自然を破壊していない」などの話を耳にしますが、無関心が最大の自然破壊者なのです。

 閑話休題、話を本題にもどしましょう。5月に入り山吹の花や藤の花が咲く頃、ヤマメ釣りも本番をむかえます。春先の黒ずんだサビをすっかり落とした光輝く元気なヤマメが川を泳いでいます・・・。三度の飯よりヤマメ釣りが好きな私にとってなんとも落ち着かない季節です。

 そこで今回の富田通信は酒の話をうっちゃっての「本流のヤマメ釣り」と参りましょう。

本流のヤマメ釣り

 皆さんはヤマメという魚を知っていますか? 渓流の女王ともいわれ漢字では山女魚と書きます。山形県の県の魚がサクラマスに決まりましたが、サクラマスはヤマメが海に下って川にのぼったものです。

 釣りの本などでは、ヤマメは渓流魚ということでかなりの山奥に行かなければいないことになっていますが、それは東京での話。北に位置する新庄では、平地の田圃の中を流れる小川にもヤマメがいます。

 確かに人家の絶えた山裾にわけいって、一人ヤマメと遊ぶのも中々に趣があって楽しいものですが、今回は雪しろのおさまる5月中旬から6月いっぱいの、夏には鮎釣りでにぎわう本流でのヤマメ釣りを紹介します。

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 場所は新庄を挟む形で流れている小国川と鮭川。いずれも新庄・最上を代表する大川です。

 本流の釣りの醍醐味は、何といっても釣れるヤマメの大きさとその美しさにあります。たぶん、川に餌が豊富にあるためなのでしょうが、30センチを超えるヤマメは珍しくありません。

 ヤマメが掛かると竿は満月のようにしなり、釣糸は今にも切れそうにキューンと音をだし、ヤマメは流れに乗って下流へ下流へと下る。そこを竿を川上にたてて必死でこらえ、やっとの思いでタモにすくいとる。・・・あ〜ぁ、富田通信を書いているのがいやになりますねぇ。いますぐ川にとんでいきたい気分です。しばし、コーヒーブレイク。

 ・・・気分を落ち着けて話を続けましょう。本流のヤマメの大半は私の手が合わないほどの幅広ヤマメで、渓流のヤマメに見られる体側の小判形の模様(パーマーク)がほとんど消えた、青みがかった銀色に輝くヤマメです。その美しさは、ヤマメを魚籠に入れる時に、取ってはならないものを取ってしまったような一種の後ろめたさを感じるほどです。

 さて、小国川と鮭川のポイントですが、・・・それは言わないことにしましょう。ポイントは皆さん自身の目と腕でみつけてください。それもまた釣りの楽しみのひとつなのですから。

 皆さんの幸運と大ヤマメに乾杯!

……… 商 品 紹 介 ………

ニュータイプ純米吟醸酒
『山形清々』(やまがたせいせい)のご案内

 先月号でもニュータイプ純米吟醸酒『山形清々』を紹介しましたが、今回は初孫さんと亀の井さんのお酒を紹介いたします。

 『山形清々』は、鑑評会タイプの吟醸酒とは、まったく違う純米吟醸酒です。山形県酒造組合連合会が山形県工業技術センターの指導のもと、山形県産の酒造好適米「美山錦」と、バイオ技術を駆使した新酵母を使い、変則二段仕込みで醸したお酒です。

 吟醸香が高く(一般の吟醸酒の約2倍)、少し甘酸っぱい。のど越しが爽やかで飲み飽きしません。

 ギリッと冷やしてお召し上がりください。

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初孫『花のささやき』
  度数12〜13° 酒度−12 酸度1.7
      300ml ¥600

亀の井『和(なごむ)』

度数15.5° 酒度−8 酸度1.3
720ml ¥2,000

※初孫、亀の井とも入荷は5月中旬の予定です。



東北新酒鑑評会入賞一覧(山形県の部)

  仙台国税局管内の平成5年度東北新酒鑑評会の公開きき酒会が4月20日に行われましたが、そこで入賞した山形県の酒蔵をご紹介いたします。

寿虎屋・羽陽男山・銀嶺月山・一声・初孫・上喜元・清泉川・麓井・東北泉・栄冠菊勇・奥羽自慢・竹の露・やまと桜・大山・加茂川・若乃井・羽前桜川・羽陽銀爛・米鶴・東の麓

 以上20の酒蔵が入賞しました。これは福島県に次ぐ多さです。

…… 編集後記 ……

 ほんとに毎年のことですが、いつもこの時期になるとヤマメが頭の中を泳ぎまわって仕事が手につきません。ついに富田通信の中でまで釣りをしてしまいました。下手の横好きですかねぇ・・・。

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